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索   引

18.店舗併用住宅の場合の家事関連費、19.自宅と事業所間の通勤費用

20.店主の出張の際の日当、21.営業の名義変更した時の税法上の取り扱い

22、借り店舗を、すべて一括して譲渡した場合の税法上の取り扱い

23、青色専従者給与の未払いと借入れ

24、青色事業専従者給与の支払を受けた場合の配偶者控除等の不適用

25、青色事業専従者給与と白色事業専従者控除との違い

26、事業を廃止後に発生した貸倒れ損失、27、法人成りの場合の資産の引継価額

28、法人成りにあたって会社に個人不動産を賃貸しする場合

29、損金経理と損金の額に算入するとの違い

30、災害等に備えて購入した非常食の購入費用

31、法人が源泉所得税を負担して納付した場合

32、同族会社の新株引受権の贈与、 33、源泉徴収義務者

 

18.店舗併用住宅の場合の家事関連費

【問】
私は、青色申告事業者です。住宅と店舗とが一緒であり、水道、電気、ガスのメータの設置も1つです。ですから水道光熱費の支払いは、すべて一括になっています。こんな場合、事業用と家事用の区別は、税法上どのようにするのですか。また、その建物の減価償却費、固定資産税は、所得の計算上どのように経理処理すればよいのでしょうか。

【答】
税法(所得税)上においては、家計上の経費やこれに関連する費用(経費)で、下記に示した経費以外の経費は、事業所得、不動産所得、山林所得、雑所得の金額の計算上、必要経費に算入されないことになっています。

(1)家事上の経費に関連する経費の主たる部分が、業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、その業務用として区分した部分に限り必要経費に算入することができます。

(2)青色申告者については、(1)の取り扱い以外にも、その家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額は必要経費に算入することができます。従って、家事関連費は、事業遂行上必要な部分とそうでない部分を区分することが必要です。質問の場合は店舗併用住宅の電灯費用は家事費ですが、店舗においての照明に要した費用の金額を区分しようとする場合は、その各月使用総電力量と、店舗に使用している照明器具のワット数、使用時間によってその店舗の使用電力量を計算し、その電力量の比によって支払い金額をあん分して、必要経費算入部分の金額を明確にします。
(例)
月の支払い金額2万円、 使用総電力量 1,800ワット、 店舗の使用電力量 900ワット

(支払い電灯料)
2万円

×

(店舗の使用電力量)
         900W
(総電力量)
1,800W

=

(必要経費算入金額)
10,000円

水道料も同じです。家族の人数等によりその標準世帯の支払い金額を控除した残額が必要経費となります。
建物減価償却費と固定資産税は、下記のとおりです。

使用店舗平米数
建物の総平米数
× 建物減価償却費
(固定資産税)
= 使用店舗部分の減価償却費
(使用店舗部分の固定資産税)

19.自宅と事業所間の通勤費用

【問】
私は、K市K町に住んでいます。近隣のS市に店舗を借りて小売業を営んでいます。自宅と事業所との通勤には、バスで通っています。この通勤費用は、必要経費として損金に算入されますか。

【問】
通勤費用(通勤手当)は、企業に勤めている人(給与所得者)が企業と自宅間の通勤のために事業主(店主)または法人から支給される費用で、一定の限度額まで非課税となっていますが、事業主(店主)も自宅から事業所へ通勤する場合に必要な通勤費用は、それが社会通念上通常の範囲内のものである場合に限り、事業遂行上の直接必要な費用として、事業所得の必要経費に算入できます。また、事業主(店主)は事業所ばかりでなく、自宅から得意先や事業所に電話をしたり経理事務等、業務に関連した必要経費が発生する場合があります。だから事業所においてのみ発生する経費に限定する必要はないと考えます。ただし、必要経費に算入される通勤費用は、その通勤に必要と認めれれる道順や経路、交通機関など合理的な通勤方法による通勤費用の範囲内に限られます。よって、例えば、タクシー通勤は、病気の場合や、深夜になって交通機関がなくなったなどの特別な事情がない場合は、社会通念上の範囲内のものと判断できないので、必要経費に算入はできないことになります。

20.店主の出張の際の日当

【問】
店主自身が出張した際、相手先との飲食費など諸経費が必要となります。そこで従業員の旅費規程に基づいて支給される日当を、店主の出張の際にも支給した場合、必要経費に算入されますか。

