51、年度の途中に役員が就任した場合の、役員報酬支給限度額について
【問】
年度の途中で就任した役員の役員報酬の支給限度額について、当年度はどのように考えるとよいですか。
【答】
ほとんどの会社では、役員報酬の支給限度額を、定款の規定または株主総会の決議等において、全役員についての支給総額を定めているはずです。この時に在職している役員のみについて規定しているのであれば、新任の役員については、まだ、役員報酬の支給限度額を定めていないことになります。よって、過大報酬かどうかの判断は、下記の(1)に基づいて行ってください。
(1)役員報酬の額が、役員の職務内容、法人の収益および使用人に対する給料の支給状況、同業種同規模法人の役員報酬の支給状況に照らして相当と認められる金額を超える金額について判断します。
株主総会の決議のときに、決議の日以降の役員変更を想定して役員報酬の支給限度額を定めている場合には、新任の役員報酬も含めて支給日の時点で判断します。その判断基準が上記(1)と次の(2)です。この(1)と(2)のいずれか多いほうの金額が生じた場合には、その部分の金額は損金不算入となります。
(2)定款の規定または株主総会の決議等で役員報酬の支給限度額を定めている法人が支給した役員報酬の支給額が、その限度額を超える場合のその金額。
一人一人の役員について報酬限度額を決議ている場合には、新任の役員報酬については、まだ定めていませんので上記の(1)の規定に基づいて判断します。
このように、年度の途中で役員が就任した場合には、上記の(1)に基づいて考えればよい場合と、(1)と(2)の両方を考慮して考える必要がある場合とが生じてきます。
年度の途中で就任した役員の役員報酬の支給限度額については、上記のように役員報酬の支給限度額が、定款の規定または株主総会の決議等によってどのように定められているかによります。
52、役員に諸手当などを支給する場合
【問】
役員に従業員と同様に、諸手当として家族手当、皆勤手当、歩合給、超過勤務手当、能率給などを支給する場合、税務上の取扱を説明してください。
【答】
会社と従業員(使用人)の関係は、雇用契約に基づく関係です。一方、会社と役員の関係は委任によってその関係が成立します。
使用人の雇用関係に基づく場合は、労働基準法やその他の労働関係の法令の適用があります。使用人に支給する諸手当のうちの超過勤務手当は、法令の上から支給する義務を会社が負うものです。家族手当、皆勤手当などは、法令上において支給義務を負うものではないと考えます。しかし、就業規則または労働協約において給与規程の一環として支給することを定めていることが多いです。このように考えますと、使用人としての立場からこれらの支給を受けるものです。
役員は、会社と委任の関係にありますので、報酬は、定款の規定または株主総会の決議によって定めれれるものですから、上記に示しました使用人に支給される諸手当などについては、報酬の支給額を決議する際に考慮し、本給や諸手当を区別して考えないはずです。しかし税法上、役員に支給する定期の給与は、役員報酬とされます。退職給与を除く臨時の給与は、役員賞与となり、役員報酬は不相当に高額でなければ損金算入され、役員賞与は損金不算入と定められています。ですから、役員に支給する諸手当のうち家族手当(定額の場合)は毎月のものですから役員報酬で経理処理することができ、能率給、歩合給も使用人と同一の支給基準によっている場合には、定期の給与として取り扱うことができます。
超過勤務手当は、毎月その額が定額にはなりませんから、定期の給与とは判断できません。そしてまた役員のように会社と委任の関係にある者は、一般の使用人とは違い時間的な面で拘束を受ける立場ではありませんので、超過勤務という認識に基づいて判断することはできません。よって、超過勤務手当は、役員賞与として取り扱うのが妥当です。また、使用人兼務役員に対する超過勤務手当については、使用人としての職務に対して支給したものと考えて、一般の使用人に対する支給基準と同一の基準に基づいているときは定期の給与として取り扱い、役員賞与としなくてよいことになっています。
53、同族会社の役員賞与に見合う金額を按分して毎月の報酬に加算して支給する場合
