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手形の取引(1)

約束手形と為替手形

商品を販売したり仕入れたりしたとき、その代金を現金や小切手のほかに手形が用いられる。手形には、約束手形と為替手形とがあります。
約束手形は、振出人(手形発行した人で額面代金の支払人)がその受取人(名宛人)に対して、一定の期日に手形に記載された一定の金額(手形額面金額)を無条件で支払うことを約束した証券です。したがって、約束手形を支払人が振り出して受取人に渡すと、その金額についての債務を負います。また、約束手形の受取人又は所持人は約束手形を取得した時から支払人に対して手形金額を受取る権利(債権)を持つことになります。

「勘定の必要性について」に掲載している「取引の8要素」を、確実に理解を深めてください。あやふやだと、なかなか理解しがたところがありますので、何度も復習して「体得」してください。頭で考えるのではなく、体が、勝手に反応するまで理解を深めてください。

約束手形

受 取 人
(名 宛 人)

(売り渡し)商品(仕入)→

←(受取り)約束手形(振出)

支 払 人
(振 出 人)

手形債権者

手形債務者

為替手形


当店は
ASS商店に
売掛金がある

A為替手形の引受けの
ため呈示

(手形の債権・債務なし)

当  店

振 出 人

   ↑     ↓

@当店は
  IE商店に
     買掛金がある

←@商品仕入れ

ASS商店

名 宛 人

B引受け↑

為替手形
振出し→

IE商店

受 取 人

手形金額支払→

(引受人・支払人)

(手形債権者)

(手形債務者)

為替手形は、約束手形よりやや複雑で、振出人が売掛債権などがある人 (名宛人、手形の引受人、支払人)に、自分に代わって手形金額を支払ってもらおうとする証券です。ふつう為替手形を振り出す場合、名宛人はその手形金額の支払を引き受けることにより手形債務者となり、手形の受取人は手形債権者となる。したがって、一般に為替手形の振出人は、手形の債権、債務を持たない。

手形を振り出したり、引き受けたり、受け取ったりした場合の簿記上の処理(手形取引の仕訳について)

@約束手形、為替手形の種類に関係なく受取手形勘定(資産の勘定)と支払手形(負債の勘定)で処理します。
A受取手形勘定
約束手形や為替手形を受け取って手形債権が発生したときに、その手形金額を借方に記入、手形金額の入金や手形の譲渡によって債権が消滅したとき、その金額を貸方に記入する。よって、借方残高は、手形債権の現在保有残高を示してます。
B支払手形勘定
約束手形の振り出しや為替手形の引受けによっ手形債務が発生したときに、その手形金額を貸方に記入(負債の増加)し、手形金額の支払によって手形債務が消滅したときに借方に記入(負債の減少)します。よって、貸方残高は、手形債務の未払い残高を示しています。

(借方)

受 取 手 形

(貸方)


1.約束手形の受け入れ

2.為替手形の受け入れ

(手形債権の発生)
(資産の増加)


1.手形金額の入金

2.手形の裏書譲渡

3.手形の割引

(手形債権の消滅)
(資産の減少)

← 現在保有残高

 

【例】

1.KG商店より商品¥500,000を仕入れ、代金のうち¥250,000はOI商店から受け取った小切手で、残額は同店当ての約束手形を振り出して支払った。

2.MY商店は商品¥400,000を売り渡し、代金のうち¥250,000はNS商店振出しの約束手形を受け取り、残額は、掛とした。

3.KG商店宛の約束手形¥250,000が期日に当店の当座預金から支払った旨、取引銀行から通知を受けた。

4.OI商店は、かねて取り立てを依頼しておいた約束手形¥300,000が期日に当店の当座預金に入金した旨、通知を受けた。

5.NKA商店から商品¥400,000を仕入れ、代金はかねてから売掛金のあるSESK商店に為替手形¥400,000を振出し、SESK商店の引受けを得て、NKA商店に渡した。

6.NAGA商店に対する買掛金¥280,000の支払のため、売掛金のあるOGA商店宛に為替手形を振出し、NAGA商店に渡した。OGA商店は、この為替手形を引き受けた。

(仕訳) 

(借方) (貸方)

1

仕入

500,000

現金

250,000

支払手形

250,000

2

受取手形

250,000

売上

400,000

売掛金

150,000

3

支払手形

250,000

当座預金

250,000

4

当座預金

300,000

受取手形

300,000

5

(当店)の仕訳
仕入
(NKA商店)

400,000

売掛金
(SESK商店)