【答】
従業員の出張に関する旅費や日当は、その出張旅行に通常必要とされる費用として支出されるものと認められる範囲内であり、その出張旅行の行き先、期間などの個別事情、また、その支給が社会的に見て合理的と判断できる支給基準によって計算されている場合は、従業員(給与所得者)の出張旅費として非課税です。よって、店主(事業主)が当該従業員に支給する旅費は、事業所得上の必要経費に算入されます。しかし、店主は給与所得者ではありません。店主が旅費、交通費の支給を受けても、従業員と同じ経理処理をすることは認められないものです。したがって、店主自身が受け取った日当は、事業所得の計算上、実際に何に使ったかによって必要経費に算入されるか、または不算入の判断をしなければなりません。店主が実際に支払った交通機関の運賃、宿泊費は旅費として必要経費に算入されます。取引先との取引上の懇談に要した飲食費などは交際費として必要経費に算入します。支給を受けた日当で、もし、家族のために出張先で土産品を買った場合、または、支給された日当を全然使わずに持ち帰り自分のポッケットマネーにした場合などは、事業所得を、単に、使い道を変更した(店主貸勘定)処分です。これは生計費や家事関連費を必要経費に算入したことと同様ですから合理的な経理処理ではありませんので、必要経費に算入することは認められないことになります。

 

21.営業の名義変更した時の税法上の取り扱い

【問】
父から、小売業の名義を、本年1月1日から受け継ぎ名義変更して、事業を引き継ぎました。営業の名義変更に関しての、税法上の取り扱いについて説明してください。

【答】
営業の名義変更については、旧名義人(父)が事業を廃業して、新名義人(息子)が新たに事業を開業することをいいます。新名義人(息子)と旧名義人(父)どちらも名義変更のあった日から1か月以内に税務署長へ「開廃業等の届出書」を提出しなければなりません。また、名義変更が年の途中の場合は、旧名義人(父)は、1月1日から名義変更の日までの事業所得について確定申告書を、申告期限までに税務署長に提出します。一方、新名義人(息子)は名義変更の日の翌日から12月31日までの事業所得について確定申告書を、申告期限までに提出します。
親族間で行われる営業の名義変更は、無償で行われる場合が多いようです。この場合、営業の名義変更が行われた日に所有していた事業用資産(例:棚卸資産、売掛金、預金、機械、器具備品、車両など)の合計額から負債(例:買掛金、事業上の借入金、未払金、未払費用など)の合計額を差し引きした残額が、60万円を超える場合は、旧名義人(父)から新名義人(息子)へこれらの事業資産が贈与されたと判断され、新名義人(息子)に贈与税が課税されます。反対に、負債の合計額が事業資産の合計額よりも多くて、その額が60万円を超える場合には、新名義人(息子)がその負債の支払いを引き受けたこととなるので、新名義人(息子)から旧名義人(父)へ贈与が行われたものと判断され、旧名義人(父)に贈与税が課税されます。よって、営業の名義変更を行うとき、事業用資産の贈与を受けた場合は、その資産の合計額が贈与税の基礎控除額の60万円を超える場合は、贈与税の申告書を翌年3月15日(確定申告期限と同じ)までに、税務署長に提出することになります。

店舗の土地および建物の名義は変更(贈与)せずに父(旧名義人)のまま無償使用貸借しても贈与税の対象とはなりません。その固定資産税や店舗の減価償却費は、新名義人(息子)の事業所得の計算上、必要経費に算入されます。したがって、土地、建物の名義は、そのまま名義変更せず、旧名義人(土地建物の所有権者である父)が死亡するまで名義変更をしないほうが得策です。

 

22、借り店舗を、すべて一括して譲渡した場合の税法上の取り扱い

【問】
私は、数年前に賃貸ビル内にある店舗の諸権利と冷暖房設備および器具備品一式を一括して1,200万円で購入して小売業を開業しました。しかし、事情により本年になってこの店舗の営業一式をSさんに一括して2,000万円で売却しました。なお、ビルの所有者に対する名義書替え料70万円は私が支払いました。この場合の税法上の取り扱いについて説明してください。

【答】
営業一式を売却(一般的にいわれる居抜き譲渡)したとき、その全体を一つの譲渡として判断しません。売却した資産を、「棚卸資産」、「器具備品」、「機械設備」、店内の内装または造作」、「借家権」、「営業権」、などの種類に分けて、更に、分離課税または総合課税の譲渡所得の基となる資産の譲渡、または事業所得または雑所得とに分け、その総収入金額を、個々の資産に時価で配分して計算します。お尋ねの場合は、下記の所得に区分されます。

