実務Q&A

8.形式的区分基準による資本的支出と修繕費


平成11年に中古の店舗を1,400万円で購入しました。今年、その一部を補修し屋根修理費40万円と床、壁の張替え60万円の合計100万円を支払った。修理、改良の費用が20万円未満ならば修繕費になると聞きましたが、資産の価値の増加、品質の変更をしたわけでもないので、支払った費用全額を修繕費として必要経費になりませんか。


資本的支出と修繕費の区分は、その支出の効果の実質によって判断するのが原則です。しかし、下記に示す金額を除いた支払金額の合計が60万円未満の場合、又は修理、改良等をした個々の資産の前年末における取得価格の10%以下である場合、又はおおむね3年以内の期間を周期として行われることが今までの実績その他の事情からみて明らかな場合の一つの計画に基ずく修理、改良などのために要した金額である場合には、形式基準が適用され、その金額の合計を修繕費として必要経費に算入することができるものです。
T.増築、拡張、延長など、物理的に付加されたことが明らかな部分に係る金額
U.用途変更のための模様替え、取替などに直接要した金額
V.取替部分の品質の改良に要したものとして下記の算式により計算した金額

支出額 X

(A)−除却部分と同品質のものの新品としての購入価格

取替部分の購入価格(A)


ご質問の場合、その支出の詳細な内容がわかりませんが、もし上記のTからVまでのいずれにも当てはまらない場合で、明らかな資本的支出がないものとすれば、工事代(支出金額)が100万円ですから、上記の60万円未満の基準には該当しませんが、建物の前年末における取得価格(店舗購入後に資本的支出の金額があればその金額を加算した金額をいいます)が1,400万円だから、その10%以下である140万円より補修費としての工事代金が40万円少ないから、100万円全額を修繕費として必要経費に算入できることになります。

(注1)修繕費に該当するかしないかの判断について

固定資産の維持管理や原状回復のための費用は、修繕費として支出した時に損金算入が認められますが、一般に修繕費といわれるものでも、固定資産の使用可能期間を延長させたり価値を高めたりする部分の支出は固定資産の取得価額に加算され、修繕費とはなりません。
修繕費になるかどうかの判定は修繕費、改良費などの名目によって判断するのではなく、その実質によって判定します。
次のような支出は原則として修繕費にはならず固定資産の取得価額になります。
物理的に付け加えた部分の金額 ( 建物の避難階段の取付けなど)
用途変更のための模様替えなど、改造や改装に直接要した金額
機械の部分品を特に品質や性能の高いものに取り替えた場合で、その取替えの金額のうちの通常の取替えの金額を超える部分の金額
(注)
@一つの修理や改良などの金額が20万円未満のとき又はおおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良などであるときは、その支出を修繕費として損金の額に算入することができます。

A一つの修理、改良などの金額のうちに修繕費となるかどうか不明の金額がある場合には、下記の基準によりその区分を行うことができます。

その支出した金額が60万円未満のとき、又はその支出した金額がその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるときに修繕費とします。

法人が継続してその支出した金額の30パーセント相当額とその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額の10パーセント相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を固定資産の取得価額に加算します。

(注2)
この形式的区分基準による資本的支出と修繕費の判断は、大変難しい問題も多々あります。修理の工事見積書、請求書などの明細を大切に保管して下さい。税務署に提示を求められる場合もあります。また、事前に税務署に相談するのも一つの方法です。

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