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手  形(2級編)

手形の裏書

所持している手形を裏書して仕入代金の支払などに使用した場合、その手形が支払人によって満期日に支払われなかったときは、裏書人が償還請求を受け、代金を支払わなければならない。このように裏書譲渡した時点では、まだ確定した債務ではないが、将来、裏書譲渡した手形が不渡りになった場合のような確定した債務となるおそれのある事柄を偶発債務と言います。手形の裏書譲渡による偶発債務は、次のような処理方法があります。

評価勘定による方法

(借方) 買掛金     ○○○ (貸方) 裏書手形       ○○○

対照勘定による方法

(借方) 買掛金          .○○○ (貸方) 受取手形       ○○○
手形裏書義務見返   ○○○ 手形裏書義務    ○○○

対照勘定は、資産、負債などを示す勘定ではなくて、ある事実の備忘記録のために使用する1組の勘定で、この1組の勘定は、発生・消滅がいつも同時に処理(記録)される。
偶発債務を仕訳(記録)したら、手形の支払期日(満期日)には、必ず、その消滅の仕訳を記入する。下記の例を参考にしてください。

評価勘定による方法

(借方) 裏書手形      ○○○ (貸方) 受取手形       ○○○

対照勘定による方法

(借方) 手形裏書義務   ○○○ (貸方) 手形裏書義務見返  ○○○

偶発債務を仕訳記入する方法は、上記のとおり2つの方法があります。簿記検定試験では、評価勘定による出題が多いようです。
また、対照勘定に裏書手形見返・裏書手形を仕訳として用いることもあります。

【例】

1.東京商事から商品¥700,000を仕入れ、代金として、得意先千葉商店振出し、当店宛の約束手形¥700,000を裏書譲渡した。(この手形の裏書譲渡に伴う偶発債務は評価勘定により処理すること)

2.上記の約束手形が満期日(支払期日)に決済された。

(仕訳)

1.(借方)  仕入

700,000

(貸方)  裏書手形

700,000

2.      .裏書手形

700,000

  .    受取手形

700,000

手形を裏書譲渡したとき、偶発債務を評価勘定で示す場合は、受取手形勘定を減少させないで、受取手形の減少を示す評価勘定である裏書手形勘定の貸方に仕訳を記入します。裏書手形勘定は、受取手形の減少を示す評価勘定であるとともに、偶発債務を示す勘定でもあります。裏書した手形が支払期日(満期日)に決済されたら偶発債務は消滅するから、裏書手形勘定と受取手形勘定とを相殺します。

手形の割引

所持している手形を期日前に銀行などの金融機関に裏書譲渡し、資金を得ることを手形の割引といいます。割引を受けた手形が不渡りになれば、銀行から償還請求され手形代金を支払う必要があります。手形の割引に伴うこの偶発債務を示す方法は、次の2つの方法があり、検定試験では、評価勘定での出題がほとんどです。

評価勘定による方法

(借方)  割引料

○○

(貸方)  割引手形

○○○

      .当座預金

○○○

対照勘定による方法

 (借方)  割引料

○○

(借方)  受取手形

○○○

       当座預金

○○○

(借方)  割引手形見返

○○○

(貸方)  割引手形

○○○

割引をした手形が満期日(支払期日)に決済されたら、偶発債務は消滅するので、次のように仕訳し記帳します.

評価勘定による方法

(借方)  割引手形

○○○

(貸方)  受取手形

○○○

対照勘定による方法

(借方)  割引手形

○○○

(貸方) 割引手形見返

○○○

また、対照勘定に、手形割引義務見返・手形割引義務と仕訳することもあります。

【例】

1.大阪商店振出しの約束手形¥900,000を取引銀行で割引し、割引料¥7,500を差引かれた手取金は当座預金とした。(評価勘定を用いる方法によること)

2.上記の手形が満期日に支払済みとなった。

(仕訳)