【問】
同族会社の役員およびその家族で役員になっている者または親族でみなし役員に該当する場合には、賞与を支給しても損金算入されませんので、賞与に見合う金額を按分して毎月の報酬に加算して支給しようと考えています。税務上は、問題になりますか。なお、私どもでは、利益処分によって役員賞与を支給していません。
【答】
同族会社の役員は、役員の属する株主グループの持株割合が一定の割合以上保有している場合には、使用人兼務役員になれませんから、賞与を支給しても全額損金不算入となります。そこで、賞与を按分して報酬に加算する行為の可否についてですが、税法上は定期の給与を報酬とし、退職給与を除く臨時的な給与は賞与として取り扱うことになっていますから、賞与相当額を按分して毎月の報酬に加算すれば、定期の給与と判断することが可能になると考えます。しかし、毎月の報酬の支給方法についてですが、上記の賞与相当額を未払いにし、使用人に賞与を支給する際に、未払い金の支払として、同じ時期に支給するような行為をすると、その行為は定期の給与と判断されなくなります。また、役員報酬については、過大役員報酬の損金不算入という規定がありますので、該当する役員の職務の内容、その法人の収益および使用人に対する給与の支給状況、同業種同規模の会社の役員報酬の支給状況に照らして、その役員の職務に対するものとして相当と認められる金額を超える部分の金額は、損金不算入とまります。よって、お尋ねの場合ですが、使用人の給与には賞与の加算が無く、役員には加算が有るということになります。使用人の給与支給という点から判断すればその支給方法は、相当と認められるかどうか疑問です。また、利益処分によって賞与を支給していないこととは、この問題では関係が無いわけです。利益処分によって役員賞与を支給するかしないかは、会社の判断の問題で、任意事項です。ですから、会社が相当の利益を計上してるのに役員に利益処分によって賞与を支給していないから、役員報酬の中に賞与に相当する金額が含まれているという解釈または判断は、誤りです。
54、税務署長から処分を受けた場合、その処分に不服がある場合に、不服申し立てができる場合とできない場合
【問】
税務署長から処分を受けた場合、その処分に不服がある場合に、不服申し立てができる場合と、できない場合について説明してください。
【答】
税務署長から処分を受けたその事柄について不服がある場合には、不服を申し立てることができることになっています。不服を申し立てることができる場合は、下記のとおりです。
※ 納付税額を増加させる更正処分を受けた場合
※ 申告のない場合に納付税額を決定する決定処分をうけた場合
※ 納税者が更正の請求をしたけれど、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた場合
※ 加算税の賦課決定処分を受けた場合
※ 青色申告の承認の取消処分を受けた場合
※ 差押さえ等の滞納処分を受けた場合
不服申し立てができない場合についての具体例は、下記のとおりです。
※ 間違って税額を過大に申告したような場合で、この行為そのものは税務署長から処分を受けていませんので、不服申し立てをすることができません。これを正しい税額に戻すためには、更正の請求という手続きが定められていますので、更正の請求を申請することになります。
※ 税務当局から受けたその処分によって自己の権利または法律上の利益が侵害されない場合には、不服を申し立てることはできないことになっています。
税額の減少または還付金額の増加を受けるような処分を受けても不服申し立てを行うことはできないことになっています。
55、収益の計上時期
【問】
メーカーの仕事を請け負っています。材料はメーカーから無料で支給を受けて加工します。加工料の未収入金の計上の日は、メーカーの工場で検品に合格した日としています。税法上、問題ありませんか。
【答】
