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112、税法上の特別償却の適用を受ける機械装置の据付費、引き取り運賃

113、減価償却資産への資本的支出としての、用途変更のための模様替え

114、中古資産購入に伴って支出した費用の取り扱い

115、償却限度額と残存価額

116、同族会社の留保金課税

117、賞与を受ける人ごとに債務が確定していない利益処分の役員賞与

118、交通反則金の取り扱い

119、交通事故を起こした場合の損害賠償金

120、決算期末までに現金化されない小切手は、貸倒引当金の対象になる

121、貸倒引当金の設定(未収収益、未収入金について)

122、貸倒引当金の設定対象となる勘定科目とそうでない勘定科目

123、偶発債務に対する貸倒れ引当金設定について

124、貸倒引当金の設定(融通手形について)

125、引当金や減価償却の繰入において申告書で減算を認めない趣旨

126、貸倒引当金の設定(支払手形について)

127、前5年以内の繰越欠損金の損金算入

128、借地権対価の支払に代わって相当の地代を支払う場合

129、借地権設定対価も相当の地代も収受しない場合

130、相当の地代の改訂方法に関する届出書を提出したが改訂しなかった場合

131、相当の地代の改訂方法に関する届出書と土地の無償返還に関する届出書のの関係について

132、借地権と借家権の違い

133、未使用の土地を駐車場として賃貸しする場合

134、相当の地代を収受する場合の、土地の帳簿価額の一部損金算入


 

112、税法上の特別償却の適用を受ける機械装置の据付費、引き取り運賃

【問】
税法上の特別償却の適用を受ける機械装置の据付費、引き取り運賃については、税法に定める特別償却の適用を受けることができますか。

【答】
税法上は、購入した減価償却資産の取得価額について、下記のように規定めています。
(1)
減価償却資産の購入の代価(引き取り運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他当該資産の購入のために要した費用がる場合には、その費用の額を加算した金額)
(2)
当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額

よって、機械装置の取得に伴って支出した引き取り運賃、据付費などは、その機械装置の取得価額を構成するものですから、機械装置の本体価額と併せて特別償却の適用を受けることができます。

 

113、減価償却資産への資本的支出としての、用途変更のための模様替え

【問】
減価償却資産への資本的支出としての、用途変更のための模様替え等について説明して下さい。

【答】
用途変更のための模様替えとは、当該資産の内容が変わることで、法人が所有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該資産の価値を高め、または、その耐久性を増加させることとなる部分に対応する支出金額が資本的支出です。
たとえば、倉庫等を改良して店舗にした場合、一般用住宅を改良して店舗にした場合、営業所を改造して倉庫に転用した場合、営業所を改良して店舗にした場合、などが具体的な例です。よって、単に窓を新設、入り口を新設したような場合は、用途変更ではありません。ですから、用途変更をする場合は、固定資産の品質を良くする改良を含むと考えますので、用途変更が優先されます。

 

114、中古資産購入に伴って支出した費用の取り扱い

【問】
新規店舗を出店するために、土地付き建物を購入しましたが、ある程度修復しなければなりません。この修復のために要する費用の取り扱いについて説明してください。

【答】
購入した中古資産について、外装や内装の改修に思わぬ費用がかかる場合がありえます。このような費用は、特別な改修や改造のための費用ではなく、一般的な維持管理費として購入資産の取得価額に加算せずに修繕費として経理処理できれば良いのですが、税法では、当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額は、減価償却資産の取得価額に加算(算入)しなければならないと定められています。
購入した固定資産について事業の用に供するために支出した金額は、一般的に修繕費として経理処理できる場合でも、その固定資産の取得価額に算入しなければならいことになっています。

 

115、償却限度額と残存価額

【問】
償却限度額と残存価額について説明して下さい。

【答】
税法上、有形固定資産の残存価額は、取得価額の10%と規定されています。簿記会計上も同じです。一方、無形減価償却資産の残存価額は、0です。償却可能限度額は、取得価額の全額100%です。
残存価額とは、減価償却を終えた後に残る価額のことですけれど、税法上は、有形減価償却資産については、別途、償却可能限度額がその取得価額の100分の95と規定されており、帳簿価格が取得価額の100分の5(5%)になるまで減価償却できるので、取得価額の5%が帳簿価格です。よって、実務上での残存価額は、取得価額の5%となります。
(注) 有形固定資産の残存価額は、坑道と(第48条第1項第7号)国外リース資産等に掲げる減価償却資産、その取得価額から当該減価償却資産にかかる見積もり残存価額を控除した金額に相当する金額については除かれます。
また、税法の特例として、鉄筋コンクリート造りの建物などは、所轄税務署長の承認を受ければ、備忘帳簿価格として1円を残して、残り全額減価償却ができる規定があります。
ご参考までに減価償却の計算式を掲載します。
有形減価償却資産
※ 定額法  (取得価額−残存価額)×償却率=減価償却額
※ 定率法  減価償却前の帳簿価格×償却率=減価償却額
無形減価償却資産
※ 定額法のみ  (取得価額×償却率)=減価償却額
(注) 償却率、耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の規定に基づいて当該減価償却資産に適用します。

 

