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固定資産

固定資産は、土地(土地の上に存する権利を含む)、減価償却資産、電話加入権、その他の資産で、政令に定めるものをいいます。(法人税法2条-22)

実務では、簿記会計で学んだことを基にして、税法の規定に沿った会計処理をしなければなりません。下記に有形固定資産の税法上の取り扱いについて掲載しますので実務処理の参考にしてください。法人および個人どちらにも適用されます。

有形固定資産 減価償却資産 建物、建物付属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品
非減価償却資産 土地、建設仮勘定、書画骨董、遊休設備

※ 下記のものは、書画骨董(複製のようなものを除く)とします。
      (昭和55年直法2−8「十九」、平元年直法2−7「二」により改正)

古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値、希少価値を有し代替性のないもの

美術関係の年鑑等に登載されている作者の製作に係る書画、彫刻、工芸品等

(注)書画骨董に該当するかどうか明らかでない美術品等で1点20万円(絵画1号2万円)未満であるものは、減価償却資産として取り扱うことができます。
(参考:1号は、葉書大の大きさ)

※ 稼動休止資産でも、維持補修が行われており、いつでも稼動ができる状態にあるものは、減価償却をすることができます。

※ 常備する専用部品は、減価償却することができます。

※ 小額減価償却資産

事業に使用した減価償却資産で、下記のいずれかに該当するものは、小額減価償却資産です。

@使用可能期間が1年未満のもの
ここでの使用可能期間は法定耐用年数のことではなく、通常の管理または、修理をするものとした場合、取得時に予想される使用可能期間のことをいいます。

A取得価額が10万円未満のもの
この取得価額は、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。

小額減価償却資産は、事業に使用した事業年度でその取得価額の全額を必要経費として損金経理している場合に限り損金算入することができます。したがって、資産計上したものをその後の事業年度で一時に損金経理しても損金算入することは認められませんので注意を要します。
また、損金経理することを条件として下記の方法も認められています。
取得価額が20万円未満の資産については、各事業年度ごとに、その全部または一部を一括して、これを3年間で償却する方法を選択できます。

※ 取得価額

他から購入した資産
     その購入代価+付随費用(建設仮勘定に計上した借入金利息、立退き料等)

自己の製造等の資産
     製造原価+直接要した費用

  「直接要した費用」の主な項目
   引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、据付費、
   資産の代価を構成すると認められる寄付金

※ 取得価額に算入しないことのできる費用

1. 租税公課等の額

2. 建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等で計画変更より不要となったものに係る費用

3. 契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額。

4. 固定資産を取得するための借入金利息は、その資産の使用前の期間に係るものであっても取得価額に算入しないことができる。(この利息を建設仮勘定に含めたときは固定資産の取得価額に算入される)

※ 減価償却額の仕訳と表示法

直説法   (借方) 減価償却費  (貸方) 機械装置

間接法   (借方) 減価償却費  (貸方) 減価償却累計額(減価償却引当金)

直接法によって経理してある機械装置を廃棄処分したとき

        (借方) 固定資産除却損  (貸方) 機械装置

間接法によって経理してある車両運搬具を廃棄処分したとき

        (借方) 減価償却累計額  (貸方) 車両運搬具
             (減価償却引当金)
        (借方) 固定資産除却損  (貸方) 車両運搬具

※ 償却方法

定率法
減価償却を行うその資産の帳簿価格にその償却費が毎年一定の割合で逓減するようにその資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各事業年度の減価償却費とします。

定額法
減価償却を行うその資産の取得価格から10%の残存価額を控除した償却の基になる価額にその減価償却費が毎年同一の償却限度額となるようにその資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額を各事業年度の減価償却費とします。

※減価償却制度改正の概要
平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産
◎償却可能限度額の廃止
◎取得価額の95%が償却可能限度額であったが、備忘価格1円を残して、その全額が償却可能
例:取得価額300,000円−299,999円(償却限度額)=帳簿価格(1円)
計算式:取得価額×償却率
旧計算式(定額法)は、取得価額×0.9×償却率 (個人の場合)
旧計算式(定率法)は、取得価額×償却率

平成19年3月31日までに取得した減価償却資産の場合
償却可能限度額まで、通常通り減価償却を行い、その翌年以降、残存価格(取得価額の5%)の五分の一づつを、各年の減価償却額として、備忘価格1円を残す。
計算式:(取得価額−取得価額の95%−1円)÷5=減価償却費

減価償却費の累計額が95%になった場合は、平成20年から適用される

資本的支出があった場合
平成19年4月1日以後に資本的支出があった場合、原則として、その資本的支出に係る金額を一つの減価償却資産の取得価額として、その資本的支出をした減価償却資産と種類および耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとして新たな定率法により償却費の額を計算することに。