請負による収益を益金に算入する事業年度は、物の引渡しを要する請負契約にあっては、その目的物の全部を完成して先方に引き渡した日の属する事業年度となります。引き渡しの日については、貴社から出荷した日、メーカーが検収した日、メーカーの方で使用収益が認識できる日などが考えられます。合理的と認められる日を継続的に適用していれば税法上も認められることになっています。お尋ねのようにメーカーの工場で検品に合格した日を、収益の計上の日として取り扱うことができます。また、貴社は、材料をメーカーから無料で支給を受けますので、実質的には棚卸資産が無いことになります。しかし、仕事を行った発生済みの加工費のうち、その加工費に関して加工料収入が計上されるまでの間のもの(メーカーの工場に納めてあるが検収が済んでいない物に関するものなど)は、加工料の未収入金として棚卸資産に計上する必要があります。税務調査では、この未収入金が過小でないか、をよく調べます。
引渡しの日の判定基準が、当該加工済み材料の種類および性質、契約の内容に応じて違う場合、違うことについて合理的な理由があれば認められることになっています。
56、収益の計上時期(物の引渡しを行わない場合)
【問】
設計と監理を請け負う当会社は、設計と監理を一括して受注しました。設計を終えた段階で施主の都合により、工事の着工が延期されることになり、設計した設計料のみを受領しました。現段階では、工事は終わっていませんので収益(設計料)を今事業年度では収益に計上せず前受け処理したいのですが、税法上はどのようになりますか。
【答】
物の引渡しを行わない場合の請負収益の計上時期は、その契約した役務の全部が終了した日の属する事業年度となっています。しかし、契約によって基本設計、部分設計、実施設計、工事監理に関する受取収益がそれぞれの場合によって定められている場合には、その都度、作業段階ごとに受取収益(報酬額)を確定して受領するのであれば、その都度その額を収益計上しなければなりません。このことは、部分的な進行に応じて役務の提供が終了し、その都度受取収益(報酬額)を得て仕事が完了したからです。このような場合たとえ各段階の設計や監理をまとめて一個の契約としていても役務の提供が終了するまで受取収益(報酬額)を前受け処理をして収益計上しないのは合理的ではないからです。ただし、部分的に完了(終了)した役務の提供に対して確定した報酬の額のうち役務の提供のすべてが完了するまでまたは1年を超える相当期間が経過するまで支払が受けられない部分の金額は、役務の提供のすべてが終了(完了)する日と支払を受ける日のいずれか早い日まで収益計上を見合わせることができます。
最初に記したように、物の引渡しを行わない場合の請負収益の計上時期は、その契約した役務の全部が終了した日の属する事業年度となっています。よって設計と監理を一貫した仕事と判断しますと、設計に関する受取収益(報酬額)も原則として工事終了して役務の提供が全部済んだ時点で、収益計上となります。例えば設計と監理とが一括契約されており、報酬額も設計監理料と一括されている場合で、なおかつ実質的にも設計と監理が一個の仕事(業務)といえる場合には、監理の仕事が終了した時期が収益の計上時期となります。
このように考えてきますと、お尋ねの場合には、すでに設計の仕事や業務を終了(完了)してその受取収益(報酬額)を受領していますから、その当該金額を収益に計上すべきもので、前受け収益(仮受け処理)として経理することは、できないことになります。
57、収益計上の時期(翌期にわたって仕事を行う場合)
【問】
当社は、市場調査等を主に請け負っています。請け負う仕事によって、当社の決算期を過ぎ翌期にまたがる場合がありますが、翌年度に終了する仕事の委託手数料を前受けをすることがあります。この委託手数料を当期末に前受金として経理処理してよいでしょうか。
【答】
税法では、物の引渡しを要しない請負契約の場合には、契約した役務の全部を完了した日の属する事業年度に、請負による収益の額を益金に算入することになっています。役務提供の途中で決算期末がきたときは、決算期末日までに受け取った委託手数料は前受け金(負債の勘定)の貸方に記入し、同じく決算期末日までに支払った当該業務にかかる費用は、前払い金(資産の勘定)の借方に記入して処理します。お尋ねの場合は、上記に記した経理処理を行うことになります。また、仕訳例は下記のとおりです。
(仕訳例@)
※ 決算期末日までに受け取った収入
(借方) 当座預金 (貸方) 前受け金
