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索  引

244、一時所得と雑所得の相違

245、一時所得金額の計算
(一時所得の計算方式、総収入金額の取り扱い)

246、一時所得金額の計算
商品などで支払われる収入金額の取り扱い、株式等を取得する権利の価額についての取り扱い)

247、一時所得金額の計算
生命保険金の満期受取金等の取り扱い、借家の明渡しによる立退き料についての取り扱い)

248、一時所得金額の計算
必要経費についての取り扱い、一時所得の損失の取り扱い)

249、雑所得の金額の計算(公的年金等以外の雑所得の金額と雑所得の損失の取り扱い)

250、雑所得の金額の計算(公的年金等係る雑所得の金額)

251、雑所得の金額の計算(公的年金等の範囲)

252、雑所得の金額の計算(公的年金の源泉徴収制度)

253、金融類似商品等の課税の特例

254、損益通算

255、総所得金額に属する各種所得金額間の損益通算

256、損益通算{総所得金額に属する各種所得金額間の損益通算(計算例)}

257、損益通算(分離課税の譲渡所得金額がある場合)

258、損益通算(分離課税の譲渡所得及び事業所得金額がある場合の損益通算の計算例)

259、損益通算(山林所得金額又は損失、退職所得金額がある場合)


244、一時所得と雑所得の相違


一時所得と雑所得の違いについて説明してください。


税法上、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得のいずれにも該当しない所得である場合、一時所得又は雑所得のどちらかにあてはめることになっています。
一時所得は、所得の性質が下記のいずれの性質も持っていない一時的な所得です。
(1) 営利を目的とする継続的行為、(2) 労務その他役務の対価性、(3) 資産の譲渡の対価性
雑所得は、上記の一時所得にあてはまらないものをいいます。
一時所得の例につきましては、下記をご覧ください。
♪1、懸賞の賞金品、福引の当選金品など(業務に関して受け取るものは除かれます。
♪2、競走馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻し金など
♪3、法人からの贈与により取得する金品(業務に関して受け取るものおよび継続的に受けるものを除きます。)
♪4、人格のない社団など解散によりその構成員が受け取る精算分配金など
♪5、遺失物拾得者又は埋蔵物の発見者が受ける報労金
♪6、遺失物の拾得又は埋蔵物の発見によって新たに所有権を取得する資産
♪7、株主等としての地位に基づかないで発行法人から有利な発行価額で新株等を取得する権利を与えられた場合の所得(役員・使用人の地位又は職務等に関して与えられた場合は給与所得、退職に基因して与えられた場合は退職所得)
♪8、労働基準法の規定による解雇の予告手当、休業手当、時間外・休日・深夜労働の割増賃金の規定に違反した者および年次有給休暇に対し平均賃金の支払をしなかった者から同法第114条(付加金の支払)の規定により支払を受ける付加金
♪9、生命保険契約などに基づく一時金で、保険料又は掛け金を自分で負担した生命保険契約若しくは生命共済に係る契約に基づいて支払を受ける一時金(業務に関して受けるものを除くます。)又は損害保険契約等に基づく満期返戻金など
♪10、借家人が家屋の立退きに際して受ける立退き料(借家権の譲渡による部分および収益補償の部分を除きます。)
♪11、売買契約等が解除された場合に取得する手付金、補償金(業務に関して受けるものを除きます。)
♪12、事務若しくは作業の合理化、製品の品質の改善、経費の節約等に寄与する工夫又は考案等をした者が勤務先から支払を受ける報償金のうち、その工夫または考案等がその者の職務の範囲外の行為である場合の一時に受ける報償金
♪13、国庫補助金(所得税法42条、43条)又は移転等の支出に充てるための交付金(所得税法44条)で総収入金額不算入の特例が適用されなかったもの
♪14、地方税法の規定に基づいて受ける住民税および固定資産税の前納報奨金(業務用固定資産にかかるものを除きます。)

雑所得の例につきましては、下記をご覧ください。
♪1、法人の役員で勤務先への預け金、貸付金の利息で利子所得にならないもの
♪2、学校債、組合債などの利子
♪3、定期積金等の給付補填金
♪4、公社債の償還差益又は発行差金
♪5、国税および地方税の還付加算金
♪6、人格のない社団などの構成員が、その構成員としての資格においてその人格のない社団などから受ける収益の分配金(精算分配金を除きます。)
♪7、国民年金や厚生年金、退職年金などの公的年金等
♪8、生命保険契約などに基づく年金(地方公共団体が心身障害者に支給する特定の年金を除きます。)
♪9、従業員や役員が自己の職務に関連して雇用主の取引先などから受けるリベート等
♪10、株主が受ける株主優待乗車券、株主優待入場券などの配当所得とならない経済的利益
♪11、就職に伴う転居のための旅行の費用で一般的に必要と認められる範囲を超えるもの
♪12、抵当証券に係る利子および譲渡による所得
♪13、下記の所得のうちで、事業から発生たものと認められるもの以外のもの
※1、動産の貸し付け(不動産所得の基因となる船舶、航空機の貸し付けを除きます。)による所得
※2、工業所有権の使用料(専用実施権の設定により一時に受ける対価を含みます。)に係る所得
※3、温泉を利用する権利の設定による所得
※4、原稿、挿絵、作曲、レコードの吹き込み若しくはデザインの報酬、放送謝金、著作権の使用料又は講演料等にかかる所得
※5、採石権、鉱業権の貸し付けによる所得
※6、金銭の貸し付けによる所得
※7、保有期間5年以内の山林の伐採又は譲渡による所得
※8、不動産の継続的売買による所得
※9、有価証券の先物取り引きによる所得
(株式等の譲渡による所得は原則として分離課税の株式等の譲渡所得です。)