平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産に資本的支出をした場合、その資本的支出をした減価償却資産に係る取得価額に資本的支出の金額を加算することができます。

新たな定率法を採用している減価償却資産について資本的支出をした場合、その支出した年の翌年の期首年月日において、当該資本的支出をした減価償却資産の期首未償却残高とその資本的支出により取得したものとされた減価償却資産の期首未償却残高との合計額を、その取得価額とする一の減価償却資産を新たに取得したものとすることができる。その他、同一年中に複数回行った資本的支出につき新たな定率法を採用している場合の特例もあります。

減価償却資産の償却方法の選定
平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産の償却方法については、平成19年3月31日以前に取得したものと区分したうえで、資産の種類の区分ごとに選定し、資産を取得した日等の属する年分の確定申告期限までに『減価償却資産の償却方法の届出書』を納税地の所轄税務署長に届け出ることになっています。
平成19年3月31日以前に取得した旧減価償却資産について「旧定額法」・「旧定率法」または、「旧生産高比例法」を選定している場合において、平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産で、同日前に取得したならば旧減価償却資産と同一の区分に属するものについて上記の届出書を提出していないときは、旧減価償却資産につき選定していた償却方法の区分に応じた償却方法を選定したものとみなされ、それぞれ「定額法」「定率法」「生産高比例法」を適用する。
建物は、平成10年4月1日から平成19年3月31日までに取得したものは旧定額法、平成19年4月1日以後に取得したものは定額法に限られます。(個人の場合)

償却方法の変更
減価償却資産につき選定した償却方法を変更したい場合、新たな償却方法を採用しようとする年の3月15日までに「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出することのなっています。
平成19年分について、減価償却資産につき選定した償却方法を変更しようとする場合、「減価償却資産の償却方法変更承認申請書」を、確定申告期限までに提出することで、変更承認があったものとみなされます。

法定耐用年数について
半導体用フォトレジスト製造装置(耐用年数8年→5年)、フラットパネルディスプレイまたはフラットパネル用フィルム材料製造装置(耐用年数10年→5年)に、変更された。
表の掲載は、省略させていただきます。

 

※ 償却方法の変更
償却方法を変更したい場合は、相当期間として3年経過と合理的な理由がなければ認められないことになっています。

※ 中古資産の耐用年数の見積り

耐用年数を全部経過した資産の場合は、法定耐用年数の20%です。

耐用年数の一部を経過した資産は、
(法定耐用年数−経過年数)+(経過年数×20%)=中古資産の耐用年数(最低2年)
上記計算において1年未満の端数は切り捨てます。また、経過年数がわからないときは、その構造、形式、表示されている製作の時期等を考慮して、その経過年数を見積もります。

※ 減価償却費を損金経理せずに、申告書別表4(所得金額の計算に関する明細書)で減算することはできません。

※ 固定資産については、原則として、評価換え認められませんが、下記の事実があり、かつ、損金経理により帳簿価額を減額したときは、その評価換えが認められます。

◎評価換えしたい資産(当該資産)が災害により著しく損傷したこと。

◎当該資産が1年以上にわたり遊休状態にあること。

◎当該資産がその本来の用途に使用することができないため、他の用途に使用されたこと。

◎当該資産の所有する場所の状況が著しく変化したこと。

◎会社更生法の規定による開始決定または商法の規定による整理開始命令があって評価換えをする必要が生じたこと。

◎土地の賃貸しをした場合の評価額

※ 固定資産を除却したときは、原則として、下記に記した費用の額を損金に算入することができます。
{(除却前の簿価)−(除却資産の廃材等の価額)}+除却費用=除却額

※ 償却方法は、法人の選択に委ねられていますが、税務署長に届け出のなかったときは、定率法により減価償却を行うことになっています。

参考:
減価償却資産:法基通7-1-1、〜7-1-10 
小額減価償却資産:7-1-11、7-1-12、7-1-13
固定資産の取得価額 法基通7-3-1〜 7−3−17の2
耐用年数の短縮 法基通7−3−18 〜7−3−22
償却限度額等  通則
(改定耐用年数が100年を超える場合の定率法の償却限度額)法基通7−4−1
(転用資産の償却限度額)法基通7−4−2

償却方法を変更した場合の償却限度額
(定額法を定率法に変更した場合の償却限度額の計算)法基通7-4-3
(定率法を定額法に変更した場合の償却限度額の計算)法基通7-4-4
(定率法を定額法に変更した後に資本的支出をした場合)法基通7-4-4の2

増加償却
(増加償却の適用単位)法基通7 −4−5
(中間事業年度で増加償却を行った場合)法基通7−4−6
(貸与を受けている機械及び装置がある場合の増加償却)法基通7−4−7