※ 決算期末日までに受け取った収入を益金(売上)に計上していた場合
(借方) 売上 (貸方) 前受け金
(仕訳例A)
※ 決算期末日までに支払った当該業務にかかる費用
(借方) 前払い金 (貸方) 当座預金
※ 決算期末日までに支払った当該業務にかかる費用で、すでに費用の勘定に計上していた場合
(借方) 前払い金 (貸方) 旅費交通費
収益の帰属時期の判断や認定は事実に基づいて行われますので、業務期間、終了(完了)の日に係る証拠資料を保存し、事実関係が後日になってもよくわかるように配慮することが大事です。
58、固定資産を譲渡担保に供した場合の譲渡損益
【問】
借入金の担保として、会社の社屋と土地を借入金返済の後に買い戻す約束で関連会社に譲渡しました。社屋は今後もずっと当方が使用します。このような場合には譲渡した益金に課税されますか。
【答】
法人が、債務の弁済の担保として相手方に当方の固定資産を譲渡した場合、その実態によって判断し、契約書に下記のすべての事項を明確にし、債務者が所有権移転登記後も自己の固定資産として使用し経理処理をしているときは、その譲渡はなっかたものとして取り扱うことができます。この場合において、その後その要件のいずれかを欠くに至ったときまたは債務不履行のためその弁済に充てられたときは、これらの事実が発生したときに譲渡があったものものとして取り扱われます。
※ その固定資産を当該法人が従来どおり使用収益すること
※ 債務に係る利子またはこれに相当する使用料の支払に関する定めがあること
債務の弁済の担保として固定資産を相手方に譲渡する行為は、よく行われる行為です。これを実態(実質)でみた場合には、当該固定資産の譲渡ではなく担保に差し入れたということです。抵当権の設定を行うには担保物の価値や時価評価に煩雑な手続きが必要になりますので、当該固定資産の所有権移転登記をしておいて、借入金返済後に所有権を元に戻す方法が、一般的に譲渡担保と呼ばれています。 譲渡担保は、その対象としての固定資産の引渡しがありません。よって、債務者は今までどおり固定資産として経理処理し、減価償却も行われます。
また、上記の要件のいずれかを欠くに至ったときまたは債務不履行のためその弁済に充てられたときの譲渡価額は、最初に譲渡担保のために所有権移転登記をしたときの時価ではありません。 これらの事実が発生した時の時価によることになります。
59、固定資産の譲渡による収益の計上時期
【問】
会社所有の土地を本年2月末に売却する契約をしました。(当社は3月決算)土地の帳簿価格200万円、売却代金1500万円、手付金の受領日は本年2月末日で300万円、残金1200万円は本年4月末日に受領予定で、受領と同時に所有権移転登記を行います。税法上の取り扱いについて説明してください。
【答】
固定資産の譲渡による収益の額は、原則として引渡しのあった事業年度の益金の額に算入します。ただし、その固定資産が土地、建物その他これらに類する資産である場合、法人が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日の属する事業年度において益金算入しているときはこれが認められることになっています。 お尋ねのような場合、引渡しの日は一般的に所有権移転登記の日ですから、4月末日と考えます。その日を含む事業年度において譲渡した代金1500万円を益金に算入するのが原則で、この場合2月末に受領した手付金300万円は、3月決算時には、前受金(負債の勘定)で処理し、4月末に収益(益金)に振り替えます。
(仕訳例)
2月末日での仕訳
(借方) 当座預金 .300 (貸方) 前受金 300
3月決算日での仕訳 (2月末に収益に計上していた場合)
(借方) 固定資産譲渡益 300 (貸方) 前受金 300
ただし、土地建物等の譲渡に係る収益計上の日については売買契約締結の日の属する事業年度において収益に計上することも認められています。よって、3月決算時に残金の1200万円を収益に計上することも認められています。
(仕訳例)
3月決算日での仕訳
(借方) 前受金 300 .(貸方) 固定資産譲渡益 300
(借方) 未収入金 1000 .(貸方) 固定資産譲渡益 1000