※ 譲渡所得(総合課税)となるもの

  • 冷暖房設備および店内内装または造作

  • 減価償却資産(器具備品)

  • 借家権、営業権

  • 小額減価償却資産(業務上の基本的に重要なもの)

※ 事業所得となるもの

  • 購入または使用する際に、その全額を必要経費にした小額減価償却資産

  • 棚卸資産

あなたが支払った名義書替料は、借家権の譲渡経費です。
借家権の譲渡所得の計算上控除される取得費は、前の所有者から購入した価額から、繰延資産として償却費を計算した場合の償却費累計額を控除した未償却残額です。

 

23、青色専従者給与の未払いと借入れ

【問】
私は、青色専従者給与として毎月18万円を支払っています。しかし、資金繰りの都合上、未払いになったり、帳簿上は支払ったことにして直ちに事業資金にその支払った給与を借りたり、年末に一括してその年分の支給額を借入金に振り替えたりした場合、この青色専従者給与の取扱は、どのようにすればよいですか。

【答】
青色専従者給与の必要経費への損金算入は、専従者がその事業から実際に給与の支払を受けた場合に限り認められることになっています。よって、お尋ねのような場合で未払いのままだったり、未払金から直接に借入金へ振り替えた場合は、実質的に専従者給与が支払われていない状態と同じになりますので、必要経費に算入するには、難しいと判断します。また、親族間の金銭の借入れは、銀行や他人の人からの金銭消費貸借とは違い、世間でよく言う ある時払いの催促なし と言われる場合が多くあります。よって、こんな場合は、専従者給与の支払債務の免除を受けたことと何ら実態が変わりません。このような状態では、給与の支払があったと言えなくなります。よって、税務上は、下記のように取り扱うことになっています。

※ 専従者給与の未払い額がその年分の必要経費に算入できるかどうかの判断は、未払いになったことについて相当の理由があり、かつ、短期間に現実に支払が実行されている場合に限り認められます。

※年末に一括して借入金処理が行われている場合には、その借入れに、相当する理由があり、かつ、返済可能な状態になれば必ず返済している実態がある場合に限り認められるものです。

 

24、青色事業専従者給与の支払を受けた場合の配偶者控除等の不適用

【問】
給与所得者の場合は、その妻や子供がアルバイトをして給与収入があった場合、そのアルバイトにかかる給与収入金額が103万円以下(給与所得金額38万円以下)の場合には、給与所得者の所得から配偶者控除や扶養控除が受けられる。しかし事業所得者の家族に支給する青色事業専従者給与も給与所得ですが、小額であってもその給与を事業所得上の必要経費に算入すると、配偶者控除等の適用が受けられないことになるは、なぜですか。

【答】
専従者給与と配偶者控除等の重複控除を防止するという現行の法規定の趣旨から、その理由として考えられるのは、下記とおりです。

※ 専従者給与の取扱は、親族に支払う対価を必要経費に算入しないという所得税法の原則に対する特例で、そのため一般の給与所得とは違った制限を設けて、原則のバランスを考慮していると考えます。

※ 専従者給与の必要経費算入および配偶者控除等の適用は、その効果がどちらも同じ事業主(店主)にかかるもので、実質的には専従者給与の額103万円+配偶者控除額または扶養控除額38万円=141万円と割増して適用することと同じ効果が事業主に起こります。この割増適用を防止するため、専従者控除等と専従者給与の重複適用を認めていません。
一般の給与所得者の場合は、給与の必要経費または損金算入は給与の支払者(店主、事業主)について行われるもので、給与所得者がそのような経理処理をするわけではありません。よって上記のような重複適用がありません。
店主(事業主)がその年の中途において、開廃業等で専従者給与の支払額が少なく、配偶者控除額の適用を受けたほうが有利になる場合には、確定申告時に専従者給与の必要経費算入を取り消し、控除対象配偶者として申告できますから、どちらか有利な方を選んで適用すると良いと考えます。 なお、自己否認した青色専従者給与の源泉所得税がある場合には、確定申告書の提出とは別に 源泉所得税の誤過納金還付請求書 を所轄の税務署長に提出して、源泉所得税の還付を受けることができます。

 

25、青色事業専従者給与と白色事業専従者控除との違い

【問】
私は、本年から小売業を開業しようと思っています。個人商売なので、他人を雇わず私の家族で営業するつもりです。家族のものが商売に従事した場合には、青色申告と白色申告では大きな違いがあるとのことですが、双方の違いについて教えてください。