陳腐化償却(法基通)
(陳腐化の意義)7−4−8
(著しい陳腐化の意義)7−4−9 
(陳腐化償却の計算単位)7−4−10
(陳腐化償却の場合の使用可能期間)7−4−11
(陳腐化資産に資本的支出がある場合の修正帳簿価額の計算)7−4−12 
(陳腐化資産の償却超過額等)7−4−13

償却可能限度額まで償却した資産(法基通)
(償却可能限度額まで償却した資産に資本的支出をした場合)7−4−14
(償却可能限度額まで償却した資産の改良後の減価償却)7−4−15 

償却費の損金経理(法基通)
(償却費として損金経理をした金額の意義)7−5−1
(申告調整による償却費の損金算入)7−5−2

特殊な資産についての償却計算(法基通)

鉱業用減価償却資産の償却
(土石採取業の採石用坑道)7−6−1
(採掘権の取得価額)7−6−1の2
(鉱業用土地の償却)7−6−2
(土石採取用土地等の償却)7−6−3 
(鉱業用減価償却資産の償却限度額の計算単位)7−6−4
(生産高比例法を定額法に変更した場合の償却限度額の計算)7−6−5
(生産高比例法を定率法に変更した場合の償却限度額の計算)7−6−6
(定額法又は定率法を生産高比例法に変更した場合の償却限度額の計算)7−6−7

取替資産についての償却(法基通)
(取替法における取替え)7−6−8
(残存価額となった取替資産)7−6−9
(撤去資産に付ける帳簿価額)7−6−10 

特別な償却率を適用する資産の償却(法基通)
(償却限度額の計算)7−6−11 

生物の償却(法基通)
(成熟の年齢又は樹齢)7−6−12 
(転用後の償却限度額の計算)7−6−13 

国外リース資産の償却(法基通)
(再リース期間)7−6−14
(見積残存価額)7−6−15 
(転貸リース)7−6−16 

除却損失等の損金算入(法基通)
(取り壊した建物等の帳簿価額の損金算入)7−7−1
(有姿除却)7−7−2
(ソフトウエアの除却)7−7−2の2

総合償却資産の除却価額等(法基通)
(総合償却資産の除却価額)7−7−3
(償却額の配賦がされていない場合の除却価額の計算の特例)7−7−3の2
(償却額の配賦がされている場合の除却価額の計算の特例)7−7−3の3
(償却可能限度額まで償却した資産の除却価額の計算の特例)7−7−4
(帳簿価額が明らかでない資産で定額法等を採用しているものの除却価額の計算の特例)7−7−4の2

個別償却資産の除却価額等(法基通)
(個別償却資産の除却価額)7−7−5
(償却可能限度額まで償却した資産の除却価額等についての準用)7−7−6
(取得価額等が明らかでない少額の減価償却資産等の除却価額)7−7−7
(除却数量が明らかでない貸与資産の除却価額)7−7−8
(個別管理が困難な少額資産の除却処理等の簡便計算)7−7−9

資本的支出と修繕費(法基通)
(資本的支出の例示)7−8−1
(修繕費に含まれる費用)7−8−2
(少額又は周期の短い費用の損金算入)7−8−3
(形式基準による修繕費の判定)7−8−4
(資本的支出と修繕費の区分の特例)7−8−5
(災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例)7−8−6
(ソフトウエアに係る資本的支出と修繕費)7−8−6の2
(機能復旧補償金による固定資産の取得又は改良)7−8−7 
(地盤沈下による防潮堤、防波堤等の積上げ費)7−8−8
(耐用年数を経過した資産についてした修理、改良等)7−8−9

劣化資産(法基通)
(劣化資産の意義)7−9−1
(棚卸資産とする劣化資産)7−9−2
(劣化等により全量を一時に取り替える劣化資産)7−9−3
(全量を一時に取り替えないで随時補充する劣化資産)7−9−4
(少額な劣化資産の損金算入)7−9−5

資産の耐用年数に応じた償却率(減価償却資産の耐用年数等に関する省令、昭和40年大蔵省令第15号)
耐通1-5-1〜3 耐令3

法33、(資産の評価損の損金不算入等)
資産の評価損が計上できる場合-法令68、
法令53、減価償却資産の法定償却方法

(減価償却資産の時価)
法基通9−1−19 法人が、令第13条第1号から第7号まで《有形減価償却資産》に掲げる減価償却資産について法第33条第2項《資産の評価損の損金算入》の規定を適用する場合において、事業年度終了の時における当該資産の価額につき当該資産の再取得価額を基礎としてその取得の時から当該事業年度終了の時まで定率法により償却を行ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額によっているときは、これを認める。(昭55年直法2−8「三十一」により追加、平12年課法2−7「十六」により改正) 

 

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