351、相続税、贈与税の財産評価(地積が土地課税台帳の地積と違う土地の倍率による評価)
352、相続税、贈与税の財産評価(高層住宅等の区分所有の評価)
353、相続税、贈与税の財産評価(固定資産税評価額が設定されていない場合の評価)
354、相続税、贈与税の財産評価{相続した住宅や事業用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)}
355、相続税、贈与税の財産評価({相続した住宅や事業用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)評価が減額される割合について}
356、相続税、贈与税の財産評価(貸ビル業務上駐車場に利用している土地の評価)
357、相続税、贈与税の財産評価(貸駐車場の敷地評価)
358、相続税、贈与税の財産評価(農地の評価)
359、相続税、贈与税の財産評価(家屋の評価)
360、相続税、贈与税の財産評価(抵当権が設定されている土地建物の評価)
361、相続税、贈与税の財産評価(分割支給にかかる退職金の評価)
362、相続税、贈与税の財産評価(定期預金の既経過利息の計算)
363、相続税、贈与税の財産評価(貸付信託受益証券)
364、相続税、贈与税の財産評価(取引相場のない株式の評価)
365、相続税、贈与税の財産評価(純資産価額方式により評価する場合の弔慰金および社葬費用の取り扱い)
366、相続税、贈与税の財産評価(役員の死亡より会社が収受した生命保険金)
367、相続税、贈与税の財産評価(会員権の評価)
351、相続税、贈与税の財産評価(地積が土地課税台帳の地積と違う土地の倍率による評価)
相続税、贈与税の財産評価(地積が土地課税台帳の地積と違う土地の倍率による評価)について説明してください。
税法上、地積は、課税時期における実際の面積によることとされています。台帳の地積と実際の地積に差異がある場合に、実際地積によって評価することが基本的な考え方です。しかし、全部が実測で評価しなければならないと定めているわけではないと考えます。例えば、山林等の地積については、森林施業図や航空写真等によって実際の地積を測定することが可能です。その地域の平均的な縄延割合を用いて実際地積を推定することも可能と考えます。
固定資産税は、その土地に縄延びがあり、登記簿上の地積と実際の地積が違う場合、すべて、登記上の地積を土地課税台帳の地積として、その地積を基に評価額を計算することになっています。このために、土地課税台帳と実際地積が違う場合の土地を倍率評価する場合には、その土地の実際地積に対応する固定資産税評価額を仮計算し、その額に倍率を乗じて評価額を計算します。この場合、その土地の実際地積に対応する固定資産税評価額は、下記のような算式にて評価額を求めてもよいと考えます。
その土地の固定資産税評価額 |
×
|
実際地積
土地課税台帳地積
|
縄延割合が大きい等の場合で、上記の算式を用いて引き伸ばすことが、実際の実情にそぐわない場合には、その土地の実際の状況に類似する近傍の土地の固定資産税評価額に比準し、その土地の実際地積が土地課税台帳の地積であるとした場合に付されるべき固定資産税評価額に基づいて計算するのが合理的と考えます。
352、相続税、贈与税の財産評価(高層住宅等の区分所有の評価)
相続税、贈与税の財産評価(高層住宅等の区分所有の評価)について説明してください。
税法上、家屋の価額は、原則として、1棟の家屋ごとに評価することになっています。
家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条≪固定資産課税台帳の登録事項≫の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいいます。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価されます。
区分所有の建物の固定資産税評価額は、原則として1棟の建物の評価額を区分所有者各人の専有部分の床面積の割合によって按分されます。よって、面積、構造、様式が画一的な区分所有の高層住宅では、均分された固定資産税評価額が付されることになりますが、これを基に計算した相続税評価額も同様に画一的なものです。階層による価格差は評価額に反映されてきません。
また、高層建物の各層の価値判断は、利用形態、人により、かなり差があると考えます。マンション等の場合では、各階層ごとの分譲価額の格差は、小額であるのが一般的のように考えます。
交換価値上は格差があるとしてもそれほど大きくなく、評価の上で認めがたい程度のものでない限りは、均分計算による評価が付されることになります。また、面積比によって評価することが実情に合わないと判断できる場合、階層別の利用効率等を計算する合理的な基準があり、これに準じて評価額を計算した場合、その評価額を用いてもよいと考えます。この場合、階層別の利用効率を乗じて区分計算した評価額の合計額は、1棟の建物の評価額に等しくなるように合理的に配分されている必要があります。