【答】
所得税法上、生計を一にする家族の事業専従者に支給する給与については、これを一定の条件のもとに必要経費に算入することができるようになっています。青色申告者については、届け出により完全な給与制をとっていますが、白色申告者については、事業と家計の分離が記帳によって区別されていません。ですから一定額を事業専従者控除として必要経費に算入できるように定められています。青色申告の場合と白色申告の場合の違いは、下記のとおりです。

※ 青色事業専従者給与の場合

手続き上、その年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合には、その事業を開始した日から2か月以内)に専従者の氏名、その職務の内容および給与、賞与の額、給与の支給期等を記載した 青色専従者給与に関する届出書 を所轄税務署に提出することになっています。

青色事業専従者給与として認められる要件として、(1)青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること、(2)その年の12月31日現在で15歳以上、(3)専ら事業に従事する期間は、6か月を超える期間ですが、下記のような場合には、事業に従事することができると認められる期間を通じて2分の1を超える期間その事業に専ら従事する者であればよいことになっています。

  • 年の中途のおける開廃業、休業または納税者の死亡、季節営業等の理由によりその年中を通じて事業が営まれなかったこと。

  • 事業従事者の死亡、長期にわたる病気、婚姻、その他の理由により年中を通じて、その納税者(青色申告者)と生計を一にする親族としてその事業に従事できなかったこと。その年の1月から5月まで事業に従事していた娘が6月に嫁に行ったというような場合には、専従期間が6か月未満でも、1月から5月までは、青色事業専従者に該当します。

給与の必要経費に算入額は、届出書に記載された金額で、従事期間、仕事の性質、事業規模、収益の状況などから判断して労働(労務)の対価として相当と認められる金額です。青色事業専従者の適正給与額は、一般的には、その人が他の同業者へ勤務すればどのくらいの給与をもらえるかを、基準に判断すればよいと考えます。

※ 白色事業専従者控除の場合

事業専従者控除額は、次の二つの金額のうちいずれか低い方の金額です。

(1)事業専従者が事業主の配偶者であれば、86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
(2)事業所得の金額(事業専従者控除を控除しないで計算した所得金額)を事業専従者の数に1を加えた数で除した金額

白色専従者としての要件

専従者期間は6か月以上必要です。ですから、8月開業した場合や、5月廃業の場合には、事業専従者控除の適用は、受けられないことになります。

その年の12月31日現在で15歳以上であること、白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること

手続きとしては、確定申告書に専従者控除の適用を受ける旨および必要経費とみなされる控除金額に関する事項を記載すればよいことになっており、特別な届出書類を提出する必要はありません。

 

26、事業廃止後に発生した貸倒れ損失

【問】
私は、昨年10月まで製造業を営んでいましたが、事業を廃止し、現在、工場の跡地を駐車場にして、収入を得ています。廃業した当時、得意先Aに230万円の売掛金が残っていました。ところが、本年になって、得意先Aが倒産して、債権者集会の決議により、債権の半額が切り捨てとなり、回収できた金額が115万円となりました。切捨てになった115万円の貸倒れ金額は、今年の不動産所得から差し引くことができますか。

【答】
事業の廃止後に、その事業にかかる必要経費となる金額が生じたときは、その金額はその事業の廃止した日の属する年分(同日の属する年においてこれらの所得にかかる総収入金額がなっかた場合には、当該総収入金額があった直近の年分)またはその前年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入されます。仮に、前年の事業所得(廃業年)が20万円、前々年の事業所得が140万円とすれば、本年に貸倒れとなった115万円は、前年分の事業所得の20万円から差し引きし、残りの95万円は、前々年分の事業所得140万円から差し引きできることになっています。よって、あなたの本年分の不動産所得から差し引くことはできませんけれど、更正の請求の特例により貸倒れの発生した日の翌日から2か月以内であれば、その貸倒れ等の損失は、前々年分および前年分の更正請求をすることができます。

 

27、法人成りの場合の資産の引継価額

【問】
私は、個人経営で小売業を経営していました。今回、法人組織に変更しようと思っています。会社に引き継ぐ商品と減価償却資産は、帳簿価額で引き継げばよろしいですか。

【答】
※ 商品(棚卸資産)の引継ぎ

法人成りによって、個人企業当時の事業用資産を、新会社に譲渡する場合の商品(棚卸資産)の引継ぎ価額の決め方は、通常他の人に販売する売価ですが、その通常他の人に販売する価額の70%以上(仕入原価以上)で譲渡した場合は、その価額での引継ぎが認められます。この売上金額は、当然のことですが、個人の事業所得の収入金額(売上)になりますので注意してください。