特定外国子会社等に係る課税の特例(タックスヘイブンに対する課税)
日本国内の法人に課税される税負担に比べて税負担が著しく低い国等又は地域に本店等を有する外国法人で、居住者および内国法人によってその発行済み株式総数又は出資総額の50%を超える株式等(注1)を直接および間接に保有されているものに留保所得がある場合、その留保所得のうち、発行済み株式等(注2)の5%以上を直接および間接に保有する居住者(注3)のその保有する株式等(注2)に対応する部分は、その居住者のその特定子会社等の事業年度終了後2か月経過日の属する年分の雑所得に係る総収入金額とみなして課税されます。
(注1) 議決権のない株式や請求権のない株式を発行している場合、その株式を除いて50%を超える株式等をいいます。
(注2) 請求権のない株式を除きます。
(注3) 5%以上を保有する一つの同族株主グループの属する居住者を含みます。

 

245、一時所得金額の計算
(一時所得の計算方式、総収入金額の取り扱い)


一時所得金額の計算(一時所得の計算方式、総収入金額の取り扱い)について説明してください。


一時所得金額の計算において、一時所得の計算方式、総収入金額の取り扱い、商品などで支払われる収入金額の取り扱い、株式等を取得する権利の価額についての取り扱い、生命保険金の満期受取金等の取り扱い、借家の明渡しによる立退き料についての取り扱い、必要経費についての取り扱い、一時所得の損失の取り扱い、などについてその取り扱いが定められています。ここでは、一時所得の計算方式、総収入金額の取り扱いについて説明させて頂きます。
一時所得の計算方式については、下記をご覧ください。

総収入金額 その収入を得るために支出した金額 一時所得の特別控除額 一時所得金額

(1) 特別控除額は、総収入金額から収入を得るために支出した金額を差し引きした残額が50万円未満の場合、その残額です。
(2) 特別控除額は、総収入金額から収入を得るために支出した金額を差し引きした残額が50万円以上の場合、50万円です。

一時所得金額×1/2=総所得金額に算入する金額

総収入金額の取り扱いについては、下記をご覧ください。
懸賞の賞金品のように一般的な事例の収入金額は、原則として、実際に受け取った日にその収入金額が発生したものとします。一方、交渉や契約によって収入すべきことになったものは、収入の計上時期に関する取り扱いがありますので、それに準じて取り扱われます。
♪1、商品の販売(♪2、♪3を除きます。)による収入金額については、その引渡しの日です。
※ 商品の引渡しの日がいつであるかについては、出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることになった日、検針等により販売数量を確認した日などその商品の種類および性質、その販売にかかる契約の内容等に応じてその引渡しの日して合理的であると認められる日のうち、その人が継続して収入金額に計上することとしている日によります。
♪2、商品の試用販売による収入金額については、相手方が購入の意思を表示した日です。
ただし、積送又は配置した商品について、相手方が一定期間内に返送又は拒絶の意思を表示しない限り特約又は習慣によりその販売が確定することになっている場合は、その期間の満了の日とします。
♪3、商品の委託販売による収入金額については、委託者がその委託品を販売した日です。
ただし、その委託品についての売上計算書が毎日又は一月を超えない一定期間ごとに送付されている場合、継続してその売上計算書が到着した日ン属する年分の収入金額としているときは、その売上計算書の到達の日
♪4、請負による収入金額につては、物の引渡しを要する請負契約にあってはその目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日、物の引渡しを要しない請負契約にあってはその約した役務の提供を完了した日、ただし、一つの契約により多量に請け負った同種の建設工事等についてその引渡し量に従い工事代金等を収入する旨の特約若しくは習慣がある場合または1個の建設工事等についてその完成した部分を引き渡したつどその割合に応じて工事代金等を収入する旨の特約又は習慣がある場合、その引渡した部分にかかる収入金額についてはその特約又は慣習により相手方に引き渡した日です。
♪5、人的役務の提供(♪4を除きます。)による収入金額は、その人的役務の提供を完了した日です。
ただし、人的役務の提供による報酬を期間の経過または役務の提供の程度等の応じて収入する特約又は慣習がある場合におけるその期間の経過又は役務の提供の程度等に対応する報酬については、その特約又は習慣によりその収入すべき事由が発生した日です。
♪6、資産の貸し付け(♪7を除きます。)による賃貸料でその年に対応するものに係る収入金額は、その年の末日です。(貸し付け期間の終了する年にあっては、その期間の終了する日)
♪7、金銭の貸し付けによる利息収入又は手形の割引料でその年に対応するものにかかる収入金額は、その年の末日です。(貸付期間の終了する年にあっては、その期間の終了する日。)
ただし、その人が継続して、下記の区分に応じそれぞれ下記の日により収入金額に計上している場合には、それぞれ下記の日
※1、 利息を天引きして貸し付けたものに係る利息は、その契約により定められている貸付元本の返済日
※2、 その他の利息は、契約又は慣習により支払日が定められているものについてはその支払の日、支払日が定められていないものについては、その支払を受けた日です。(請求があったときに支払うべきものとされているものについては、その請求の日です。)
※3、手形の割引料は、その手形の満期日(その満期日前にその手形を譲渡した場合は、その譲渡の日です。)
(注) 青色申告者で現金主義を用いて経理処理をしている場合又は特別な経理基準を設けて、延払い条件付販売等、長期工事などを行っている場合については、所得税法でも特別な取り扱がります。