353、相続税、贈与税の財産評価(固定資産税評価額が設定されていない場合の評価)
相続税、贈与税の財産評価(固定資産税評価額が設定されていない場合の評価)について説明してください。
税法上、倍率方式とは、固定資産税評価額に国税局長が一定の地域ごとにその地域の実情に即するように定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式をいいます。
倍率方式により評価する宅地の価額は、その宅地の固定資産税評価額に地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある宅地の売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価することになっています。
土地の評価について
下記に記載します財産評価方法により固定資産税評価額相当額を算出し、その評価額にその倍率を乗じて計算した金額を評価額としてよいと考えます。
(1) その土地の付近に固定資産税評価額が設定されている同種の土地があるときは、その付近の土地に比準して、形状、立地条件等の較差を考慮して、その土地に設定するべき固定資産税評価額を適正に評価した価額
(2) その土地の付近に固定資産税評価額が設定されている同種の土地がない場合、他の地域の同種の標準的な土地に設定されている固定資産税評価額を基に、地域較差、立地条件、形状、等を比準してその土地に設定されるべき固定資産税評価額を適正に評価した価額
家屋の評価について
(1) その家屋の付近に固定資産税評価額の設定されている利用状況が同種の家屋がある場合、その付近の家屋に設定されている固定資産税評価額を基に、構造、用途、経過年数、等の較差を考慮して、その家屋に設定されるべき固定資産税評価額を適正に評価した価額
(2) その付近に固定資産税評価額の設定されている利用状況が同一の家屋がない場合、その家屋の再建価額から経過年数に対応す減価償却費相当額を控除した価額の100分の70相当額を固定資産税評価額とします。
(3) 課税時期において現に建築中の家屋の価額は、その家屋の費用現価の100分の70に相当する金額によって評価することになっています。
354、相続税、贈与税の財産評価{相続した住宅や事業用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)}
相続税、贈与税の財産評価{相続した住宅や事業用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)}について説明して下さい。
相続財産の中に住宅や事業に使われていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいいます。)がある場合、その宅地の評価額の一定割合を減額する特例が定められています。この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。この特例を受けられる人は、相続や遺贈によって宅地等を取得した個人です。
この特例の適用を受けられる宅地等は、個人が相続や遺贈により取得した宅地等で、下記のすべての要件に該当するものが、特例の対象です。
(1) 相続開始直前において、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用若しくは居住の用に供されていた宅地等又は国の事業の用に供されている宅地等(特定郵便局の敷地の用に供されているものに限られます。)。 この場合、事業には、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為(準事業といいます。)が含まれます。
(2) 建物又は構築物の敷地の用に供されていたもの(農地及び採草放牧地は除かれます。)。
(3) 棚卸資産及びこれに準ずる資産に該当しないもの。
(4) 各人が取得した宅地等のうち、この特例の適用を受けるために選択した宅地が限度面積までの部分であること。この場合の限度面積とは、その選択した宅地等の利用状況等により下記のようになります。
♪1
選択した宅地等が、特定事業用宅地等、国営事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等(以下、特定事業用等宅地等といいます。)である場合・・・・・・400平方メートル
♪2
選択した宅地等が、特定居住用宅地等である場合・・・・・・・240平方メートル
♪3
選択した宅地等が、特定事業用等宅地等、特定居住用宅地等以外の特例の対象となる宅地等(以下、特定特例対象宅地等といいます。)である場合・・・・・・200平方メートル