(借方) 未収入金 200 (貸方) 土地 200
固定資産の譲渡に係る引渡しの日の判断については、棚卸資産の引渡しの日の判定に関する取り扱いの例によることとされています。棚卸資産である土地または土地の上に存する権利は引渡しの日の判定が難しいことから、一種の形式基準として代金の概ね50%以上を受領するに至った日と所有権移転登記申請した日のいずれか早い日に引渡しがあったもとすると規定していますので、仮に3月末日までに、譲渡代金の50%である750万円を受領していれば、決算時に収益に計上することになります。
60、法人の資産を贈与した場合の収益の額
【問】
当社所有の機械装置を知り合いの同業者に贈与しました。その後税務調査があり、この贈与した資産には、受贈益が発生すると指摘を受けました。税法上の取り扱いについて説明してください。
【答】
税法では、無償による資産の譲渡を当該事業年度の収益として益金の額に算入すると規定しています。このことは、資産を贈与した場合、会社としては資産の減少だけですが、税法上、益金の額が発生するということは、その当該資産の時価に相当する金額を、受贈者(知り合いの同業者)に経済的利益を与えたことになるためです。資産を与えた会社と受贈者(知り合いの同業者)との間において、その当該資産の経済的利益に関する課税の問題が発生するからです。このことは、時価より低い価額で譲渡した場合でも同じです。知り合いの同業者の方に贈与した機械装置の帳簿価額を12万円、時価90万円と仮定しますと、税法上、下記のような仕訳をしなければなりません。
(仕訳例)
(借方) 未収入金 12 (貸方) 機械装置
12
(借方) 未収入金 78 (貸方) 固定資産譲渡益 78
(借方) 寄付金等 90 (貸方) 未収入金
90
このように、機械装置を時価で譲渡したもの考えて、その代金相当額90万円を先方に贈与したという取り扱いになります。このようにしないと実際に機械の譲渡代金90万円を贈与した場合とのつりあいがとれなくなるからです。無償での、資産譲渡を収益としなければならないのは、以上のように時価でいったん譲渡したものと判断してそのみなし収益(譲渡代金相当額)を益金(収益)として取り扱いますということです。
受贈者の側からこの収益90万円をみれば、役員賞与、または退職給与、交際費、寄付金等に該当することになり、損金算入できない場合や源泉税の対象となる場合があります。
また所得税では、資産を時価よりも低い価額で譲渡した場合、時価で譲渡したこととみなす場合、譲渡時の時価の1/2未満の金額で譲渡した場合というような規定がありますが、法人税では、規定がありません。
61、委託販売における収益の計上時期
【問】
既製服製造販売業者ですが、今度、小売店さんを受託者として委託販売を行うことになりました。なにか、税法上、特別な定めがありますか。
【問】
委託販売は、委託者である貴社が、貴社の商品の販売を小売店(受託者)に対して依頼し、一定の手数料を支払う行為です。よって、小売店に販売委託されている商品の所有権は貴社にあり、小売店がそのお客様に販売をした日に貴社で商品の売上(小売店のお客様に対する売上額)、売上原価、小売店に対する販売手数料を計上する方法がそうです。会計原則では、委託先の小売店から販売済みの積送品に関する売上計算書が到達した日を売上収益の実現の日とみなすとなっており、税法上も売上計算書が売上の度に作成されて送られてくる場合には、売上計算書の到達した日の属する事業年度において益金に算入することを認めています。小売店が月単位、週単位、旬単位にして一括して売上計算書を作成している場合も、それが継続して行われているときは、売上の都度作成して送付られているものと認められます。
買い戻し特約付きの販売は、売れ残り品の返品自由という販売で、実質的な面では委託販売と似ていますが、小売店への商品引渡しによって貴社の商品に対する所有権が無くなり、その時点で小売店に対する売上を計上します。小売店の側では販売した商品について販売手数料を受け取るのではなく、売上と売上原価を計上して粗利益を得ることになります。よって、貴社は、委託販売と違い早い時期に売上が計上されることになります。そこで買い戻し特約付き販売については、返品調整引当金の計上が必要と考えられ、税法上もこの計上を認めています。税法上の返品調整引当金を計上するには、指定業種を営んでいる必要があります。