 

246、一時所得金額の計算
(商品などで支払われる収入金額の取り扱い、株式等を取得する権利の価額についての取り扱い)


一時所得金額の計算(商品などで支払われる収入金額の取り扱い、株式等を取得する権利の価額についての取り扱い)について説明してください。


一時所得金額の計算において、一時所得の計算方式、総収入金額の取り扱い、商品などで支払われる収入金額の取り扱い、株式等を取得する権利の価額についての取り扱い、生命保険金の満期受取金等の取り扱い、借家の明渡しによる立退き料についての取り扱い、必要経費についての取り扱い、一時所得の損失の取り扱い、などについてその取り扱いが定められています。
ここでは、商品などで支払われる収入金額の取り扱い、株式等を取得する権利の価額についての取り扱いについて説明させて頂きます。
賞品等で支払われる収入金額については、事業の公告宣伝費のための賞金を金銭以外のもので支払を受けた場合の一時所得の収入金額は、その支払を受けた人がその支払を受けることとなった日に、その賞品等を他人に譲渡するもの仮定した場合の処分見込み価額により収入金額の計算をします。ただし、金銭と金銭以外のものとのいずれかを選択することができる場合、その金銭の額を収入金額とします。また、賞品等、製造された物品については、その賞品等が業務用の固定資産として使用できるもの又はその人の商品として販売できるものの場合を除き、通常、一般的な小売価額(現金正価)の6割相当額を収入金額とします。
株式等を取得する権利の価額については、発行法人から有利な発行価額による新株等を取得する権利を与えられた場合(株主等として与えらた場合を除きます。)における収入金額の計算は、払込期日における新株等の価額からその新株等の発行価額を差し引いた金額とします。
※1、有利な発行価額は、株式の価額と新株の発行価額との差額が、その株式の価額の概ね10%相当額以上であるかどうかにより判断します。
※2、上記と同じように、商法の規定により取締役又は使用人に対して自己株式の譲渡請求権(商法210の2)又は新株引受権(商法280の19)が与えられた場合の収入金額は、その株式の権利行使日における価額から、株式の譲渡価額又は新株の発行価額を差し引いた金額とされます。(この場合は給与所得とされます。退職後に権利行使がされた場合で、主として職務遂行に関連しない利益が供与されていると認められるときは雑所得となります。)

 

247、一時所得金額の計算
(生命保険金の満期受取金等の取り扱い、借家の明渡しによる立退き料についての取り扱い)


一時所得金額の計算(生命保険金の満期受取金等の取り扱い、借家の明渡しによる立退き料についての取り扱い)について説明してください。


一時所得金額の計算において、一時所得の計算方式、総収入金額の取り扱い、商品などで支払われる収入金額の取り扱い、株式等を取得する権利の価額についての取り扱い、生命保険金の満期受取金等の取り扱い、借家の明渡しによる立退き料についての取り扱い、必要経費についての取り扱い、一時所得の損失の取り扱い、などについてその取り扱いが定められています。
ここでは、生命保険金の満期受取金等の取り扱い、借家の明渡しによる立退き料についての取り扱いについて説明させて頂きます。
生命保険金の満期受取金等の取り扱いについては、保険料の払込者が満期により受け取る保険金は一時所得となります。その金額の計算は下記に記載のとおりです。中途解約の場合の解約返戻金に係る計算もこれに準じます。

保険金 支払保険料総額等−剰余金等支払を受けた金額の合計額 一時所得の特別控除額 一時所得の金額

(注) 保険料払込者と保険金受取人が別の場合、被保険者に関係なく、原則として、保険金の全額が保険料払込者から受取人に対する贈与になり、所得税ではなく、贈与税が課税されます。

借家の明渡しによる立退き料についての取り扱いについては、借家人が借家を明渡すことによって受け取る立退き料は下記の区分に応じて、それぞれ下記に示します所得になります。

所  得

受領した立退き料の性質

一時所得 立退きのための費用の弁償
借家権の消滅の対価 借家権の取引慣行のない地域
譲渡所得(総合課税) 借家権の消滅の対価 借家権の取引慣行のある地域
事業所得 事業者の場合の休業期間の営業補償

(注) 立退き料の全額から、譲渡所得(総合課税)になる部分および事業所得に相当する金額を控除した残額が一時所得の収入金額です。

 