♪4
選択した宅地等すべてが、特定事業用等宅地等、特定居住用宅地等及び特定特例対象宅地等である場合は、次の算式により計算した面積
特定事業用等宅地等の面積+特定居住用宅地等の面積 ×(400/240)=@
@+特定特例対象宅地等の面積 ×(400/200)≦400平方メートル
(注) この特例の適用を受けられる宅地等又は特定事業用資産の課税価格の計算の特例の適用を受けることができる財産を取得した人が2人以上であるときは、当該財産を取得した人の全員の同意が必要です。
(5) 相続税の申告期限までに分割されていること。ただし、その申告期限までに分割されていない宅地等が、下記のいずれかに該当することになった場合、この特例の適用を受けられます。
♪1 相続税の申告期限後3年以内に分割された場合
♪2 相続税の申告期限後3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった後4か月以内に分割されたとき
(注)上記の場合には、遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内に税務署長に対し、更正の請求書を提出することができます。
355、相続税、贈与税の財産評価({相続した住宅や事業用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)評価が減額される割合について}
355、相続税、贈与税の財産評価({相続した住宅や事業用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)評価が減額される割合}について説明してください。
相続税、贈与税の財産評価({相続した住宅や事業用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)により評価額を減額する割合は、宅地等の利用状況等により下記のようになっています。
(1)特定事業用宅地等である小規模宅地等、特定居住用宅地等である小規模宅地等、国営事業用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等の場合〜〜〜〜〜80%
(2)特定特例対象宅地等である小規模宅地等の場合〜〜〜〜50%
☆
特定事業用宅地等とは、相続開始直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除きます。)の用に供されていた宅地等で、その宅地等を取得した人のうちに下記の要件のすべてに該当する親族がいるものをいいます。
♪、その宅地等が、被相続人の事業の用に供されていた場合
♯1、その宅地等の取得者(その者が死亡した場合にはその者の相続人を含みます。)が、その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに承継し、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること。
♯2、相続税の申告期限までその宅地等を有していること。
♪♪、その宅地等が、被相続人と生計を一にしていた親族の事業の用に供されていた場合
♯1、その宅地等の取得者が、相続開始時から相続税の申告期限(その者が死亡した場合はその死亡の日。)までその宅地等の上で引き続き事業を営んでいること。
♯2、相続税の申告期限までその宅地等を有していること。
☆☆
特定居住用宅地等とは、相続開始直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、その宅地等を取得した人のうちに下記のいずれかに該当する親族がいるものをいいます。
(1)その宅地等が、被相続人の居住の用に供されていた場合
♯1、 被相続人の配偶者
♯2、 被相続人と同居していた親族で、相続開始時から申告期限まで引続き居住し、かつ、その宅地等を有している人
♯3、 被相続人の配偶者または相続開始直前において被相続人と同居していた法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)がいない場合において、被相続人の親族で相続開始前3年以内に日本国内にある自己又は自己の配偶者の所有に係る家屋(相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがない人(相続開始の時に住所が日本国内にない人で、日本国籍を有しない人は除かれます。)で、相続開始時から申告期限までその宅地等を有している人
(2) その宅地等が、被相続人と生計を一にする親族の居住の用に供されていた場合
♯1、被相続人の配偶者
♯2、被相続人と生計を一にしていた親族で、相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を有している人