400,000

●参考 まずはじめに、NKA商店から仕入れた場合の仕訳
「借方」 仕入   「貸方」買掛金

代金は、掛け売りのあるSESK商店に、為替手形の引き受けを依頼し了解を得た場合の仕訳
「借方」 (受取)手形  「貸方」売掛金

次に、上記の手形をNKA商店に買掛け代金として渡した場合の仕訳
「借方」 買掛金  「貸方」 (受取)手形

最終的に、「手形」および「買掛金」どおしが相殺されて、5、(当店)の仕訳が残ることになります。

(SESK商店)の仕訳
買掛金(当店)

400,000

支払手形

400,000

SESK商店は、当店から掛け買いがあるので、「借方」買掛金、
当店の依頼で手形決済を引き受けたので「貸方」支払手形
(NKA商店)の仕訳
受取手形

400,000

売上
(当店)

400,000

NKA商店は、当店に対する売り上げで、「手形」受領だから、「借方」受取手形

6

(当店)の仕訳

買掛金
(NAGA商店)

280,000

売掛金
(OGA商店)

280,000

●参考 NAGA商店に買掛代金支払いのため、掛け売りのあるOGA商店引き受けの手形を発行してNAGA商店に渡した場合の仕訳
「貸方」は、受取手形または支払手形にならない(OGA商店が代金決済を引き受けているから)

OGA商店が当店振り出しの為替手形を引き受けたので
「借方」(受取)手形 「貸方」売掛金 といったん仕訳できる
または、
「借方」(支払)手形 「貸方」売掛金 とも仕訳できる

次に、NAGA商店に買掛け代金支払いに、上記の「手形」を渡したとして、仕訳すると
「借方」買掛金  「貸方」(受取)手形 と仕訳
または、
「借方」買掛金  「貸方」(支払)手形 とも仕訳できる

上記二つの仕訳で、「借方」「貸方」の手形が相殺されて、消える。
残る仕訳が、6、当店の仕訳となります。

この仕訳が、検定試験で、出題される場合が多い例

(NAGA商店)の仕訳
受取手形

280,000

売掛金
(当店)

280,000

当店への掛け売り代金に、手形を受領。その手形は、OGA商店引き受けの手形ですが、約束手形、為替手形どちらを受領しても、ともに、「借方」受取手形
(OGA商店)の仕訳
買掛金
(当店)

280,000

支払手形

280,000

OGA商店は、当店から掛け買いがあるので、「借方」買掛金。 代金は、当店振り出しの手形を引き受けたので、「貸方」支払手形

●参考
1.商品を仕入れたときの代金支払に関する仕訳。
代金¥500,000のうち、¥250,000は受け取っていた小切手を渡したので、現金勘定の減少の処理(貸方に記入)をします。残額の250,000は約束手形の振出しで、当方は振出人なので支払手形勘定の貸方に記入します。将来約束の期日に、代金決済をする義務(債務)が発生したことになります。
2.商品を販売したときの代金受け取りの仕訳。
約束手形を受け取ったら、受取手形勘定の借方に記入します。これは、約束手形を受け取ったことによって代金が受け取れる権利(債権)が生じたことになるからです。
3振出した約束手形の決済期日が到来し、その手形金額決済(支払)に関する仕訳。
約束手形を振出したら、支払人は、手形に記載した決済期日に手形金額を支払わなければならない債務を負います。そして支払手形勘定の貸方に記入しておきます。決済期日がきて、手形金額を支払えば、債務減少(消滅)すので、支払手形勘定の借方に記入します。
4所持している約束手形の決済期日が到来し、その手形金額決済(受取)に関する仕訳。
約束手形を所持した場合、債権が発生するので、受取手形勘定の借方に記入しておきます。その所持していた手形の手形金額を決済期日に受け取ったので、債権減少(消滅)するから受取手形勘定の貸方に記入します。手形金額は当座預金に入金されたのでと当座預金勘定の借方に記入します。
5・6為替手形の発行によって、売掛金のある得意先に、買掛金又は仕入代金の支払義務を持つ仕入先に直接、手形金額の支払を引き受けてもらい支払ってもらう方法の仕訳。
5・6の為替手形振出人である当方(当店)は、売掛代金の換わりに受取手形を受け取ったり、買掛代金の換わりに支払手形を発行したわけではない。
為替手形の受取人と支払人との間では、約束手形の場合のしくみと同じで、処理方法も同じです。NKA商店とNAGA商店は、手形の受取人で債権が生じたので受取手形勘定の借方に記入し、SESK商店とOGA商店は名宛人(引受人、支払人)であるから、手形債務者となりますので支払手形勘定の記入を要し、その貸方に記入します。
手形受取人のNKA商店とNAGA商店は、受取手形の発生と同時に、売掛金の減少又は売上の発生の仕訳を行い、手形代金の支払者であるSEKA商店とOGA商店は、支払手形の発生と同時に買掛金の減少するので買掛金勘定の借方に記入します。