1.(借方)  支払割引料

7,500

(貸方)  割引手形

900,000

        当座預金

892500

2.       割引手形

900,000

      受取手形

900,000

1.手形を割引いた際、偶発債務を示す仕訳は(評価勘定を用いる方法によること)とかかれているから、直接、受取手形勘定を減少させないで、評価勘定である割引手形勘定を用います。割引料は支払割引料勘定(費用の勘定)の借方に記入します。
割引料の計算
手形額面金額×割引利率×割引日数/365=割引料

2.手形の満期日当日になれば、偶発債務は消滅するので、割引手形勘定と受取手形勘定とを相殺します。

荷為替の取り組み

遠方の得意先に商品を売り上げた場合、その売上代金の早期回収を目的として、商品の輸送を運送業者に依頼して受取った貨物引換証や船荷証券等の貨物代表証券を担保にして、荷受人あての荷為替手形を振出して銀行に割引を依頼するケースがあります。これを荷為替の取り組みといいます。荷為替の取り組みでは、商品の発送と同時に代金を回収したものと考え、受取手形勘定を使用せず、売上勘定で処理することになります。
荷受人は、この手形を引き受けるか、支払をするかして、貨物代表証券を受取り、これと引き換えに商品を受領します。荷受人が銀行から手形を呈示されて引受けをした時は、支払手形勘定の貸方に記入します。また荷為替の額面金額は、商品価格の7〜8割が一般的であり、この割合で荷為替を取り組むことが多いです。残額については、荷送人と荷受人との間で決済されます。使用する勘定は、売掛金勘定・買掛金勘定であり、これらの勘定で処理されます。

【例】

1.高知商店は千歳商店に、商品¥2,000,000を船便で発送し、代金のうち¥1,600,000について取引銀行で荷為替を取り組み、割引料¥24,000を差し引かれ、残額を当座預金に預入れした。

2.千歳商店は、取引銀行から上記の荷為替手形について引受けを求められたので、これを引受け、船荷証券を受取り、これと引き換えに商品を受取った。

(仕訳)

1.(借方)  支払割引料

24,000

(貸方)   売上

2,000,000

        当座預金

1,576,000

        売掛金

400,000

2.(借方)   仕入

1,000,000

(貸方)  支払手形

1,600,000

       買掛金

400,000

1.荷為替を取り組んだとき、荷送人から見ると、荷為替手形を振出し、銀行で割引くことは、商品販売と手形割引を同時に行ったことになります。よって手形勘定は発生せず、貸方は売上発生として売上勘定に記入し、差し引かれた割引料を支払割引料勘定の借方に記入し、手取金は当座預金勘定の借方に記入します。

2.荷受人から見ると、荷為替手形の取り組みは、商品を仕入れ、その代金を約束手形を振出して支払ったのと同じことになります。よって借方は、仕入れ発生として仕入勘定に記入し、貸方は、荷為替の取り組みにより手形債務が発生したので支払手形勘定に記入し、商品の仕入れ価額と手形額面との差額は、買掛金勘定に記入します。

自己受為替手形

為替手形は、一定の金額(手形の額面)を一定の期日(満期日、決済期日)に支払うことを委託する証券です。為替手形を振出しても原則としては、手形債権・債務は発生しないから、手形勘定の記帳は必要ありません。けれども代金の回収を確実にするために、商品代金や売掛代金について、得意先あてに自己を受取人とした為替手形を振出して、得意先に引受けを請求することがあります。このような自己を受取人とする為替手形を自己受為替手形といいます。自己受為替手形を振出して引受けを得たならば、手形上の債権が発生したので、受取手形勘定の借方に記入します。

【例】

得意先京都商店に対する売掛金を取り立てるために、同店宛、当店受取りの為替手形¥1,000,000を振出し、同店の引受けを得た。

(仕訳)

(借方) 受取手形

1,000,000

(貸方) 売掛金

1,000,000

京都商店が支払人(名宛人)、当店が受取人(振出人)となる自己為替手形です。自己為替手形を振出して京都商店の引受けを得たので、当店は、手形上の債権が発生したので受取手形勘定の借方に記入します。