☆☆☆
国営事業用宅地等とは、相続開始直前において国の事業の用に供されていた宅地等で、その宅地等を取得した人のうちに被相続人の親族がおり、その親族から相続開始後5年以上その宅地等を国の事業の用に供するため借り受ける見込みであることについて、地方郵政局長(又は沖縄郵政管理事務所長)の証明がなされたものをいいます。
☆☆☆☆
特定同族会社事業用宅地等とは、相続開始直前から相続税の申告期限まで法人(被相続人等が株式又は出資の50%以上を有する法人に限られます。)の事業の用に供されていた宅地等(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除きます。)で、その宅地等を取得した人のうちに下記の要件のすべてに該当する親族がいるものをいいます。
(1)相続税の申告期限においてその法人の役員であること。
(2)相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を有し、引き続きその法人の事業の用に供していること。
☆☆☆☆☆
1棟の建物の敷地の一部が特定居住用宅地等に該当する場合には、その敷地のうち特定事業用宅地等、国営事業用宅地等又は特定同族会社事業用宅地等のいずれかに該当する部分以外の部分が特定居住用宅地等になります。
特例を受けるための手続について、下記をご覧下さい。
この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書(申告書第11表の付表)に、この特例を受けようとする旨その他所定の事項を記載し、その他一定の書類を添付する必要があります。なお、「特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例」を選択した場合には、小規模宅地等の特例を適用することはできません。
356、相続税、贈与税の財産評価(貸ビル業務上駐車場に利用している土地の評価)
相続税、贈与税の財産評価(貸ビル業務上駐車場に利用している土地の評価)について説明してください。
貸ビル業務上、駐車場は、貸ビルの契約とは別であっても、貸し付けの状況は、ビルの賃貸借契約と一体になっていると考えられますから、利用単位は同一と判断するのが一般的と考えます。
例えば、所有している貸ビルとその敷地に隣接している駐車場があり、賃貸借契約は、ビルの各室について賃借り人と締結し、入室者のうち希望者には、駐車場も、月極で使用料を取って貸している場合などが、該当すると考えます。従って、上記のような場合の敷地評価は、全部の敷地を、貸家建付地として評価することになります。
(注) 貸家建付地の評価に関しては、経理実務Q&A、344、相続税、贈与税の財産評価(私道に沿接する宅地の評価)を参照してください。
357、相続税、贈与税の財産評価(貸駐車場の敷地評価)
相続税、贈与税の財産評価(貸駐車場の敷地評価)について説明してください。
相続税、贈与税の財産評価上、敷地の評価上の区分は、その敷地の賃貸借契約が借地法の適用を受けるかどうか、その敷地上の建物に借家法が適用されるかどうかを判断の基準にしています。ただし、借地法の適用がないと判断される場合でも、賃貸借の事実まで否定できませんから、この場合、賃借権の目的となっている宅地として契約期間の長短等、借主の土地の使用実施に即して個別評価した賃借権相当額を控除して評価することとされています。
賃借権相当額は、賃貸借契約の内容が普遍的である場合、その賃借権の残存期間に応じて相続税法の地上権、永小作権の評価の規定を準用して評価します。
借地法上、借地権とは、建物の所有を目的とする地上権および賃借権をいう と規定されていますので、他人の土地の上に地上権を設定したり、他人から土地を賃借りしたりしてもそれが建物の所有を目的とするものでなければ、借主は借地法上の保護を受けられません。
例えば、所有する敷地にガレージ設備を設けて、月極貸しガレージを行っている場合の土地の評価をどのようにするのかについて考察することにします。
ガレー設備(車庫)が建物かそれ以外の工作物かどうかの構造上の区分と、借主の主目的が、建物の所有であるかどうかの目的による区分により、敷地の評価を行うことになります。
上記の例は、建物の構造および借地の利用状況等からみて借主の主目的が市街地にある駐車場用地の確保ですから、建物の所有を目的とするもの には該当しませんので、当該土地の評価は、相続税法の(地上権、永小作権の評価)に準じて評価することになります。
358、相続税、贈与税の財産評価(農地の評価)
相続税、贈与税の財産評価(農地の評価)について説明してください。
農地は、農地法等により宅地への転用が制限されています。また、都市計画等により地価事情にも差異があります。以上の点を考慮して、農地の価額は下記の四つに区分して評価されることになっています。