116、同族会社の留保金課税

【問】
同族会社の留保金課税として特別税率が適用されることについて説明してください。

【答】
税法では、下記の三つのうち最も多い金額を留保金控除額と規定しされていて、これを超える額について特別の法人税率が課税されることになっています。
※ 当該事業年度の所得等の金額の100分の35に相当する金額
※ 年、1,500万円相当額
※ 期末資本の金額×25/100−期末利益積立金(その事業年度の所得にかかる部分の金額を除きます。)
※ 税率
(1) 年、3,000万円以下の金額〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜10/100
(2) 年、3,000万円を超え1億円以下の金額〜〜〜〜〜15/100
(3) 年、1億円を超える金額〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜20/100
法人の利益(所得)は、最終的に株主等に配当金として分配されるのが一般的で、株主が配当金として分配を受けたとき、所得税が課税されます。法人税は、この配当金に対する前払いであると認識される法人擬制説の考え方によって、同族会社の留保金課税の特別税率の制度が設けれています。このために所得税法では、配当控除の規定があります。このように法人税は所得税の前払いで、後に、精算される機会があるので、その税率は、原則として比例税率になっており、超過累進税率になっている配当所得に対する所得税との差額は、所得税が課税される時に精算されます。株主は、会社に利益(所得)があれば、株主総会等で配当を求めます。しかし、同族会社では、あえて配当せず、利益(所得)を会社に残して運用するでしょう。また、同族会社では、株主が少なく、この少数の株主が会社の運営を左右しています。大株主が会社の社長であるケースが多く、会社や個人の都合にあわせて配当を見合わせることが可能です。このようなことのないように、配慮した制度が、同族会社の留保金課税と考えます。

 

117、賞与を受ける人ごとに債務の確定していない利益処分の役員賞与

【問】
同族会社の留保金額の計算に関連して、賞与を受ける人ごとに債務の確定していない利益処分の役員賞与の取り扱いについて説明してください。

【答】
利益処分計算書に基づいて支給される賞与のうちで、賞与を受ける人ごとの債務が確定していない金額は、利益処分による一種の積立金のようなもので、利益積み立て金額と考えられます。後日になって、賞与を受ける人ごとの債務が確定した時は、その確定した日の属する事業年度の利益処分において、当該賞与の支給があったものとすることになっています。(当該賞与の社外流出処分があったものと判断されます。)
本来、利益処分による配当金、賞与の金額は、社外流出金額で、利益(所得)の留保金額に含まれませんけれど、利益処分によって賞与だけを決議しておいて、実際に役員の各人に支給しなければならない金額を確定しないで未払いの役員賞与としておいた場合などは、留保金課税を逃れる行為になります。これでは、不合理ですから、利益処分による役員賞与に関して、その確定の日に役員各人への支給額が確定していない時は、利益(所得)の社外流出処分がなかったもとして、取り扱われます。
利益処分に基づく賞与に関して、その支払の確定した日から1年を経過した日までに支払がない場合には、1年を経過した日に支払があったものとみなして源泉所得税をその翌月の10日までに納付しなければならないことになっています。この支払の確定した日とは、各役員ごとの支給金額が具体的に定められた日をいいます。
このような利益処分による役員賞与に関しての判断は、同族会社だけに限ったものではないと思いますが、法人税額の計算において規定があるのは、特別な場合を除いて同族会社だけに設けられた規定と考えます。

 

118、交通反則金の取り扱い

【問】
交通反則金の取り扱いについて説明してください。

【答】
税法上、罰金および科料(通告処分による罰金または科料に相当するものを含む。)並びに過料は、損金不算入と規定されていますが、法人が役員または使用人に課せられことになった罰金、科料、過料または交通反則金を負担した時は、その課せられたときの事情により下記のように二つに区分して取り扱われます。
(1) 法人の業務の遂行に関連して行われた行為に課せられた場合は、損金算入されません。また、当該使用人等に対する給与ともなりません。一旦、租税公課勘定で損金経理処理して、決算期末に法人当期所得金額の計算上、所得に加算(申告書別表4で加算し所得の処分は、社外流出欄に記入)します。
(2) その他のものであるときは、 その役員または使用人に対する給与として取り扱われます。よって、役員または使用人に対する源泉税の対象になります。また、役員の場合は、臨時的な給与となり役員賞与として処理しなければなりませんので、損金不算入です。

 

119、交通事故を起こした場合の損害賠償金

【問】
法人の役員や従業員が交通事故を起こした場合の損害賠償金の取り扱いについて説明してください。

【答】
税法では、役員や従業員が交通事故を起こし場合、そのときの事情によって下記のように二つに区分して取り扱います。
(1) 交通事故が発生した時の行為が会社の業務に関連するものであって故意または重過失に基づくものでないときは、 給与以外の損金に算入し必要経費として取り扱うことが出来ます。
(2) その他のものである場合(会社の業務に関連しない、関連するものである場合どちらでも故意または重過失に基づくものである場合)は、 交通事故を起こした役員または従業員に対する債権となります。その役員または従業員の支払能力からみて求償できない事情にあり、その債権の全部または一部を貸倒れとして損金経理した時はそれが認めれれることになっています。しかし、貸倒れとした金額のうち、その役員または従業員の支払能力からみて回収が確実と認められる部分の金額は、その役員または従業員の給与となります。このことで貸倒れとして損金経理するのは、損害賠償金の額を一度役員または従業員に対する債権として計上して、後に貸倒れ損失に計上する場合や、損害賠償金支払時に直接損金算入することもできます。