(指定業種の例:
出版業、出版にかかる取次ぎ業、医薬品、農薬、化粧品、既製服)
そして、下記に示す事項を内容とする買戻し特約(文書による契約でなく、慣習でもよい)を結んでいる必要があります。
※ 法人が販売先の求めに応じ、その販売した棚卸資産を当初の販売価額によって無条件に買い戻すこと
※ 販売先においてその法人から棚卸資産の送付を受けた場合に、その注文によるものかどうかを問わずこれを購入すること。
返品調整引当金の繰り入れ限度額の計算は、指定業種の種類ごとに、下記の売掛金基準または販売高基準のいずれかで計算します。また、毎決算期末に下記の算式によって返品調整引当金の金額を計算し、洗い替えます。
(各事業年度終了の日の指定事業にかかる売掛金の合計額) |
× |
返品率 |
× |
売買利益率 |
(各事業年度の終了の日以前2ヵ月間の指定事業にかかる棚卸資産の販売の対価の合計額) |
× |
返品率 |
× |
売買利益率 |
62、割賦販売
【問】
割賦販売について説明してください。
【答】
一般的に商品を販売した場合における収益の額は、商品の引渡しの日の属する事業年度において計上されますが、割賦販売の場合、代金の回収は、分割で回収され比較的長期に渡ります。危険度も高くなり、所有権の移転または取り戻しに関しての条件も備えておかなければなりません。よって一般の商品販売とは異なった経理処理で収益の計上を行います。
税法では、割賦販売とは、月賦、年賦、その他の賦払いの方法により対価の支払を受けることを定期的に定めた約款に基づいて行われる販売をいいます。また月賦、年賦、その他の賦払いの方法とは、販売商品の対価の額について支払を受けるべき金額の支払期日が、月、年、年以下の期間を単位として概ね規則的に到来し、かつ、それぞれの支払期日において支払を受ける金額が購入者との当初の契約において具体的に確定している場合におけるその方法をいいます。
会計学上は、賦払金支払期日到来基準または回収基準のいずれかを用いますが、税法は両方を加味したものです。
{割賦販売の対価 |
− |
(売上原価+販売手数料)} |
× |
(注)賦払金のうち当期に支払期日の到来するものの合計金額
|
割賦販売の対価の額 |
|
(注)前期までに支払を受けたものを差し引き、翌期以後に支払期日が到来するもののうち当期末までに支払を受けたものの金額を含みます。
当期に支払期日の到来する賦払金のうちに、期末現在において未収入金のものがあっても賦払金支払期日到来基準ですから、上記の算式に含めます。回収基準では、含めません。次に、翌期以後に支払期日の到来する賦払金で、当期末までに支払を受けたものを含めますから、回収基準が加味されていることになります。
割賦基準の方法による収益の額および費用の額の計算は、原則としてその割賦販売をした棚卸資産ごとまたは役務の提供ごとに行いますが、法人が継続し差益率の概ね同じものごとその他合理的な区分ごとに一括してその計算を行っている場合には、認められます。
(例)
前年12月にパソコン20万円を割賦販売(20回払い)、初回支払期日12月20日、当年4月20日分まで受領(5回分まで)、売上原価12万円、販売手数料は、無し、年1回3月決算
※ パソコン割賦販売実現利益:20万円−12万円=8万円
※ 回収代金:1万円×5回=5万円
※ {20(割賦販売の対価)−(12(売上原価)+0(販売手数料))}×5(5回分)/20(割賦販売の対価)=2万円
よって当期割賦販売にかかる利益は、2万円
※ 割賦販売未実現利益は、6万円(8万円−2万円=6万円)
(仕訳例)
※ 12月販売時の仕訳
(借方) 割賦売掛金 20 (貸方) 売上 20
(借方) 割賦売上原価 12 (貸方) 商品(仕入) 12
※ (12月20日から4月20日分までの合計を仕訳)
(借方) 当座預金 5 (貸方) 割賦売掛金 5
※ (3月決算時の仕訳)
(借方) 割賦売上未実現利益控除 6 (貸方) 割賦未実現利益引当金 6