(1)純農地 (2) 中間農地 (3) 市街地周辺農地 (4) 市街地農地
上記の(1)純農地、(2)中間農地、の評価は、倍率方式によって評価します。
(注) 倍率方式とは、その農地の固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を掛けて評価する方法をいいます。
(3) 市街地周辺農地の評価は、その農地が市街地農地とした場合の価額の80%に相当する金額によって評価します。
(4) 市街地農地の評価は、宅地比準方式又は倍率方式により評価します。
(注) 宅地比準方式とは、その農地が宅地とした場合の価額からその農地を宅地に転用する場合にかかる造成費に相当する金額を控除した金額により評価する方法をいいます。
市街地農地の評価額 |
=
|
その農地が宅地とした場合の1u当たりの価額 |
−
|
1u当たりの造成費費用 |
×
|
地積 |
上記算式の「その農地が宅地とした場合の1u当たりの価額」は、具体的には、路線価方式により評価する地域では、その路線価により、倍率地域では、評価しようとする農地に最も近接し、かつ、道路からの位置や形状等が最も類似する宅地の評価額を基として計算します。
(注) 1u当たりの造成費の額は、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに、国税局長が定めています。最寄の所轄税務署に 、お尋ねされることをお勧めします。
359、相続税、贈与税の財産評価(家屋の評価)
相続税、贈与税の財産評価(家屋の評価)について説明してください。
相続税、贈与税の財産評価上、家屋の価額は、原則として、1棟の家屋ごとに評価することになっています。そして家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に財産評価基本通達別表1に定める倍率(1.0)を乗じて計算した金額によって評価します。つまり、固定資産税評価額がそのまま、財産評価額になります。
課税時期において現に建築中の家屋の価額は、その家屋の費用現価の100分の70に相当する金額によって評価することになっています。
附属設備等の評価は、下記に掲げる区分に従って、それぞれ下記に掲げるところにより評価します。
(1) 家屋と構造上一体となっている設備
家屋の所有者が有する電気設備(ネオンサイン、投光器、スポットライト、電話機、電話交換機及びタイムレコーダー等を除きます。)、ガス設備、衛生設備、給排水設備、温湿度調整設備、消火設備、避雷針設備、昇降設備、じんかい処理設備等で、その家屋に取り付けられ、その家屋と構造上一体となっている ものについては、その家屋の価額に含めて評価します。
(2) 門、塀等の設備
門、塀、外井戸、屋外じんかい処理設備等の附属設備の価額は、その附属設備の再建築価額から経過年数に応ずる減価の額を控除した価額を基にして、家屋の価額との均衡を考慮して評価します。
(注)再建築価額とは、課税時期においてその財産を新たに建築又は設備するために要する費用の額の合計額をいいます。
(3) 庭園設備
庭園設備(庭木、庭石、あずまや、庭池等をいいます。)の価額は、その庭園設備の調達価額の100分の70に相当する価額によって評価する。
(注) 調達価額とは、課税時期においてその財産をその財産の現況により取得する場合の価額をいいます。
360、相続税、贈与税の財産評価(抵当権が設定されている土地建物の評価)
相続税、贈与税の財産評価(抵当権が設定されている土地建物の評価)について説明してください。
相続税、贈与税の財産評価上、抵当権が設定されている土地などに関しては、抵当権が設定されていない場合と同一の価額で評価されることになっています。
抵当権は債権を担保する目的で設定されるものです。その不動産の使用収益を制限することはありませんので、相続税の課税価格の計算上、抵当権の対象となった債務を負債として計上すれば、ことは足ります。それ以上に当該不動産に関して斟酌を行う余地は認められないことになります。
他人の債務のために抵当権を設定した財産でも、その財産が抵当流れになった場合、債務者に対して求償権が生じますので、財産評価上は、特別な斟酌を行う必要性は残されていません。
361、相続税、贈与税の財産評価(分割支給にかかる退職金の評価)
相続税、贈与税の財産評価(分割支給にかかる退職金の評価)について説明してください。
財産評価に関して相続税法では、定期金に関する権利の評価について規定されています。この評価方法は、定期金給付契約で、給付事由が発生している場合の有期定期金の契約に関する権利の評価に適用されるものです。
定期金に関する権利の評価の内容は、残存期間に応じて、その残存期間中に受ける給付金額の総額に対する計算割合を規定したものです。