(1)のように交通事故が会社の業務の遂行上、起こりえるものとの判断から、会社の経費として認めていると考えます。 (2)に該当する事情であっても、役員や従業員にその弁済能力がないと判断されれば、損害賠償金に相当する金額を損金算入することができます。
また、自動車による人身事故に伴う損害賠償金(役員または従業員に対する債権となる場合を除きます。)は、示談成立などによる支払確定前に支出した場合でも支払事業年度の損金に算入されます。この場合ですが、損金算入した損害賠償金の額に相当する保険金(保険見積もり額を限度とします。)を益金の額に算入する必要があります。
(注)保険見積もり額とは、当該法人が自動車損害賠償責任保険契約または任意保険契約を締結した保険会社に対して保険金の支払を請求しようとする金額をいいます。 と規定されています。

 

120、決算期末までに現金化されない小切手は、貸倒れ引当金の対象になるか

【問】
決算期末までに現金化されない小切手は、貸倒れ引当金の設定対象になるかどうかについて説明してください。

【答】
会計学上、売掛金等の回収時に小切手で代金回収した場合には、現金勘定に含めて仕訳処理されます。 小切手回収時の仕訳は、(借方)現金 (貸方)売掛金 と仕訳します。
小切手法上、小切手は、一覧払いに限られていて、銀行にその小切手を提示するといつでも現金化が可能です。実質的に現金と変わらないので、売掛金を小切手にて回収した場合は、現金で回収した場合と同じことです。よって、期末にまだ銀行等に提示していない小切手は、未取り立てで、この分は、貸倒れ引当金の設定対象にはなりません。
実務でよく用いられる先日付け小切手は、小切手法で、振り出しの日附として記載したる日より前に支払の為呈示したる小切手は呈示の日に於いて之を支払うべきものとす と規定されています。よって、先日付け小切手の所持人は、小切手に記載された振出日を待つまでもなく支払の提示をすることができます。このように小切手法の法律上は、一般の小切手を受け取った場合と変わりません。先日付け小切手でもその受領した時に売掛金(売掛債権)は消滅しますから、先日付け小切手であっても特別なものではありません。ですが、実務上は、先日付け小切手を受け渡しする経理上の習慣があり、これが一般的に行われています。実際には、手形と同じ要素で考えられていますから、税法では、期末決算時に先日付け小切手の手持ち残高がある場合には、貸倒れ引当金の設定対象にできるように規定されています。
実務上では、先日付け小切手を受領した時の仕訳は、(借方) 現金 (貸方) 売掛金 または、(借方) 受取手形 (貸方) 売掛金 のような仕訳をせず、売掛金残高をそのまま残高としておきます。 あえて仕訳をするならば、(借方) その他の流動資産 (貸方) 前受金または、預り金 と対照勘定のような仕訳しておき、簿外経理にならないように配慮すれば良いと考えます。決済時に、(借方) 預かり金または前受金 (貸方) その他の流動資産 と逆の戻し仕訳をすれば処理できます。実務では、法の形式より実質的な経理処理を優先に考えて処理される方が現実的であると考えます。

 

121、貸倒引当金の設定(未収収益、未収入金について)

【問】
貸倒れ引当金の設定(未収収益、未収入金)について説明してください。

【答】
税法上、貸倒れ引当金の設定の対象になるのは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる債権 と規定されていますので、未収収益は、原則としてこれらに該当します。法人税法基本通達でも、未収保管料、未収地代家賃または貸付金の未収利子で益金の額に算入されたものが該当するとされていますが、預貯金の未収利子、公社債の未収利子、未収配当はこれに該当しないと規定されています。未収利子は、貸付金にかかるものであるか預貯金、公社債にかかるものであるかを問わず未収収益です。未収収益は、その元本となる貸付金が貸倒れ引当金の設定対象の債権で、未収利子は、その元本である預貯金が貸倒れ引当金の設定対象でないので、それにかかる未収収益についてもこれに準して貸倒れ引当金の設定対象外となります。所有株式にかかる未収配当、差し入れ保証金に係る未収利息も、同じ理由で貸倒れ引当金の対象債権に該当しません。
(注) 会計学上、未収収益とは、一定の契約に従って継続して役務の提供を行う場合に、既に提供した役務に対してまだその対価の支払を受けていないものを言います。賃貸契約等の継続的役務提供契約に基づいて期末日までに営業外収益として発生した未収利息、未収地代、未収家賃、未収手数料等がこれらに該当します。
未収入金については、継続的役務提供契約以外の契約に基づいて発生したものをいいます。原則として貸倒れ引当金の対象債権になります。法人税法基本通達においても未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収の損害賠償金で益金の額に算入されたものおよび保証金債務を履行した場合の求償権が該当します。
法人が他の者から支払を受ける損害賠償金は、実際に支払を受けるまで益金に算入しないことができますが、支払を受けることが確定した事業年度に未収入金に計上することが実務では多いと考えます。
また、下記に記載しますものは、貸倒れ引当金の対象債権に該当しないことと税法で規定されています。
※ 雇用保険法等法令の規定によって交付を受ける給付金等の未収金で、 雇用保険法等の法令に基づいて交付を受ける給付金等は、その給付の原因となる事実が発生した事業年度の益金に算入すべきですが、その交付原因となった休業手当、職業訓練費等と相殺関係にある一種の受贈益に係るもので、これらは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる債権に該当しないものです。
※ 仕入れ割戻しの未収入金で、 仕入れ割戻しは仕入れ代金の返金ですから、売掛金、貸付金その他これらに準ずる債権には、該当しないことになります。