248、一時所得金額の計算
(必要経費についての取り扱い、一時所得の損失の取り扱い)


一時所得金額の計算(必要経費についての取り扱い、一時所得の損失の取り扱い)について説明してください。


一時所得金額の計算において、一時所得の計算方式、総収入金額の取り扱い、商品などで支払われる収入金額の取り扱い、株式等を取得する権利の価額についての取り扱い、生命保険金の満期受取金等の取り扱い、借家の明渡しによる立退き料についての取り扱い、必要経費についての取り扱い、一時所得の損失の取り扱い、などについてその取り扱いが定められています。
ここでは、必要経費についての取り扱い、一時所得の損失の取り扱いについて説明させて頂きます。

必要経費については、一時所得の計算に際し、必要経費の欄 に計上する金額は、一時所得の収入を得るために支出した金額ですが、原則として、収入を発生した各行為ごとに計算します。一時所得は、偶発的な性質を持っています。収入とその収入を得るために支出した金額とを、原因別、行為別に区分して個別対応によって計算します。例えば、立退き料の場合、建物明渡しのための移転実費などが必要経費に該当します。
懸賞金、懸賞クイズなどの当選金品の一部をあらかじめ公共施設に寄付する定めがある場合、その定めによって寄付した金品などは、その収入を得るために支出した金額に含まれます。

一時所得の損失の取り扱いについては、一時所得の金額の計算上、発生した損失の金額は、他の所得の金額との損益通算はできません。

 

249、雑所得の金額の計算
(公的年金等以外の雑所得の金額と雑所得の損失の取り扱い)


雑所得の金額の計算(公的年金等以外の雑所得の金額と雑所得の損失の取り扱い)について説明してください。


雑所得の金額は、公的年金等以外の雑所得の金額と公的年金等にかかる雑所得の金額の合計とされています。
ここでは、公的年金等以外の雑所得の金額と雑所得の損失の取り扱いについて説明させて頂きます。
公的年金等以外の雑所得の金額については、その年中の公的年金等以外の雑所得にかかる総収入金額から必要経費を控除した額となりますが、その計算は、雑所得に最も類似している他の所得に準じて計算することになっています。計算の結果、赤字になるときは、その赤字の金額は公的年金等に係る雑所得の金額から差し引きます。
公的年金等以外の雑所得となる生命保険契約等に基づいて支払を受ける年金の所得金額は、下記の計算式にて行います。

その年に支払受ける年金額 年金の支払開始日以後その年において分配される剰余金 その年に支払を受ける年金額 × 掛け金の総額 年金支払開始日前に分配された剰余金 所得金額

年金の支払総額

非営業貸金の利子と元本の貸倒れについては、受け取るべき利息が回収できないことになったとき、その回収不能に対応する所得金額はその所得の生じた年分にさかのぼってなかったものとされます。この場合、回収不能となった日の翌日から2か月以内に更正の請求の手続きをして所得税額の減額の請求をすることができます。
元本の貸倒れに関しては、貸倒れとなった年分の雑所得の金額(貸倒れの損失を考慮しないで計算した金額)を限度として必要経費に算入することができます。

雑所得の金額の計算上発生した損失の金額は、他の所得の金額と損益通算できないことになっています。

 

250、雑所得の金額の計算(公的年金等係る雑所得の金額)


雑所得の金額の計算(公的年金等係る雑所得の金額)について説明してください。


公的年金等に係る雑所得の金額は、公的年金等控除額を控除した残額です。この金額に公的年金等以外の雑所得金額を合計して確定申告を行います。
公的年金等以外に申告する所得のない人で、下記の五つにあてはまらない人は、公的年金等のみの人用の確定申告書を使用して税務署に申告します。一般の確定申告書を使用できないというわけではありません。
(1) 雑損控除、寄付金控除、小規模企業共済等掛け金控除、勤労学生控除、住宅借入金等特別控除、政党等寄付金特別控除、外国税額控除の適用を受ける人
(2) 災害を受けた人で災害減免法により源泉徴収税額の徴収猶予や還付を受けた人および確定申告で災害減免法により所得税の減免を受けようとする人
(3) 雑損控除の控除不足額を平成13年以後の所得金額から控除しようとする人
(4) 税務署から通知を受けた予定納税がある人
(5) 所得税で総合課税されない非居住者期間中の国内源泉所得のある人

所得金額の計算に際しては、下記の表を用いて求めた金額が公的年金控除額控除後の公的年金等にかかる雑所得金額です。

年 齢

公的年金等の収入金額の合計額

割合

控  除  額

65歳未満
昭和11年1月2日以後に生まれた人
1,299,999円まで

700,000円

(公的年金等の収入金額の合計額を限度とします。)
1,300,000〜4,099,999円まで

75%

375,000円

4,100,000円〜7,699,999円まで

85%

785,000円

7,700,000以上

95%

1,555,000円

65歳以上
昭和11年1月1日以前に生まれた人
2,599,999円まで

1,400,000円
(公的年金等の収入金額の合計額を限度とします。)