手形の不渡り

手形の所有者は、所持する手形の期日(満期日)がくると、その手形代金の取り立て請求をしますが、ときによって支払人の都合により、銀行から支払を拒否(拒絶)される場合があります。このような支払を拒絶された手形を不渡手形と言います。手形が不渡になったときは、手形金額、取立請求に要した諸費用、支払期日以降の利息などを、手形の裏書人または振出人に請求できます。不渡になった手形は、一般の手形債権と別に扱い、受取手形と区別して処理しなければなりません。そこで、不渡になったら、受取手形勘定から不渡手形勘定に振り替えます。償還請求に要した費用も不渡手形勘定に記入します。
裏書した手形や割引した手形が不渡になったときも、手形額面金額、償還諸費用を支払ったときも不渡手形勘定に記入します。裏書譲渡や割引に伴う偶発債務を記帳している場合、裏書譲渡手形や割引手形が不渡となった期日に、決済された場合と同じ仕訳を行い、偶発債務の記録を消滅させます。
不渡手形を回収したときは、不渡手形勘定の貸方に記入し、回収不能になったときは、売掛金の貸倒れと同じ会計処理を行います。

【例】

1.山名商店から売掛代金として裏書譲り受けた横浜商店振出し、山名商店宛の約束手形¥850,000が支払期日になったので取引銀行を通じて支払い呈示したところ支払拒絶された。そこで、直ちに山名商店に償還請求を行い、償還請求のための諸費用¥9,000を現金で支払った。

2.上記の不渡手形について山名商店から償還を受けた。その明細は手形額面¥850,000償還請求費用¥9,000、支払期日後の利息¥5,000で、その合計額を小切手で受取った。

3.商工銀行で割引いた東京商店振出し、当店受取りの約束手形¥500,000が不渡となったため、この代金が支払期日以後の利息¥3,500とともに当座預金から引き落とされた。なお、この手形割引について偶発債務は評価勘定で処理されていた。

4.さきに買掛代金として千葉商店に裏書譲渡した神奈川商店振出し、当店あての約束手形¥600,000が不渡となり、償還請求のための諸費用¥6,000とともに小切手を振出して支払った。なお、裏書譲渡に伴う偶発債務を評価勘定を用いて記帳してある。

5.上記の不渡手形は、神奈川商店が倒産したために全額回収不能になった。なお、貸倒引当金勘定の残高は、¥450,000である。

(仕訳)

1.(借方) 不渡手形

859,000

(貸方) 受取手形

850,000

現金

9,000

2. 現金

864,000

不渡手形

859,000

受取利息

5,000

3. 不渡手形

503,500

当座預金

503,500

割引手形

500,000

受取手形

500,000

4. 不渡手形

606,000

当座預金

606,000

裏書手形

600,000

受取手形

600,000

5. 貸倒引当金

450,000

不渡手形

606,000

貸倒償却
(貸倒損失)

156,000

●参考

1.所有の手形が期日に不渡になったら、受取手形勘定から不渡手形勘定に振り替えります。なお、償還請求のため諸費用を支払ったら、これも手形義務者(債務者)に請求できるので不渡手形勘定に含める。

2.手形が不渡になったら、手形義務者(債務者)に対して、手形額面金額、償還諸費用及び支払期日から償還までの利息を請求することができる。償還を受けたときは、手形額面金額及び償還請求に要した費用は、すでに不渡手形勘定に記入されているから、貸方に減少の記入し、利息については受取利息の貸方に記入します。

3.割引いた手形が不渡になれば、当座預金からそれらの金額が引き落とされるが、この金額は手形債務者に請求できるので、この債権を不渡手形勘定の借方に記入し、当座預金勘定の貸方に減少の記入をします。この問では、この手形割引について偶発債務は評価勘定で処理されていたと記述されているので、割引手形勘定と受取手形勘定とを減少させる必要があります。また、償還請求費用や支払期日から償還日までの利息を支払ったときは、不渡手形勘定に記入しておきます。