 

122、貸倒引当金の設定対象になる勘定科目とそうでない勘定科目

【問】
貸倒引当金の設定対象になる勘定科目とそうでない勘定科目について説明してください。

【答】
税法では、貸倒引当金の設定対象になるのは、売掛金、貸付金その他これらに準ずる債権と規定されています。債権については下記のように規定されたいます。
※ 未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代、未収家賃、貸付金の利子で、益金の額に算入されたもの
※ 他人のために立替払いをした場合の立替金(前払給料、概算払い旅費、前渡交際費等のように将来に精算される仮払金、立替金として処理したものを除きます。)
※ 未収の損害賠償金で益金の額に算入されたもの
※ 保証債務を履行した場合の求償権
(注) 法人が有するその売掛金、貸付金等の債権について取得した先日付け小切手を債権に含めている時は、これが認められます。
貸借対照表に用いられる勘定科目で債権等に該当する勘定科目としては、下記のとおりです。
売掛金、 受取手形、 貸付金、 不渡手形、
売掛金は、商品の販売や役務の提供を行った経済的利益の未収金ですから、債権に該当します。ただし、同じ売掛先からの買掛金等の負債があれば差引した金額が債権になります。
受取手形は、上記の売掛金回収に対して受け取った手形が主なものですから、債権に該当します。割引手形について、独立した割引手形勘定(資産の勘定)を設けて受取手形と別処理している場合には、決済されるまでは、債権に該当します。裏書手形も同様です。
(仕訳例) 実務では、下記の仕訳処理が一般的です。
(1)(借方)  当座預金    (貸方)  割引手形    手形割引き時仕訳
  (借方)  支払割引料  (貸方)  割引手形    手形割引き時仕訳
  (借方)  割引手形    (貸方)  受取手形    手形決済時
上記の仕訳を行えば、割引手形相当分は、受取手形勘定に含まれていますので、手形が決済処理されるまでは、債権に該当します。
(2)(借方)  買掛金     (貸方)  裏書手形    手形裏書譲渡時
  (借方)  裏書手形   (貸方)  受取手形    手形決済時
上記の仕訳を行えば、裏書手形相当分は、受取手形勘定に含まれていますので、手形が決済されるまでは、債権に該当します。
貸付金は、確実な担保または保証人等が存在すれば貸倒れになる可能性はあまり考えられませんが、税法では、これらを区分していないので、債権に該当します。しかし、債務者から金銭などの受入がある場合で、実体から判断して債権と認められないものは、該当しません。担保または保証人等はこれに該当しません。
不渡手形は、貸倒れ償却した金額を除き、当該債権に該当します。

貸借対照表に用いられる勘定科目で債権等に該当しない勘定科目としては、下記のとおりです。
敷金、 手付金、 前渡金、 前払い費用、 立替金
敷金は、不動産等を賃借りするときに賃貸し人に差し入れる金銭で、契約上は、用益の提供を受けるために支払ったもので、解約時に返金される契約がほとんどですから、債権に該当しません。
手付金、前渡金は、資産の取得のために前もって支払う金銭で、その支払自体が金銭債権ではありませんので、債権には該当しません。
前払い費用、立替金は、前払い給料、概算払い旅費、前渡交際費のように将来において精算される費用の先払いですから、債権に該当しません。たとえば、ホテルに宿泊した場合に、夕食や朝食をホテルの自分が泊まっている部屋に代金請求をつけてもらって、チェックアウトする際に精算しますが、精算までは、ホテル側が宿泊者に対する立替金です。

 

123、偶発債務に対する貸倒れ引当金設定について

【問】
偶発債務に対する貸倒れ引当金の設定について説明して下さい。

【答】
偶発債務について、簿記会計上、割引手形や裏書手形が一般によく知られています。
法人が、他の法人の債務保証(連帯保証)した場合、これも偶発債務ですが、それだけではその保証した会社に対する求償権はまだありませんから、この時点では、貸倒れ引当金の設定対象になりません。債務保証した法人が代金決済ができずに代位弁済を行い、関係会社に求償権が発生した時は、当該求償権は貸付金等の債権となりますから、貸倒れ引当金の設定対象に該当します。
会計学上、債務保証損失引当金が例示されています。債務保証に係る主たる債権者の資産状態等によって、将来債務保証履行に伴う損失の発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる時はこの引当金の設定を必要としますが、税法上は認められていませんので、申告調整(加算項目)を行う必要があります。

 

124、貸倒引当金の設定(融通手形について)