2,600,000円〜4,599,999円まで

75%

750,000円

4,600,000円〜8,199,999円まで

85%

1,210,000円

8,200,000以上

95%

2,030,000円

(計算例)
年齢68歳、公的年金等の収入金額の合計額が¥3,500,000円

(3,500,000×75%)−750,000=1,875,000円

(公的年金等控除額控除後の公的年金等に係る雑所得の金額は、1,875,000円)

 

251、雑所得の金額の計算(公的年金等の範囲)


雑所得の金額の計算(公的年金等の範囲)について説明してください。


公的年金等の範囲については、下記の記載をご覧ください。
(1) 国民年金法、厚生年金保険法の規定に基づいて支給される年金
(2) 国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、農林漁業団体職員共済組合法の規定に基づいて支給される年金
(3) 農業者年金基金法の規定に基づき支給される年金
(4) 恩給(一時恩給を除きます。)
(5) 過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金
(6) 昭和60年改正前の船員保険法の規定に基づく年金
(7) 下記の制度に基づいて支給される年金(これに類する給付を含みます。)
♪1、 厚生年金保険法附則第28条に規定する共済組合が行う退職金共済に関する制度
♪2、 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法第3条、第4条、第7条の2の規定に基づく年金の支給に関する制度
(8) 適格退職年金契約に基づいて支給を受ける退職年金
(9) (8)に類する年金で下記の制度に基づいて支給される年金(これに類する給付を含みます。)
♪1、 特定退職金共済団体が行う退職金共済に関する制度
♪2、 外国の法令に基づく保険又は共済に関する制度
♪3、 中小企業退職金共済法に規定する分割払いの分割退職金
♪4、 小規模企業共済法に規定する分割払いの分割共済金

在職中に使用者に対して掛け金を拠出することにより退職後その使用者であった者から支給される年金(一般的にいう拠出制の企業年金)は、(5)の年金に該当しますが、この場合の収入金額は、その年中の支給額から受給者が拠出した掛け金(その運用益として元本に繰入られた金額を含みます。)を控除した金額となります。
(8)の退職年金において従業員掛け金がある場合には、一定の従業員掛け金相当額を控除した金額が公的年金等の収入金額となります。

 

252、雑所得の金額の計算(公的年金の源泉徴収制度)


雑所得の金額の計算(公的年金の源泉徴収制度)について説明してください。


公的年金等にかかる源泉徴収額は、原則として確定申告で精算することになっています。
公的年金等(経理実務Q&A251、公的年金の範囲の(5)、(8)、(9)の年金を除きます。)の受給者は、毎年年初に公的年金等の支払を受ける日の前日までに 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書 を公的年金の支払者に提出することになっています。

源泉徴収税額の計算については、下記をご覧ください。
(1) 扶養親族等申告書を提出している受給者の場合

年金支給額 社会保険料控除後 基礎的控除額と人的控除額の合計額 × 年金支給額に係る月数 (※) × 10%
源泉徴収額の計算
基礎的控除額 a

a

a

人的控除額(@〜Dの合計額)
昭和11年1月1日以前に生まれた人 年金支給額の月額の25%相当額+10万円
(最低15万円)
@ 受給者が老年者

40,000円

A 受給者が障害者

22,500円

受給者が特別障害者

35,000円

B 老人控除対象配偶者がいる場合

72,500円

昭和11年1月2日以後に生まれた人 年金支給額の月額の25%相当額+65000円
(最低9万円)
その他の控除対象配偶者がいる場合

65,000円

C 特定不要親族がいる場合(1人当たり)

52,500円

老人扶養親族がいる場合(1人当たり)

40,000円

その他の扶養親族がいる場合(1人当たり)

32,500円

D 控除対象配偶者・扶養親族が 障害者(1人当たり)

22,500円

特別障害者(1人当たり)

35,000円

(※) 厚生年金基金(同連合会)や国民年金基金(同連合会)および経理実務Q&A251公的年金等の範囲の(2)、(3)の年金である場合、控除額から一定額を控除します。

(2) 扶養親族等申告書を提出していない受給者の場合

{年金支給額(社会保険料及び従業員掛け金相当額控除後)×75%}×10%

(3) 源泉徴収をしない場合

該当するその年中に支給を受けるべき公的年金等(扶養親族等申告書を提出できるものに限ります。)の額が、その年の最初に支給を受けるべき日の前日において、下記の表の区分に応じてそれぞれ下記の金額に満たないとき、公的年金等の源泉徴収(及び扶養親族等の申告書の提出)の必要性ないことになっています。
また、公的年金等の源泉徴収の際にも定率減税が実施されています。

その年12月31日において 年齢65歳以上の人が受ける場合 同左

178万円

年齢65歳以上の人が受ける場合 その公的年金等が厚生年金基金(同連合会)や国民年金基金(同連合会)および経理実務Q&A251公的年金等の範囲の(2)、(3)の年金である場合

100万円

年齢65歳未満の人が受ける場合

108万円

(注) 公的年金等の源泉徴収票(前年分の受給額を記載した源泉徴収票)は、毎年1月末までに、公的年金等の支払者から受給者に交付されます。 この源泉徴収票を確定申告書に添付します。

 