例えば、被相続人に退職金の支給を受けた場合、会社の都合により毎年120万円の分割払いで10年間で合計1200万円支給される場合が該当するものと考えます。この支給を受けることになった退職金に関して、被相続人から相続する場合に当該退職金の評価に上記規定を準用するものです。
全額を一時に支給された場合の1200万円は、1200万円そのものが評価額面どおりですから、財産評価上なにも評価減を行う必要性はありません。その退職金受取額1200万円を預貯金、貸付信託、有価証券などに運用すれば、それに応じて利息、利益の配当等を得ることかできます。また、他の財産に投資しても、うまく行けば利殖を得ることが可能です。しかし、上記の例のように毎年分割で120万円支給され、10年後に合計1200万円の支給を受けたとしても、一度に全額受領した場合と比較した場合の経済的な価値の違いは、少なくないでしょう。理論的に考えますと、1200万円に対する10年後の複利合計額と120万円の9年後複利合計額+120万円の8年後複利合計額+120万円の7年後複利合計額+120万円の6年後複利合計額+120万円の5年後複利合計額+120万円の4年後複利合計額+120万円の3年後複利合計額+120万円の2年後複利合計額+120万円の1年後複利合計額+120万円と順次計算した合計額との差額です。実際には、10年先の120万円は現在の1/10の価値しかないかもしれません。
経済変動は将来の不確実な予測ですから、現段階でそれを織り込むのは、不合理になると考えますから、年金のように受領する退職金は、実態が類似する有期定期金に関する権利の評価法を、便宜準用することが妥当な評価法と考えます。
残存期間中に受け取る給付金額の総額 |
|
残存期間が5年を超え10年以下のものの割合 |
|
評価額 |
1200万円(120万×10年)
|
× |
60/100
|
= |
720万円 |
362、相続税、贈与税の財産評価(定期預金の既経過利息の計算)
相続税、贈与税の財産評価(定期預金の既経過利息の計算)について説明してください。
税法上の財産の価額は、課税時期におけるそれぞれの財産の現況に応じて評価するのが原則になっています。
預貯金の価額は、課税時期における預入高と同時期現在において解約するとした場合に既経過利子の額として支払を受けることができる金額から当該金額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額を控除した金額との合計額によって評価します。
ただし、定期預金、定期郵便貯金及び定額郵便貯金以外の預貯金については、課税時期現在の既経過利子の額が少額なものに限り、同時期現在の預入高によって評価することができます。
相続の効力は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を相続人が承継することになっています。よって、被相続人が契約に基づいて締結した定期預金の効力は、そのまま相続人に承継されます。相続開始時点で定期預金であったものは財産評価上、定期預金として評価されます。定期預金を課税時期後に解約した場合、普通預金としての利息しか受け取れませんが、それは相続人の意思に基づいたもので、相続財産が定期預金であることを変更するものではありません。他の財産についても相続開始後相続人の意思に基づいて売却などの処分をすることがあります。その結果は、相続税の評価額とは異なった処分価額になるでしょう。このように相続人の意思によって処分される価額をも織り込んで、課税時期における財産評価を行うことは、処分の時期、処分の状況(態様)等がさまざまなので、不合理な評価を導く基になります。
解約に係る定期預金の既経過利子の計算は、契約上の定期預金の利率に基づいて計算することになります。
363、相続税、贈与税の財産評価(貸付信託受益証券)
相続税、贈与税の財産評価(貸付信託受益証券)について説明してください。
貸付信託については、貸付信託法に定義されています。同法により1個の信託約款に基づいて、信託会社(受託者)が多数の購入者(委託者)との間に締結した信託契約によって受け入れた金銭を、合同して運用する金銭信託のことを貸付信託といいます。
契約が成立しますと信託会社(受託者)は、法律の定めに従って契約にかかる受益権を示す受益証券を発行します。また、法律に基づいて、信託会社(受託者)は、受益証券を発行した日から1年以上を経過した場合に限ってその受益証券を買い取ることができるようになっています。このために信託会社(受託者)は、発行日から1年未満の貸付信託受益証券については、購入者(委託者)から買い取り(解約)の申し入れがあっても応じないのが原則です。
設定後1年未満の貸付信託受益証券は、現実的には、買い取り価格がないことになりますので、財産評価上は、便宜買い取ったとした場合に計算されると見込まれる価額を推定して、その買い取り価額を評価額とすることになります。下記の算式をご覧ください。