63、支払遅延により割賦販売した商品を取り戻した場合
【問】
パソコン購入者が、7回分までの支払後、代金不払いの状態です。契約により商品を引き上げました。この取り扱いについて説明してください。
【答】
割賦販売した商品を購入者が支払遅延をしたので割賦販売の期間中で当該商品を取り戻した時は、原則としてその資産を取り戻した日の属する事業年度において、まだ支払の行われていない賦払金の額の合計額から当該金額に含まれる延払損益を除外した金額によって資産に計上してもよいですが、商品取り戻し時における処分見込み額で資産計上してもよいことになっています。
資産計上価格の計算
未決済の賦払金の合計額 |
× |
1-その商品にかかる割賦利益率 |
(例) 62、割賦販売の仕訳例の継続としてご覧ください。
パソコン割賦販売代金:20万円(20回払い)、売上原価:12万円、初回支払日12月20日、以後毎月20日が支払期日、7回分まで代金回収とします。
取り戻した資産の計上価格は下記のとおりです。
(未決済の賦払金の合計額)(20-7) |
× |
(1- |
割賦販売代金−(売上原価+販売手数料)(20-12)
|
割賦販売代金 20 |
|
) |
= |
78,000円 |
割賦売掛金残高:20−7=13万円
割賦販売実現利益の計算:{(20−12)×7/20=28,000円}−2万円=8,000円
(仕訳例)
※ 商品引き上げ時の仕訳
(借方) |
商品(棚卸資産) |
78,000 |
|
(貸方) |
割賦売掛金 |
78,000 |
|
割賦未実現利益引当金 |
52,000 |
|
|
割賦売掛金 |
52,000 |
|
割賦未実現利益引当金 |
8,000 |
|
|
売上 |
8,000 |
取り戻した商品が実際のところ78,000円の価値が無い場合には、処分可能見込み額を棚卸資産に計上します。例えば、商品に損傷があるため50,000円と評価した場合の仕訳は、下記のとおりです。
(借方) |
商品(棚卸資産) |
50,000 |
|
(貸方) |
割賦売掛金 |
50,000 |
|
割賦未実現利益引当金 |
60,000 |
|
|
割賦売掛金 |
60,000 |
|
割賦商品販売損 |
20,000 |
|
|
割賦売掛金 |
20,000 |
64、延払基準
【問】
延払基準について説明してください。
【答】
税法上、延払基準が適用されるのは、建設会社などの延払い条件付請負や、一般の法人が、所有する資産を延払い条件付き譲渡した場合などであり、税法上このような基準が設けられているのは、法人が資産を延払い条件付き譲渡をした場合、譲渡代金の回収が長期に渡ることにより資金繰りや法人税納税資金の確保に配慮した措置と考えられるので、延払い基準によって当該譲渡にかかる益金の計上を認めているものです。この対象になる資産には、下記のものが含まれます。
※ 借地権または地役権の設定の対価として支払を受ける権利金その他の一時金の額で、法政令第138条第1項の規定の適用により借地権等の設定による土地の帳簿価額の一部損金算入の規定が適用される場合のもの
※ 建物の賃貸し契約に際して支払を受ける権利金その他の一時金の額
※ ノーハウの設定契約に際して支払を受ける一時金または頭金の額
上記二番目と三番目は、資産の譲渡ではなく、相手側では、繰延資産として取り扱われるものです。
延払い基準の計上方法
延払い条件にかかる利益の額 |
× |
(注)賦払金のうち当期に支払期日の到来するもの合計額
|
対価の額 |
|
(注)前期までに支払を受けたものを差し引き、翌期以後に支払期日が到来するもののうち当期に支払を受けた金額を含みます。
(例)
請負金額5,000万円、請負工事原価3,000万円、請負代金受領について目的物の引渡し時に半額の2,500万円、残金は翌期以降毎年500万円(5回払い)、
(5,000−3,000) |
× |
|
= |
1,000万円(当期の実現利益) |
当期未実現利益の計算:(5,000−3,000)−1,000=1,000万円
翌期以降毎期の実現利益の計算
(5,000−3,000) |
× |
|
|
= |