253、金融類似商品等の課税の特例


金融類似商品等の収益等の課税の特例について説明してください。


金融類似商品等の収益等は、一般的に、一時所得、雑所得、譲渡所得となります。他の所得と合計して確定申告を行う総合課税が原則になっています。
昭和63年4月1日以降に支払いを受けるべき定期積金の給付補填金については、他の所得と区別して15%(別途地方税5%)の税率で源泉徴収され課税関係が完了する源泉分離課税とされています。
金融類似商品の範囲については、下記をご覧ください。
※1、 定期積金等の給付補填金
定期積金にかかる契約に基づく給付金のうち、その給付を受ける金銭の額からその契約に基づき払い込んだ掛け金の額の合計額を控除した残額に相当する部分
※2、 抵当証券の利息
抵当証券法第1条第1項に規定する抵当証券に基づき締結されたその抵当証券に記載された債権の元本及び利息の支払に関する事項を含む契約により支払われる利息
※3、 金投資(貯蓄)口座の差益
金その他の貴金属その他これに類する物品の買い入れ及び売り戻しに関する契約で、その契約に定められた期日においてその契約に定められた金額によりその物品を売り戻す旨の定めがあるものに基づく利益(その物品のその売り戻しをした場合のその金額からその物品の買い入れに要した金額を控除した残額をいいます。)
※4、 外貨建て預金の換算に伴う為替差益
外国通貨で表示された預貯金でその元本及び利子をあらかじめ約定した率により本邦通貨に換算して支払うこととされているものの利益
※5、 一時払い養老(損害)保険等の差益
生命保険契約若しくは、損害保険契約又はこれに類する共済に係る契約で保険料又は掛け金を一時に払うこと(これに準ずる支払方法として一定のものを含みます。)その他の事項をその内容とするもののうち、(1)保険期間又は共済期間(保険期間等)が5年以下のもの、(2)保険期間等が5年を超えるものでその保険期間の初日から5年以内に解約されたもの に基づく差益(これらの契約に基づく満期保険金、満期返戻金若しくは満期共済金又は解約返戻金の金額からこれらの契約に基づき支払った保険料又は掛け金の合計額を控除した金額を言います。)
※6、 懸賞金付預貯金等の懸賞金等
預貯金等に係る契約に基づき預け入れ等がされた預貯金等について、その預貯金等を対象として行われるくじ引き等の方法により、支払若しくは交付を受け、又は受けるべき金品その他の経済的利益

(注1) この源泉分離課税の適用を受ける定期積金の給付補填金等については、確定申告をすることはできませんので、注意してください。
この定期積金等の給付補填金等についての注意事項は、源泉分離課税とされる利子等と同じです。
(注2) この課税の特例は、昭和63年4月1日以後の支払分から適用されます。
昭和63年4月1日以後に支払われるべき定期積金等の給付補填金等で、同日を含む給付補填金等の計算期間に対応するもののうち、その計算期間の初日から昭和63年3月31日までの期間に対応する部分については、従来どおり総合課税(源泉徴収がない)となります。

♪ 割引債の償還差益の課税の特例
昭和63年4月1日以降に発行された割引債について支払を受けるべき償還差益{割引債の償還金額(買い入れ消却が行われる場合には、その買い入れ金額)がその発行価額を超える場合におけるその差益を言います。}については、他の所得と区別して、その支払を受けるべき金額に対して18%(民間都市開発推進機構などの発行する割引債につき支払を受けるべき償還差益に対しては、16%)の税率で所得税が源泉徴収されることにより課税関係が完了する源泉分離課税です。

 

254、損益通算


損益通算の概要について説明してください。


税法上、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得のいずれにも該当しない所得である場合、一時所得又は雑所得のどちらかにあてはめることになっています。
所得税は、総合課税が原則です。上記の10種類の各所得金額を総合して税額計算の基になる所得金額を計算します。この過程で、各所得の金額に損失があれば、その損失を他の所得から一定の順序で差し引きします。この手続きを損益通算と言います。
前年の所得に発生した特定損失で本年度に繰越が認められる場合、損益通算の後に本年分の所得金額から差し引きます。また、本年の所得金額が損失である場合、その損失の特定条件のもとで次年度に繰り越したり前々年に繰り戻したりすることができます。これらを純損失の繰越又は繰り戻しと言います。
各種所得金額の全部が黒字の場合、分離課税の譲渡所得金額、山林所得金額、退職所得金額はそのまま分離課税の譲渡所得金額、山林所得金額、退職所得金額とし、その他の所得金額(利子、配当、不動産、事業、給与、雑、一時)を合計し、総所得金額を計算します。
各所得金額に損失がある場合、他の黒字の各所得金額と損益通算をすることになります。(譲渡所得、事業所得、雑所得となる金額に、株式等に係る譲渡所得等の申告分離課税制度が適用される金額がある場合、その譲渡所得等の金額については他の所得と損益通算できません。繰越雑損失に限り控除対象とすることができます。特定の中小会社の発行株式にかかる譲渡損失については、繰越控除等の特例があります。)
この場合、特定の各種所得の損失や特殊な損失は、他の各所得金額と損益通算ができないこととされています。下記の記載をご覧ください。
※ 損益通算できる損失
不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の金額の計算上発生した損失(下記の(3)を除きます。)
※ 損益通算できない損失
(1) 配当所得、一時所得、雑所得の金額の計算上発生した損失
(2) 分離課税の株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上発生した損失
(3) 特殊な損失
♪1、競走馬(事業用の競走馬は除きます。)、別荘、貴石・貴金属、書画、骨董などで1組又は1個の価額が30万円を超えるものなど生活に一般的に必要でない資産に関しての所得の計算上発生した損失
(注) 事業用と認められない競走馬の譲渡によって発生した損失は、競走馬にかかる雑所得金額の範囲内で通算ができます。その競走馬が事業用に供されていたものであれば、その譲渡損失は他のいずれの所得とも損益通算できます。
♪2、非課税所得金額の計算上発生した損失
(4) 不動産所得金額の計算上発生した損失のうち、土地等を取得するために要した借入金利子の額に相当する部分の金額