元本
|
+
|
既経過日数に対応する予想収益分配金 |
−
|
買い取り割引額(解約手数料) |
=
|
買い取り価額 |
364、相続税、贈与税の財産評価(取引相場のない株式の評価)
相続税、贈与税の財産評価(取引相場のない株式の評価)について説明してください。
税法上、取引相場のない株式の評価については、相続や贈与などで株式を取得した株主が、その株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主等か、それ以外の株主かの区分により、それぞれ原則的評価方式又は特例的な評価方式の配当還元方式により評価します。
※1 原則的評価方式は、評価する株式を発行した会社を従業員数、総資産価額及び売上高により大会社、中会社又は小会社のいずれかに区分して、原則として下記のような方法で評価をすることになっています。
♪1、 大会社は、原則として、類似業種比準方式により評価します。類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、評価する会社の一株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額の三つで比準して評価する方法です。
(注) 類似業種の株価などは、税務相談室や税務署にお尋ねください。
♪2、 小会社は、原則として、純資産価額方式によって評価します。純資産価額方式は、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。
♪3、 中会社は、大会社と小会社の評価方法を併用して評価します。
※2特例的な評価方式
取引相場のない株式は、原則として、上記のような方式により評価しますが、同族株主以外の株主の取得した株式については、その株式の発行会社の規模にかかわらず原則的評価方式に代えて特例的な評価方式の配当還元方式で評価します。配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。
※3特定の評価会社の株式の評価
下記のような特定の評価会社の株式は、原則として、@〜Dについては純資産価額方式により、Eは清算分配見込額により評価することになっています。
@〜Cの会社の株式を取得した同族株主以外の株主等については、特例的な評価方式である配当還元方式により評価することもできます。
@ 類似業種比準方式で評価する場合の三つの比準要素である配当金額、利益金額及び簿価純資産価額のうち直前期末の要素のいずれか2つがゼロであり、かつ、直前々期末の要素のいずれか2つ以上がゼロである会社(比準要素数1の会社)
A 総資産価額中に占める株式や出資の価額の合計額の割合が一定の割合以上の会社(株式保有特定会社)
B 総資産価額中に占める土地などの価額の割合が一定の割合以上の会社(土地保有特定会社)
C 課税時期において開業後の経過年数が3年未満の会社や、類似業種比準方式で評価する場合の三つの比準要素である配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の直前期末の要素がいずれもゼロである会社
D 開業前又は休業中の会社
E 清算中の会社
上記のそれぞれの評価方法に応じて、取引相場のない株式の評価をする場合には、取引相場のない株式の評価明細書 を使用しますと比較的容易に株価の計算ができるようになっています。
365、相続税、贈与税の財産評価(純資産価額方式により評価する場合の弔慰金および社葬費用の取り扱い)
相続税、贈与税の財産評価(純資産価額方式により評価する場合の弔慰金および社葬費用の取り扱い)について説明してください。
取引相場のない株式を純資産方式により評価する場合、相続人に支払った弔慰金及び会社が負担した葬儀費用(社葬費)を負債に計上して控除できるかどうかということです。
被相続人の死亡により、相続人等に支給することが確定した退職手当金等の金額に関しては、相続税法の規定により、みなし相続財産 として相続税の課税価格に含まれますので、弐重課税を排除することの趣旨から負債として取り扱うこととされています。
相続人に支給した弔慰金が退職手当金等に該当する場合には負債として控除することができます。それ以外の場合は、負債に該当しないこととして取り扱うことになっています。
社葬費(葬儀費用)に関しては、被相続人にかかる葬儀費用が相続税の課税価格から控除できることからみて負債として取り扱うことが適当な判断と考えます。
366、相続税、贈与税の財産評価(役員の死亡より会社が収受した生命保険金)
相続税、贈与税の財産評価(役員の死亡より会社が収受した生命保険金)について例を示して、説明してください。