200万円(翌期以降毎期の実現利益) |
(仕訳例) 当期引渡し時の仕訳
(借方) |
請負工事未収入金 |
5,000 |
|
(貸方) |
請負工事売上 |
5,000 |
|
請負工事原価 |
3,000 |
|
|
未成工事支出金 |
3,000 |
|
延払工事未実現利益控除 |
1,000 |
|
|
延払工事未実現利益引当金 |
1,000 |
|
当座預金 |
2,500 |
|
|
請負工事未収入金 |
2,500 |
翌期以降毎期入金時の仕訳
(借方) |
当座預金 |
500 |
|
(貸方) |
請負工事未収入金 |
500 |
|
延払工事未実現利益引当金 |
200 |
|
|
請負工事売上 |
200 |
65、前払い費用
【問】
一年を超える前払い費用の税法上の取り扱いについて説明してください。
【答】
前払い費用について、税法では、前払い費用に計上しないで支払った日の属する事業年度の損金の額に算入できるのは、支払日から1年以内に提供を受ける役務にかかるものの支払をして、これを当該事業年度の損金の額に算入した場合に限り認めれることになっています。短期の前払い費用の税法上の取り扱いは、原則として前払い費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用で期末までにまだ提供を受けていない役務の提供に対応するもの)に限って適用されます。ただし、一定の契約に基づき継続的に物品を購入することにより発生する費用のうち、金額が小額なものは、これに準じて取り扱われます。
1年分以上の費用を前払いした場合には、その支払の日から1年以内の期間に対応する部分の金額でも損金算入することはできません。例えば、4年契約の費用全額を支払う場合、4年分の全額を前払い費用に計上し、期間の経過分に対応する前払い分を必要経費に振り替え処理することになります。将来、3年後の期末に、支払の最終月が事業年度の開始の日から1年以内になっても、今までどおり前払いした費用は、前払い費用勘定に計上しておくことになります。
(例)
年一回3月決算の会社で、本年2月に4年契約の費用48万円を全額前払いした場合
(仕訳例)
全額前払いした時の仕訳
(借方) |
前払い費用 |
48 |
|
(貸方) |
当座預金 |
48 |
当期末の仕訳
1年後の期末の仕訳
2年後の期末の仕訳
3年後の期末の仕訳
4年後の期末の仕訳
年1回3月決算の会社で、本年2月に1年契約費用12万円を全額前払いした場合
(仕訳例)
全額支払時の仕訳
66、消耗品等を取得した事業年度において損金算入できる場合
【問】
消耗品等を取得した事業年度において損金算入できる場合について説明してください。
【問】
税法上は、棚卸資産に含めるものとして、消耗品で貯蔵中ものと規定しています。これは、消耗品等を購入したが未使用である場合には、税法上は、棚卸資産と考えていますので、貯蔵品勘定に計上し、使用した日の属する事業年度に損金算入すべきものとされます。でも、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品、その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとに概ね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限ります。)の取得費用を継続してその取得をした日の属する事業年度において損金算入している場合には、この経理処理が認められることになっています。このことは、社会通念上、常識的な範囲で当該消耗品を購入している場合には、貯蔵品として計上する必要がありません。しかし、期末が近づき今後何年分もの消耗品等を購入したようなときは、各事業年度ごとに概ね一定数量を取得するという規定に適合ませんので、貯蔵品として棚卸資産に計上しなければなりません。
この対象になる消耗品等の具体例および仕訳例につきましては、製造原価報告書の消耗品費勘定、販売費および一般管理費の消耗品費勘定、事務用品費勘定をご覧ください。
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