 

255、総所得金額に属する各種所得金額間の損益通算


総所得金額に属する各種所得金額間の損益通算について説明してください。


総所得金額に属する各種所得金額間の損益通算については、下記をご覧ください。
まず、損益通算を行う前に、総所得金額に属する各種所得を下記のように分類しておきます。
※1、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得
※2、総合課税の譲渡所得、一時所得
※3、山林所得、退職所得(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)

※1、※2のグループのそれぞれの間で損益通算をします。
各グループのいずれかになお損失が残っている場合、下記の記載応じて二つのグループ間で、損益通算をします。

♪1、同じ種類の所得間で損益を相殺します。
譲渡所得に総合課税のものと分離課税のものとがあるとき、どちらか一方が赤字の場合、まず互いに損益を相殺します。

長期譲渡所得

総合課税 分離課税の所得がない場合、ないものとします。
分離課税
短期譲渡所得

分離課税
総合課税

♪2、損益通算
赤字の所得の区分に応じて下記の順番で黒字の所得から差し引きます。
♯、不動産所得、事業所得の赤字
(不動産所得の赤字のうち、土地等を取得するために要した借入金の利子の額に相当する部分の損益通算はできません。 )
(1) まず、※1、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得から差し引きます。
(2) 一時所得(まずはじめに譲渡所得の赤字がある場合は、先に差し引きします。)
(3) 不動産所得、事業所得の赤字がある場合、短期譲渡所得(分離課税)から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(4) 不動産所得、事業所得の赤字がある場合、短期譲渡所得(総合課税)から差し引きします。
(5) 不動産所得、事業所得の赤字がある場合、長期譲渡所得(分離課税)から差し引きます。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(6) 不動産所得、事業所得の赤字がある場合、長期譲渡所得(総合課税)から差し引きます。
(7) 不動産所得、事業所得の赤字がある場合、一時所得から差し引きます。
(8) 譲渡所得の赤字がある場合、※1、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得から差し引きます。
(譲渡所得の赤字のうちに、分離長期譲渡所得の赤字・分離短期譲渡所得の赤字(いずれも経理実務Q&A180、181の損益計算をしてもなお控除しきれない赤字を言います。)又は、その他の赤字の2以上があるときは、その他の赤字→分離長期の赤字→分離短期の赤字の順に控除します。)
(9) 不動産所得、事業所得の赤字がある場合、山林所得から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(10) 不動産所得、事業所得の赤字がある場合、 退職所得から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(11) 譲渡所得の赤字がある場合、山林所得から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(12) 譲渡所得の赤字がある場合、退職所得から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(13) 山林所得の赤字がある場合、※1、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得から差し引きます。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(14) 山林所得の赤字がある場合、短期譲渡所得(分離課税)から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(15) 山林所得の赤字がある場合、短期譲渡所得(総合課税)から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(16) 山林所得の赤字がある場合、長期譲渡所得(分離課税)から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(17) 山林所得の赤字がある場合、長期譲渡所得(総合課税)から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(18) 山林所得の赤字がある場合、一時所得から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)
(19) 山林所得の赤字がある場合、退職所得から差し引きします。(分離課税の所得がない場合、ないものとします。)

 

256、損益通算{総所得金額に属する各種所得金額間の損益通算(計算例)}


総所得金額に属する各種所得金額間の損益通算(計算例)について例示してください。


総所得金額に属する各種所得金額間の損益通算の計算例につきましては、下記をご覧ください。

(例) 下記の設定で計算例を掲載します。
第一グループ:
事業所得の損失▲550万円、不動産所得金額200万円、給与所得金額80万円、雑所得の損失▲50万円、
第二グループ:
総合課税の譲渡所得金額250万円(短期譲渡所得金額100万円、長期譲渡所得金額150万円、一時所得金額60万円、

(注1) 雑所得の損失は、損益通算できません。
(注2) 総合課税の短期譲渡所得金額及び一時所得金額は、それぞれの特別控除額50万円を控除した後の金額です。

第一 事業所得の損失▲550万円

▲270万円 左記の三つの所得間で差し引きします。
不動産所得金額200万円

給与所得金額80万円

雑所得の損失 a 雑所得の損失は、損益通算できません。
次に、第二グループの短期譲渡→長期譲渡→一時所得の順に上記▲270万円を差し引きします。
第二 総合課税の譲渡所得金額 250万円
短期譲渡所得金額100万円

