実務Q&A

5.賃借建物を内部造作した場合の耐用年数


鉄筋コンクリート造りの建物の一部を賃借し、喫茶店にするために次のような内部造作を行いましたが、この内部造作費は、建物本体の耐用年数によるのですが、それとも造作物の耐用年数により見積もることになるのですかどちらですか。
@ショーウインドウ等のガラス戸   1,000万円
A床防水タイル              800万円
Bその他の木造内装部分       2,000万円
なお、賃借期間は5年ごとに更新ができ、終期は明確ではありませんし、造作の買取請求もできません。


ビルや地下街の賃借に際し、その造作は賃借人の使用に応じ賃借人が施設することが多く、かつ、その賃借期間の更新は可能ですが、その造作の買取請求はできない場合が多いようです。この場合の造作は、建物についてなされたものですから、建物の資本的支出となるのですが、建物本体と造作物とでは所有者も異なり、かつ、建物の耐用年数はその建物の構造体を基礎として算定されていることから、その造作についての構造体を含めて、算出されている耐用年数を適用することは相当でありません。そこで、造作物については、一つの資産として所有者においてその賃借期間を耐用年数として償却することが認められています。
しかしながら、賃借建物の更新ができることとされていますので、質問の造作物の耐用年数は、造作の種類(ウインドウ、床、壁等)、用途(小売店舗、飲食店、事務所等)、使用材質(金属製、木造等)を勘案して見積もることになりますが、ウインドウ、カウンターというように造作の種類、材質に区分し、それぞれの個別耐用年数による年あたり償却費を計算し、その加重平均により、造作全部を一つの資産として総合して耐用年数を見積もる必要があります。したっがって、質問の場合は、次の算式により求めた年数が造作物の耐用年数となります。

種類、用途 取得価格 年数 年要償却額
ショーウインドウ 1,000万円 16年  62万円
床防水タイル  800万円 10年  80万円
その他の木造内装部分 2,000万円 22年  90万円
合   計 3,800万円(A)   232万円(B)

 3,800万円(A)÷232万円(B)=16.38年
すなわち、この造作物の見積もり耐用年数は、16年となります。
(注1)ショーウインドウ等のガラス戸は、耐用年数省令別表第一の「器具・備品」の「陳列ケース」の「その他のもの」の8年の2倍の16年を使用しました。
(注2)床防水タイルは、百貨店の取替実績の10年を使用しました。
(注3)「その他の木造内装部分」は、耐用年数省令別表第一の「建物」の「木造」の「飲食店用」の22年を使用しました。

なお、自己所有の建物に施設した造作は建物の本体に含まれるので、上記のような見積耐用年数を使用しません。建物の耐用年数により償却することになります。

 

 

実務Q&A