【問】
貸倒引当金の設定(融通手形)について説明してください。

【問】
税法上、実質的に見て債権に該当しない金額としての融通手形について下記のように規定しています。
専ら融資を受ける手段として他から受取手形を取得し、その見合いとして借入金を計上した場合のその受取手形の金額うち借入金の額に相当する金額
手形は売掛金や貸付金の回収に際して受け取るだけでなく、資金の融通を受けるために受け取る場合がありえます。この場合の手形を先方(相手先)の振出手形で受け取った場合には、同じ先方(相手先)に対して債務が発生したことになります。実際上は、債権に該当しないことになりますので、このような受取手形は貸倒引当金設定の対象にならないことになります。
受け取った手形をそのまま所有するだけでは、資金を得れないので、手形を割り引く必要がありますが、 割引を受けやすいように当該相手先と違った振出人の手形と交換することがあります。この場合は、手形振出人と先の債務勘定に計上したものとの名前が違いますので、この手形を所有している間は、手形額面金額に相当する金額が債権になりますので、貸倒れ引当金の設定対象になります。しかし、資金を得るためには、割引を受けなければならないので、手形割引した時点で債権に該当しなくなりますし、資金融通を目的にした手形のため、貸倒引当金設定の対象になる債権もありません。仮に、手形が不渡りになり、割引先から買戻す行為は、貸倒引当金設定に係る債権ではないからです。
(仕訳例)
(借方)  受取手形A   (貸方) 借受金           手形受取時の仕訳

(借方)  受取手形B   (貸方) 受取手形A         手形交換時

(借方)  当座預金    (貸方) 受取手形B(割引手形)  B手形割引時
(借方)  支払割引料  (貸方) 受取手形B(割引手形)  B手形割引時

(借方)  借受金      (貸方) 当座預金         手形割引返済時
(借方)  割引手形    (貸方) 受取手形B        手形割引返済時
または
(借方)  借受金      (貸方) 当座預金         手形割引返済時

 

125、引当金や減価償却の繰入において申告書で減算を認めない趣旨

【問】
引当金や減価償却の繰入において税務申告書で減算するこを認めない趣旨について説明してください。

【答】
税法の制度として、日本では、法人擬制説(116、同族会社の留保金課税を参照してください。)の考えで税制をしいていますので、会社の配当を受け取った時、個人では、配当控除、会社の場合には、受け取り配当の益金不算入の規定があります。配当を受け取る側で、相手の会社で法人税が課税されているかどうかを判断して、受け取り配当の益金不算入の規定を適用するかどうかの判断をすることは実際上、困難です。配当支払側の会社で法人税が課税されていることが前提となってきます。
また、税法は、確定決算から課税所得を計算する仕組みになっていますので、引当金の繰入、減価償却など損金経理が条件です。
利益処分が認められる準備金の積み立て、圧縮記帳でも、利益処分に、準備金を計上した金額を限度として別表4で減算できます。このように損益計算書または利益処分に記載した金額を限度として所得の金額の計算上損金に算入することを確定決算主義と呼んでいます。引当金の繰入や減価償却について確定決算主義をやめてしまうと、決算書で利益200万円を計上、そのうち配当金として100万円を利益処分計上、申告書で減価償却150万円減算、申告書で引当金50万円減算計上、このようにしますと、会社の課税所得は0円になり、100万円の配当金のもとの利益に対する法人税は0円になります。これでは、制度的に不合理が生じます。ですから、税法が認めている利益処分に明確に記載しその額を限度として申告減算処理としての申告調整が可能となります。

 

126、貸倒れ引当金の設定(支払手形)について

【問】
貸倒れ引当金の設定(支払手形)について説明て下さい。

【答】
税法上、貸倒れ引当金の計算の基礎となる貸金は、当該債権に係る債務者から受け入れた金額があることにより、実質的に債権と見られないものがあるときは、これらを差引して計算することとなっています。
同一の相手先に対して売掛金または受取手形と買掛金がある場合、売掛金と営業に関する保証金がある場合、売掛金とそのものから受け入れた借入金がある場合、完成工事の未収金と未成工事に対する前受金がある場合、貸付金と買掛金とがある場合、使用人に対する貸付金とそのものから受け入れた預かり金がある場合、などが法人税法基本通達に例示されています。
貸金を有する相手先に振り出した支払手形は、一般的には、割引または裏書によって第三者に手形を譲渡していますので、相手先が万一倒産した場合には、貸金と手形債務との相殺はできません。よって支払手形を貸倒引当金の基礎となる貸金から差引しないことが合理的な考えといえます。

 

127、前5年以内の繰越欠損金の損金算入

【問】
前5年以内の繰越欠損金の損金算入について説明してください。

【答】
確定申告書等を提出する法人の各事業年度開始の日前5年以内に開始した事業年度において生じた欠損金で、前事業年度までに繰越欠損金の損金算入または欠損金の繰り戻しによる還付の対象とされなかった金額は、その事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入するという税法上の制度です。
仮に2001年3月期に欠損金150万円の青色確定申告書を提出した場合、事業年度に変更がない限り期首以降5年間の期間に生じる150万円までの所得金額から控除されます。たとえば、2002年3月期に欠損金100万円を申告、2003年3月期に繰越欠損金控除前の所得金額200万円を計上した場合は、200万円−150万円(2001年3月期繰越欠損金)−50万円(2002年3月期繰越欠損金)=0円(2003年3月期の所得金額)となります。そして、2002年3月期に残った繰越欠損金50万円は、次年度に繰り越されます。この繰越が5年まで繰り越すことができます。
(注)租税特別措置法の規定により欠損金繰越が5年のところを7年の適用を受けることができる措置が定められていますので、詳細は同措置法を参照して下さい。
2002年3月期の欠損金(残った繰越欠損金50万円)は、その後の事業年度において、差引の対象になる欠損金がない場合(2007年3月期までに未控除の場合)は、繰越欠損金の控除は打ち切りとなります。
また、翌期首後に事業年度を変更した場合には、繰越欠損金が翌期首後5年間の所得金額から控除されないことが起こりますから、注意してください。仮に、3月決算から9月決算に変更した場合、2001年3月期が事業年度開始の日前5年以内に開始した事業年度になるのは、2005年9月期になります。
この対象になる繰越欠損金または繰越欠損金控除前の所得金額は、税法上の所得金額または欠損金額で、会社が損失金処理のために資本積立金や利益積立金を取り崩して補填を行い、繰越損失表示しない場合等は、この取り扱いには関係がありません。また、この制度を利用するには、欠損金の生じた事業年度の申告書が青色確定申告書を提出し、その後において連続して確定申告書(青色申告書でなくてもよい)を提出していなければならないことになっています。そして、別表7(青色申告書を提出した事業年度の欠損金または災害損失金による損失金の損金算入に関する明細書)を添付し、別表1(1)の欠損金または災害損失金等の当期控除額か翌期へ繰越す欠損金または災害損失金の欄に所要事項を記入します。