※ 減価償却資産や土地の引継ぎ

資産の引継ぎを、個人企業当時の帳簿価額で引き継ぐことはできません。その引継ぎの時点での、時価評価した金額(売買価額)によります。評価方法としては、その固定資産の用途、構造、型式、素材、材質、使用年数、などを考慮して、販売業者の販売価額、類似資産の実際の売買価額と比べて価額を決めると良いと考えます。また、その価額の算定が困難な場合のものは、新規購入価額を計算して、そこから減価償却費の累計額を控除した金額を、引継ぎ価額とすることもできるものです。
固定資産の売買取引は時価で行われるのが普通です。よって、個人から法人に資産を譲渡した場合、譲渡価額が時価より低い場合は、その時価との差額は、個人から法人への贈与とみなされます。反対に個人が法人に資産を譲渡した譲渡価額が時価より高い場合は、その高い部分の金額は、個人が法人から贈与を受けたものとみなされ、その高い部分の金額相当額を役員賞与として法人が経理処理をしなければなりません。
個人が法人に不動産を譲渡する場合、低額譲渡(時価の2分の1未満の低額で資産を譲渡した場合)という税法上の規定があり、設立した法人が同族会社の場合、譲渡価額が時価の2分の1以上であっても、時価よりも低い価額で譲渡したとみなされる場合には、その譲渡は時価で譲渡があったものとみなして譲渡所得が課税されます。

28、法人成りにあたって会社に個人不動産を賃貸しする場合

【問】
法人成りに際して、不動産を会社に引き継がないで賃貸ししようと考えています。税法上、どのような点に注意すれば良いでしょうか。

【答】
法人成りに際して、個人の資産を法人へ引き継ぐ場合、時価によって行われれば問題はありません。しかし、この場合、個人サイドから見れば時価と取得価額(減価償却資産については取得価額から減価償却累計額を控除した額)の差額が譲渡所得として課税されます。この場合、土地の譲渡については、譲渡所得にかかる税金が高額になります。時価で引き継ぐにしても時価の鑑定評価によって税務署に納得してもらえる価額を算定しなければなりませんので、資産を個人の名義(所有)のままにしておいて、実務上、会社に賃貸しする方法が多く用いられています。この場合に考えなければならないことは、借地権についてであり、土地を個人名義のままとして、その土地に建物等を法人が建設した場合、権利金もしくは土地の価額に照らして相当の地代を支払わないと、原則として法人に借地権の受贈益があったものと認定されます。そして、借地権の受贈益を受けたことにより、法人の株式の価額が高くなりますから、他の同族株主に対する贈与問題も起こります。
法人が個人に支払う賃借り料、権利金等は時価によりますが、時価を超える場合にはこの超える部分は個人への贈与(役員賞与)となります。敷金も同じで、相当と認められる額を超える敷金は個人への貸付金と認定され、相当の貸付利息を個人(役員)から徴収しなければなりません。
(注)相当の貸付利息については、経理実務Q&A(35)法人が役員に金銭等を貸し付けた場合の取り扱いを参照してください。

 

29、損金経理と損金の額に算入するとの違い

【問】
税法条文を読むと、損金経理という言葉と損金に算入するという言葉がよく出てきます。その違いについて教えてください。

【答】
損金経理とは、法人がその確定した決算において費用または損失として経理することをいう と規定しています。また、法人税の確定申告書は、株主総会の承認を得た確定決算に基づいて税務当局に提出することになっています。
確定申告書提出までの過程を簡単に示しますと下記のようになります。
(1)日々の仕訳を行う→(2)試算表作成、元帳作成→(3)決算書(損益計算書、貸借対照表)作成→(4)利益処分計算書作成→(5)株主総会で財務諸表の承認を受ける→(6)法人税の確定申告書作成→(7)確定申告(税務署へ提出)
損金経理は、上記の(1)から(3)までの間で行われるのが一般的です。いきなり、(6)法人税申告書作成上で減算調整できません。損金経理の例としては、減価償却、引当金や準備金の繰入、圧縮記帳の内部取引、役員退職給与や使用人兼務役員の使用人分の賞与等の一部外部取引などがあります。また、損金経理をした場合と規定されているときは、同時に利益処分によることが認められている場合を除き、利益処分で積み立てても損金算入されないことになっています。
圧縮記帳をする資産を取得する前の事業年度に、特別勘定として計上するときは、 税法上、 特別勘定として経理したとき と規定されており 損金経理をした場合 と規定されていません。よって、損金経理によって引当金勘定に繰入る方法や利益処分により積立金を積み立てる方法、保険差益をそのまま特別勘定(貸借対照表の負債の部に計上)として経理する方法のいずれも認められています。
損金の額に算入する は、法人の所得金額を計算する際に、損金の額に算入することです。申告調整によって減算することも含まれます。例えば、法人税法基本通達9‐5‐2に、直前の事業年度分の法人事業税の額を当事業年度末までにその全部または一部につき申告等が行われていなくとも当事業年度で損金の額に算入することができると規定しています。これは、損金経理をして未払い金に計上できるほか、申告減算調整もできるということを示しています。