当座預金

不渡引落分 503,500

不渡手形

不渡発生  503,500

割引手形

支払期日  500,000 (割引額)  500,000 

受取手形

支払期日  500,000

4.裏書譲渡した手形が不渡となり、償還請求を受け、手形額面金額、償還請求諸費用等を支払った場合は、不渡手形勘定の借方に記入します。この手形代金などは手形義務者(債務者はここでは神奈川商店)に請求できるので、その債権を不渡手形勘定に記録しておきます。また、裏書譲渡したときに評価勘定を用いて記帳しているから受取手形勘定と裏書手形勘定に減少の記入をします。

当座預金

償還額   606,000

不渡手形

不渡発生  606,000

裏書手形

支払期日  600,000 (裏書額)  600,000


受取手形

支払期日  600,000

5.不渡手形が回収不能になった場合には、貸倒れとして処理します。この例では、不渡手形勘定の貸方に減少の記入をし、貸倒引当金の設定額があるので、その借方に記入します。しかし貸倒引当金の残高(設定額)より、貸倒れ額の方が多いので、その超過額は、貸倒償却(貸倒損失)勘定の借方に記入し処理します。

【問題】
次の取引を仕訳してください。    解答例

1.(あ)浜松商店に対し、商品を販売し、この代金¥700,000について、当店受取の為替手形を振出して同店の引受けを得た。

(い)横浜商店から商品¥850,000仕入、前記の為替手形を裏書して交付するとともに、残額は、小切手を振出して支払った(この手形の裏書に伴う偶発債務は評価勘定により処理すること)

(う)横浜商店に裏書した為替手形が、無事支払済みとなった。

2.(あ)薩摩商店は陸奥商店に対して、かねて注文のあった商品¥600,000を船便で発送した。この発送品につき、薩摩商店は、額面金額¥480,000の荷為替手形を大隈銀行で取組み、割引料¥5,000を差し引かれた残額を同行の当座預金に預入れた。

(い)陸奥商店は、取引銀行から上記の為替手形について引受けの呈示を受けたので、引受けをして船荷証券を受取、これと引き換えに商品を引き取った。

3.(あ)甲斐商店振出し、当店あての約束手形¥400,000を取引銀行で割引し、割引料¥2,800を差し引かれた手取金は当座預金とした(評価勘定を用いること)

(い)上記の手形が満期日に支払い済みになった。

4.(あ)近江商店振出し、陸中商店裏書の約束手形¥600,000について、満期日に取引銀行を通じて取立を依頼したところ、取立不能となったので、陸中商店に対して手形代金の支払いを請求した。なお、この請求にあたって拒絶証書の作成¥9,000を現金で支払った。

(い)陸中商店から上記の手形代金を拒絶証書作成費用¥9,000、満期日の利息¥1,500とともに現金で支払を受けた。

5.(あ)丹後商店に対する売掛金の回収のために丹後商店宛、当店受取の為替手形¥500,000を振出し、丹後商店の引受けを得た。

(い)上記の為替手形を買掛代金の支払いのために紀伊商店に裏書譲渡した(この手形の裏書に伴う偶発債務は評価勘定によって示すこと)

(う)上記の為替手形が不渡となり、紀伊商店から償還請求を受け、手形代金及び償還請求費用¥11,000、支払期日以後の利息¥3,000を小切手を振出して支払った。

(え)上記の不渡債権が回収不能となったので、貸倒れとして処理した。ただし、貸倒引当金¥400,000ある。

6.商工銀行で割引いた相模商店振出し、当店受取りの約束手形¥750,000が不渡となったので、この手形代金が満期日以後の利息¥2,000とともに、当座預金から引き落とされた。なお、この手形割引について偶発債務は評価勘定を用い処理されていた。

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