 

128、借地権対価の支払に代わって相当の地代を支払う場合

【問】
借地権対価の支払に代わって相当の地代を支払う場合について説明してください。

【答】
土地の賃貸借においての一般的な慣行では、権利金が高い場合には、その後の地代が低く、権利金が低いか無償の場合にはその後の地代が高い場合がほとんどです。このことは、高い権利金を収受した場合には土地の上土部分の譲渡による所得が大きく、地代収受権としての底地部分の価値が更地と変わらず、更地の価額に対応するだけの地代をその後も受け取っていくからです。
借地権取引の慣行のある場所の土地を法人が他人に使用させる行為は、一般的に借主からその対価として権利金を収受するはずです。もし、無償または低い価額の権利金しか収受しない場合には、貸主(地主)である会社は借主に対して通常収受すべき権利金(低い価額の権利金を収受している時は当該額を控除した額)を贈与し、借主は無償または低い価額で借地権の贈与を受けたものとして取り扱われます。
税法では、法人が借地権の設定をさせて権利金をまったく収受しないとか、低い価額の権利金しか収受しない場合においても、その土地の価額(低い価額の権利金を収受している時は当該額を控除した金額)に照らして相当の地代を収受している時は、その取引は正常な取引条件でなされたものとして法人の所得の金額を計算することになっています。地主である法人が他の法人に権利金に代えて相当の地代を収受する限り、地主である法人に借地権の無償贈与の認定や、借主に対する借地権の受贈益の認定は行われません。この場合その土地の更地価額(権利金を収受しているときまたは特別な経済的利益があるときは当該金額を控除します。)に対して概ね年8%程度の地代は、相当の地代に該当するものとして取り扱われます。この土地の更地価額は、当該土地の更地としての通常の価額を言います。この取り扱いの適用に際しては、課税上弊害がない限り当該土地の近傍地の公示価額等から合理的に計算した価額または財産評価基本通達の例によって計算した価額を用いてもよいことになっています。このことは、当事者間での合意によって当該土地の価額に応じて相当の地代を改訂する方法が行われることおよび将来無償で借地を返還することが明らかにされているときは権利金の認定課税でなく相当の地代の認定課税が行われることを考慮し相当の地代の額をできるだけ現実的なものにするために規定された取り扱いです。
相当の地代を収受することとした場合は、借地権設定等に関する契約書において土地の賃貸借期間中の地代の改訂方法につき下記のどちらかによるかを決め、その旨を借地人との連名により、相当の地代の改訂方法に関する届出書によって、借地権設定契約後遅滞なく地主の所轄税務署長に届出することになっています。この届出がないときは、その他の方法を選択したものとされます。
※ 土地の価額の上昇に応じて準次地代の額を相当の地代の額に改訂する方法

※ その他の方法

(注) 土地の無償返還に関する届出書を提出したときは、相当の地代の改訂方法に関する届出書の提出はしなくてよいことになっています。

 

129、借地権設定対価も相当の地代も収受しない場合

【問】
借地権設定対価も相当の地代も収受しない場合について説明してください。

【答】
税法の規定では、地主である法人が借地権の設定にあたり通常の権利金の収受に代えて相当の地代を収受している時は、その借地権の設定は正常な取引条件で行われたものとして取り扱われます。
税法に規定されているように相当の地代を収受しているかどうかが、権利金認定課税を行うかどうかの判断基準になります。権利金も相当の地代も収受していない場合は原則として権利金の認定課税が行われます。権利金の認定課税の額は、下記の計算式によって計算した金額から実際に収受している権利金の額と特別な経済的利益の額を控除した金額です。

土地の更地価額 ×

(1

実際に収受している地代の年額

相当の地代の年額

(例1) 更地価額 5,000万円 (財産評価基本通達よる評価額 3,000万円) この土地の権利金の収受なし 地代年額 180万円 
借地人への認定課税される額(1,250万円)の計算は次のとおりです。

5,000万円 × (1

180万円

1,250万円 ※ 3,000万円×8%=240万円
※240万円

その土地に関して、借地権の設定に係る契約書において将来借地人がその土地を無償で返還することが明らかにされ、かつ地主との連名によって土地の無償返還に関する届出書を作成して借地権設定契約後遅滞なく地主の住居地の所轄税務署長に提出すれば、権利金の認定課税は行われないことになっています。またその土地の賃貸借期間を含む各事業年度において相当の地代の額と実際に収受している地代の額の差額を借地人に贈与したものとして取り扱われます。この取り扱いが行われる場合は、相当の地代の額について概ね3年以下の期間ごとに地価の上昇に伴う見直しを行い、贈与と認定される差額地代額の改訂をする必要があります。