【問題】
次の取引の仕訳をしてください。

取     引    解答例

1

OO商店に商品¥220,000を売り渡し、代金として同店振出し、当店当ての約束手形¥120,000と同店振出しの小切手¥100,000を受取った。

2

SIG商店から商品¥100,000を仕入れ代金のうち¥50,000は同店あての約束手形を振出して支払、残額は掛とした。

3

HAT商店は、KT商店に買掛金¥450,000を支払うため、KT商店受け取り、得意先OS商店宛の為替手形¥450,000を振出して、OS商店の引受けを得た。

4

MO商店から商品¥250,000を仕入、この代金として同店振出し、TT商店受け取りの為替手形を呈示され、その支払いを引き受けた。

5

KU商店に商品¥200,000を販売し、¥150,000は同店振出し、KW商店引受けの為替手形で受取り、残額は掛とした。なお、商品の発送にあたって、発送運賃¥6,000(KU商店負担)を現金で支払った。

6

先に引き受けた為替手形¥250,000が本日満期につき、取引銀行から支払済みのむね、通知を受けた。

7

YT商店よりの買掛金に対して、同店を受取人、得意先ITG商店を名宛人とする為替手形¥500,000を振出し、引受けを求めた後、YT商店に交付した。ITG商店に対して、売掛金¥600,000がある。

手形の裏書

手形の所有者は、約束手形でも為替手形でも支払期日(満期)前に手形に裏書(手形の裏面に記名・押印すること)することによって、手形債権を自由に他人に譲渡することができます。これを手形の裏書譲渡といいます。裏書譲渡は、自分の持っている手形を相手方に裏書した上で譲り渡すので、譲渡人の手形債権は消滅し、受取手形勘定の貸方に記入します。譲受人は、手形債権が発生するから、受取手形勘定の借方に記入します。

【例】

1.FKS商店はSEN商店に対する買掛金の支払として、MYG商店振出しの約束手形¥250,000を裏書譲渡し、残額は、¥100,000は小切手を振出して支払った。

2.OGK商店は、KISYO商店から商品¥200,000を仕入れ、その代金としてKOG商店振出しの約束手形¥140,000を裏書し、残額は、掛とした。

(仕訳)

1

(借方) 買掛金

350,000

(貸方) 受取手形

250,000

当座預金

100,000

2

仕入

200,000

受取手形

140,000

買掛金

60,000

●参考
1買掛代金の支払のため、所持していた約束手形の裏書と小切手の振出しに関する仕訳です。約束手形の受け取りは、手形債権の発生だから受取手形勘定の借方に記入されている。その約束手形を裏書譲渡することは、手形債権の消滅であり、受取手形勘定の貸方にその手形金額を記入します。裏書譲渡は、受取手形勘定の減少として処理します。小切手の振出しは、当座預金の減少で、その勘定の貸方に記入します。
2仕入商品の代金支払として、約束手形の裏書譲渡と掛による取引の仕訳です。所有していた約束手形を裏書譲渡したとき、手形債権は消滅するので、受取手形勘定に貸方に記入します。手形取引の仕訳は、手形債権の発生・消滅、手形債務の発生・消滅かをよく理解してください。

【問題】
次の取引の仕訳をしください。

取      引    解答例

1

HKKI商店に対する買掛金¥220,000の支払として、¥200,000は先に得意先AOM商店から受取っていた約束手形を裏書し、残額は現金で支払った。

2

AKT商店から商品¥450,000を仕入れ、代金は、MOR商店振出し、当店宛の約束手形¥400,000を裏書譲渡し、残額¥50,000は先に受取っていた小切手で支払った。

3

TYU商店に商品¥500,000を売渡し、代金のうち¥300,000はKK商店振出し、TYU商店あての約束手形を裏書譲り受け、残額は掛とした。

4

N商店に対する買掛金300,000を支払いのため、半額は手持ちのS商店振出し、MN商店引受けの為替手形を裏書譲渡し、残額は得意先ITK商店宛の為替手形を振出して同店の引き受けを得て渡した。

 

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