―→

▲270-(100) ▲170 a
長期譲渡所得金額150万円

―→

150-(▲170) ▲20 a
一時所得金額60万円 60-(▲20)=40 40×1/2=20(総所得金額)

 

257、損益通算(分離課税の譲渡所得金額がある場合)


分離課税の譲渡所得金額がある場合の損益通算について説明してください。


分離課税の譲渡所得金額がある場合、損益通算をする前に総合課税金額又は損失と分離課税譲渡所得金額または損失との間で、損益計算をします。(経理実務Q&A180、181を参照してください。)
損益通算を行う順番は、下記のとおりです。
(1) 第一グループ、第二グループのそれぞれの間で損益通算することは、経理実務Q&A255、256、と同じです。
第一グループの損益通算は、不動産所得金額が赤字の場合、同グループの他の黒字の所得金額から差し引きします。事業所得金額が赤字の場合、同グループの他の黒字の所得金額から差し引きします。引ききれない損失額がある場合、そのまま第一グループの損失額となります。
第二グループの損益通算は、分離課税の譲渡所得金額の損失が残った場合、第二グループの一時所得金額から差し引きします。引ききれない損失額がある場合、そのまま第二グループの損失となります。
(2) 各グループのいずれかになお損失が残っているときは、下記に記載します要領で2つのグループ間で損益通算をします。
第一グループの損失を第二グループの所得金額及び分離課税の譲渡所得金額から差し引く場合、分離課税の短期譲渡所得金額(最低40%課税〜〜最低20%課税の順に)→総合課税の短期譲渡所得金額→分離課税の長期譲渡所得金額(一般の土地建物等→優良住宅地の造成等のために譲渡した土地等→居住用財産にかかる長期譲渡所得の順に)→総合課税の長期譲渡所得金額→一時所得金額の順に差し引きします。
第二グループの損失を第一グループの所得金額から差し引きします。
第一グループの損失を第二グループの所得金額及び分離課税の譲渡所得金額から差し引く場合、分離課税の譲渡所得金額が残る場合、その金額はそのまま分離課税の短期(又は長期)譲渡所得金額となります。総合課税の短期又は長期譲渡所得金額と一時所得金額(総合課税の長期譲渡所得金額と一時所得金額はその1/2相当額)は合計されて総所得金額となります。

 

258、損益通算(分離課税の譲渡所得及び事業所得金額がある場合の損益通算の計算例)


分離課税の譲渡所得及び事業所得金額がある場合の損益通算の計算例について例示してください。


分離課税の譲渡所得及び事業所得金額がある場合の損益通算の計算例については、下記をご覧ください。

(例) 下記の設定で計算例を掲載します。
第一グループ:
事業所得損失 ▲200万円、不動産損失▲400万円、給与所得金額100万円、
第二グループ:
総合課税短期譲渡所得の損失▲50万円、総合課税長期譲渡所得金額200万円、
一時所得金額150万円、
分離課税短期譲渡所得金額250万円、分離課税長期譲渡所得金額1000万円、

(注)
♪1、不動産所得の損失には、土地等の取得に係る借入金の利息の額に相当する金額は含まれていません。
♪2、総合課税の長期譲渡所得金額及び一時所得金額は、それぞれ50万円特別控除後の金額です。
♪3、分離課税の長期譲渡所得金額は、100万円特別控除前の金額です。

第一 総合課税 事業所得の損失

▲200

▲500

(▲500)は分離課税短期譲渡所得、長期譲渡所得と損益通算
不動産所得の損失

▲400

給与所得金額

100

a
第二 総合課税 短期譲渡所得の損失

▲50

分離課税短期譲渡所得と損益計算
長期譲渡所得金額

200

200+150=350→350×1/2=175(総所得金額)
一時所得金額

150

分離課税 短期譲渡所得金額

250

250−(▲50) 200 200−(▲500)=▲300
長期譲渡所得金額

1000

1000−(▲300)=700(分離課税の長期譲渡所得金額)

 

259、山林所得金額又は損失、退職所得金額がある場合の損益通算


山林所得金額又は損失、退職所得金額がある場合の損益通算について説明してください。


退職所得、山林所得は、そのまま退職所得、山林所得となりますが、総所得金額、分離課税の譲渡所得金額又は山林所得金額が赤字になる場合、それぞれ下記のように損益通算します。
まず、総所得金額又は分離課税の譲渡所得金額が赤字の場合は、経理実務Q&A255〜258の記載の要領によって損益通算します。引ききれない損失金額を山林所得金額、退職所得金額の順に差し引きします。
次に、山林所得金額が赤字の場合、(総所得金額の第一グループ)→(分離課税の短期譲渡所得金額(最低40%課税→最低20%課税の順に)→(総合課税の短期譲渡所得金額)→(分離課税の長期譲渡所得金額(一般の土地建物等→優良住宅地の造成等のために譲渡した土地等→居住用財産にかかる長期譲渡所得の順に)→(総合課税の長期譲渡所得金額)→(一時所得金額)→(退職所得金額)の順に差し引きします。

 

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