(例2) (例1)で借地人が当該土地を将来無償で返還することが決められており、かつ、土地の無償返還に関する届出書が所轄の税務署に提出されていれば、地主から借地人への贈与があったものとして取り扱われる額は、次のとおりです。

240万円(3,000万円×8%)−180万円=60万円

借地権の設定に際し、権利金に代えて相当の地代の収受を行うのは一般的に、会社の役員とその会社間での特別な関係(同族会社)、親子会社などが考えられます。このような関係においては、双方の利害関係が共通しますから、権利金を収受しない、将来借地人が立ち退き料を請求しない、という土地の賃貸借取引がごく一般的に行われます。このような場合、土地の賃貸借期間中は、相当の地代を収受されていれば問題ないことになり、仮に実際に収受されていなくても、権利金の額の認定を行うよりも相当の地代の額の認定を行う方が経済の実態に即しているいると考えられます。

 

130、相当の地代の改訂方法に関する届出書を提出したが改訂しなかった場合

【問】
相当の地代の改訂方法に関する届出書を提出したが改訂しなかった場合について説明してください。

【答】
相当の地代の改訂を行うことを定めた当事者間の契約と相当の地代の改訂方法に関する届出書を提出した後の効力について考えますと、当初の契約が破棄されて、土地の価額の上昇に応じて準次地代の額を相当の地代の額に改訂する の規定の効力を失い、その他の方法 つまり、当該届出をしなかった場合と同じことになり、よって相当の地代の改訂はその必要がなくなり、差額地代の認定をする必要がありません。そして、将来賃借り人が立ち退く時は、立退き料の支払を必要とします。また、地価の上昇に応じて相当の地代の改訂をしないので、借地人の側に地価の上昇に伴う借地権価値が自然に生じただけで、この時点で受贈益や評価益の認定は行われないことになっています。これは相当の地代の改訂方法に関する届出書を提出したかどうかよって変わらないので、借地権の認定課税の問題は起こりません。
次に当初の契約はそのままで継続し、借地人に対して一時的に地代を安くした場合は、差額地代分の寄付金が発生します。賃借り人は、差額地代と差額地代の支払債務免除益の両方が発生しますので、賃借り人には課税関係が発生しません。このような場合、覚書などで当初の契約を継続したまま一時的に地代を安くすることを定めておいて、地主において寄付金の自主申告を行っておくとよいと考えます。
地代を下げた場合は、借地権設定時に権利金の認定課税を避けるために一時的に相当の地代を収受することにして、その後、時期を考えて地代を下げる行為も考えられます。このため税法では、地代を下げたことについて相当の理由があると認められる場合を除き、下げた時の土地の価額を基礎にして次の計算式で計算した金額(既に権利金の一部を収受している場合は当該額を控除した金額)について、借地権の権利金認定課税を行うことを規定しています。

土地の更地価額 × (1 実際に収受している地代の年額

相当の地代の年額

この場合、借地権設定の時と地代引き下げの時の間で土地の値上がりがあるとき、地代引き下げ時の土地の価額を基にして権利金の額を計算するので、値上がり益にまで認定課税されますが、違法行為の防止のため地代引き下げ時に借地権の設定があったことと考え規定が設けられています。

 

131、相当の地代の改訂方法に関する届出書と土地の無償返還に関する届出書の関係について

【問】
相当の地代の改訂方法に関する届出書と土地の無償返還に関する届出書の関係について説明してください。

【答】
相当の地代の改訂方法に関する届出書と土地の無償返還に関する届出書の関係について表にまとめてみました。

a

土地の無償返還届出書

相当の地代の改訂届出書

提出の事由 借地権設定時 相当の地代の額未満の額の授受を受けているとき 相当の地代の額の授受をしているとき
将来についての契約 借地人が土地を無償返還することの契約 地価の上昇に応じて地代の改訂をするかどうかの契約
提出による効果 借地権設定時 権利金の認定でなく、差額地代の認定を行います 特にありません
将来 賃貸借期間中 相当の地代の額の地価の上昇に応ずる見通しを必要とします 地価の上昇に応じて地代を改定する方法を選択したときは、相当の地代の額の地価の上昇に応ずる見通しを必要とします
土地の返還時 無償返還を認めています 地価の上昇に応じて地代を改定する方法を選択したときは、無償返還を認めています

相当の地代の改訂方法に関する届出書は、収受する地代が相当の地代の時に届出をする点で、土地の無償返還の届出書と異なります。この場合は、契約書において地価の上昇に応じて地代の額を改訂するかどうかを定め、その旨を届け出ます。届出がないときは地価の上昇に応ずる地代の額の改訂をしない方法を選択したことになるので、届出がなくても借地権設定の課税関係には影響がありません。土地の無償返還届出書のように権利金の額の認定か差額地代の額の認定かというような問題は発生しませんが、将来において借地人がその土地を無償返還するためには地価の上昇に応じて地代の額の改訂をすることを契約書に定め、この届出書にその旨を記して提出しておくことが必要です。
土地の無償返還に関する届出書は、法人が権利金を収受しないで借地権の設定等による土地の使用を他人にさせることで、これによって収受する地代が相当の地代の額未満の時に、将来借地人がその土地を無償で返還することが契約書に定められている場合、その旨を届出してもらうという制度です。借地人が将来無償返還するような土地は、借地権の価値が低く地代収受権としての底地権の価値が高いわけですから、相当の地代の収受が行われるべきです。このためこの届出書を提出した場合、相当の地代と実際に収受している地代との差額の認定が行われます。権利金の額の認定は行われません。税法上は、差額地代の認定を行って相当の地代の価値が高く、地主は借地人に立退き料を払う必要がないという論理になります。