会社の規模が小会社に該当することを前提にして、株式評価に際しては、純資産評価方式により評価を行う場合について例を掲載いたします。
会社が、課税時期に、保険金を収受する権利を取得したとき、未収受取保険金を、資産勘定に計上することが必要になります。負債勘定には、支給することが確定した退職手当金(退職給与引当金の取り崩し額は除きます。)と、受取保険金に課税されるべき法人税等相当額を計上します。
例えば、役員が死亡したとき支給する退職金に充当するために、会社を保険金受取人とした生命保険契約を締結していた場合で、当該保険金を受け取ることになった場合の計算をどのように行うのか?ということです。
(計算例)
受取保険金の額: 12,000,000円
支払う退職手当金: 10,000,000円
未払い租税公課:
(受取保険金額−損金計上される退職手当金)×42%
(12,000,000−10,000,000)×42%=840,000円
資 産 の 部
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負 債 の 部
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勘定科目 |
相続税評価額 |
帳簿価額 |
勘定科目 |
相続税評価額 |
帳簿価額 |
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円
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円
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円
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円
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未収受取保険金 |
12,000,000
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12,000,000
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未払い退職手当金 |
10,000,000
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10,000,000
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未払い租税公課 |
840,000
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840,000
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367、相続税、贈与税の財産評価(会員権の評価)
相続税、贈与税の財産評価(会員権の評価)について説明してください。
相続税や贈与税を計算する際の会員権の評価方法は下記のとおりです。ゴルフ会員権は、ここでの説明を参考にしてください。
株式の所有を必要とせず、かつ、譲渡できない会員権で、返還を受けることができる預託金等(以下「預託金等」といいます。)がなく、施設を利用して、単にプレーができるだけのものについては評価の対象外です。
♯1 取引相場のある会員権
課税時期の取引価格の70%に相当する金額によって評価します。この場合において、取引価格に含まれない預託金等があるときは、下記に掲げる金額との合計額によって評価します。
(1)課税時期において直ちに返還を受けることができる預託金等ゴルフクラブの規約等に基づいて課税時期において返還を受けることができる金額
(2)課税時期から一定の期間を経過した後に返還を受けることができる預託金等ゴルフクラブの規約等に基づいて返還を受けることができる金額の課税時期から返還を受けることができる日までの期間(その期間が1年未満であるとき又はその期間に1年未満の端数があるときは、これを1年とします。)に応ずる年3.5%の利率による複利現価の額
♯2 取引相場のない会員権
(1)株主でなければ会員となれない会員権は財産評価基本通達の定めにより株式として評価します。
(2)株主であり、かつ、預託金等を預託しなければ会員となれない会員権その会員権について、株式と預託金等に区分して、それぞれ下記に掲げる金額の合計額によって評価します。
♪1、株式の価額
♯2取引相場のない会員権の(1)に掲げた方法を適用して計算した金額
♪2、預託金等
♯1取引相場のある会員権の(1)又は(2)に掲げた方法を適用して計算した金額
(3)預託金等を預託しなければ会員となれない会員権
1取引相場のある会員権の(1)又は(2)に掲げた方法を適用して計算した金額によって評価します。