 

132、借地権と借家権の違い

【問】
借地権と借家権の違いについて説明してください。

【答】
借地法上、借地権とは、建物の所有を目的とする地上権および賃借権をいいます。民法上地上権は、物権ですから物に対して直接に支配する排他的な権利で、すべての人に対しその尊重を求めることができます。
賃借権は、債権で債務者(地主)に対してのみ一定の行為(土地の賃貸)を要求できる相対的な権利で、契約当事者間しか効力はありません。
たとえば、法人が所有する土地(更地)を他人に対して営業所の建設用地として賃貸しする場合は、当該他人が借地権の設定をすることになり、法人がその所有する土地(更地)の上に自己が営業所を建設して他人に賃貸しする時は、当該他人にとっては借家権の取得です。この借家権と借地権とは法的な保護の度合いが非常に違っていて、税法上も取り扱いに違が見られます。
現在、借地権は大部分が賃借権で、借地法によって物権である地上権とほぼ同様の保護が与えられていると考えます。土地の賃借権者が第三者に借地権上の建物を譲渡した時は、土地の賃借権もあわせて譲渡することになり、地主が自分に不利になるおぞれがないにもかかわらず賃借権の譲渡を承諾しないときは、借地権者の申し立てによって裁判所が地主の承諾に代わる許可を与えます。
借家権はすべて債権ですが、同じ債権でも土地の賃借権のような保護が与えられていません。借家権の譲渡には必ず家主の承諾が必要です。このため取引慣行としても借地権設定の場合の権利金の額は土地の上土部分の譲渡の対価と考えられるほど高額ですが、借家権利金はそれほど高くありません。借地権設定の場合のような高い権利金もしくは相当の地代の支払という問題は発生しません。また、借主は建物を借りると同時に土地も借りているのではないかと考える場合がありますが、建物を利用するために必要な範囲内で土地を利用するにすぎず、建物の所有を目的とした借地権を設定したのではないと考えます。

 

133、未使用の土地を駐車場として賃貸しする場合

【問】
未使用の土地を駐車場として賃貸しする場合について説明してください。

【答】
更地のままで、駐車場や物品置き場などに土地を使用させる場合は、一般的には権利金の収受は行われないと考えられます。よって、一般的には権利金を収受しなくても税法上も問題ありません。地代の額についても、このような場合は権利金の収受に代えて受け取る相当の地代の額ほどの高額の地代は、一般に収受されず、その土地の使用目的、使用状況、使用期間、などを考慮して相応の地代の額が決められると考えますので、もし、当該地代が相当額以下の地代しか収受していない時は、その差額について借地人に対する贈与が認定されます。ただし、たとえば、空閑地を短期間使用させる場合や土地の管理との兼ね合いで駐車場として適時利用させる場合など、地主として当該地代相当額をも請求できない場合には、この認定課税も行われません。
借地法上で、借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または賃借権と規定されています。未使用の土地を駐車場として賃貸しする場合は、このことに該当しませので、借地法上の保護が受けられません。
税法上の権利金の認定を問題としている借地権は、単に地上権または土地の賃借権とのみ規定されていて、建物の所有を目的とする場合だけに限定されていませんので、借地法上の借地権よりもその範囲が広いもので、未使用の土地を駐車場に賃貸しする場合は、これに該当しないのかという問題が考えられます。しかし、税法上の借地権には その使用の対価として通常権利金その他一時金を収受する取引上の慣行がある場合 という条件が付されています。建物所有を目的としたものかどうかという形式判断でなく、権利金を収受する取引慣行があるかどうかという実際上の判断をすることとされています。
建物を所有する目的でも、たとえば、仮営業所、仮店舗、などの簡易な建物の敷地として使用するものである場合など、通常権利金の収受が行われないと認められるときは、税法上の地上権に該当しませんので、借地法上の借地権よりもその範囲が狭い場合があります。

 

134、相当の地代を収受する場合の土地の帳簿価額の一部損金算入

【問】
相当の地代を収受する場合の土地の帳簿価額の一部損金算入について説明してください。

【答】
税法では、借地権設定後の土地の価額とは、その土地の収益力を基に算出される価額です。
高い地代を収受し得る土地は、借地権の設定を受けなくても低くないということですから、他人の建物が地上に立っているという条件は権利金の収受の有無に関係なく同じです。他に当該土地を売却する場合に形成される価値には差異がないでしょう。地代の額から収益還元して評価されるには価額に差異があることになります。
借地権の設定にあったって権利金を収受する代わりに相当の地代を収受することとした時は、底地の価値は以後も高い地代を収受することができるほど高いものです。土地の価値は、借地権の設定によって値下がりしていないことになりますから、税法の規定による土地の帳簿価額の一部損金算入はできないことになります。

 

 

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