 

30、災害等に備えて購入した非常食の購入費用

【問】
最近、地震等がよく起こるので、災害等に備えて非常食を購入し、非常時に利用しやすい場所に保管しました。この購入費用は、必要経費に算入されますか。

【答】
食料品は、消費されるまでは、減価償却資産と違い、賞味期限(品質保証期限)が過ぎるまで、価値が減少しないものですから、長期間に渡り保存が可能です。原則的には貯蔵品(資産の勘定)で処理されるものです。しかし、非常食は、非常時に利用しやすい場所に保管してこそ購入した意味があります。よって、利用しやすい場所に保管した時点で、消費したと判断できると考えます。ですから、非常食の購入費用は、その非常食を所定の利用しやすい場所に保管した日を含む事業年度の必要経費(損金算入)にすることができると考えます。

 

31、法人が源泉所得税を負担して納付した場合

【問】
税務調査があり、役員給与にかかる年末調整の間違いの指摘を受け、前年および前年分の源泉所得税2年分¥95,000-を納付しました。この納付金についての取扱について説明してください。

【答】
通常、源泉所得税は、受給者の給与から差し引きして、法人や事業主が預かり、支給月の翌月10日までに、一括して納付することになっています。(納期の特例については、経理実務学習預り金勘定を参考にしてください。) お尋ねの源泉税も、源泉徴収義務者である貴社が納付すべきものです。ですから、税務当局が直接給与所得者である役員や社員から徴収することはありません。
納付した源泉税は、役員い対する立替金勘定で処理するのが一般的で、後日、役員から返却してもらう必要があります。これを租税公課勘定等で経理処理をすると、この源泉税相当額(¥95,000)は、役員への臨時支給の給与(役員賞与)とみなされることになっています。以上の内容は、社員対する給与や源泉徴収を必要とする報酬料金も同じです。
また、あわせて不納付加算税の賦課決定を受けて納付する場合は、実務上、租税公課勘定で処理しますが、法人の所得金額の計算上損金算入されないので、注意してください。

 

32、同族会社の新株引受権の贈与

【問】
今回、増資することになりました。同族会社の役員の場合、新株引受権を全部親族に与え、自分自身は、新株をもらわないことにしたいと思います。このような場合、税法上の取り扱いは、どのようになりますか。

【答】
同族会社において新株引受権が旧株主に割り当てられないで、その旧株主の分がその親族に対して割り当てられた場合には、旧株主から親族に対して新株引受権の贈与があったものと判断され、贈与税が課税されます。新株引受権の価額は、新株の価格からその払込価額(株式発行価額)を差し引いて評価します。例えば、額面金額を発行価額とする場合には、株式に含みがあってその価額が額面の何十倍にもなっていて、引受権の価額も大きな額(巨額)になることがあるので、思わぬ税金を支払わなければならないことになる場合が起こりえます。十分な注意が必要です。

 

33、源泉徴収義務者

【問】
源泉徴収義務者に該当する者と該当しない者について説明してください。

【答】
個人や法人が事業を営むために、人を雇用して給与を支払ったり、弁護士などに報酬を支払った場合には、その支給の度に所得税を差し引きして預かり、その預かった所得税を原則として、その支給月の翌月の10日までに納付することになっています。この所得税を差し引きして預かり、納付する義務者のことを源泉徴収義務者と呼んでいます。この源泉徴収義務者に該当する者は、個人、法人、学校、官公庁などがあります。
源泉徴収義務者に該当しない者としては、 2人以下の家事使用人(お手伝いさん)のみに給与や退職金を支払っている人、 報酬料金のみを支払っている人(例えば、弁護士さんに相談料を支払った給与所得者)以上の二つのどちらかに該当する人は、源泉徴収義務者に該当しない人です。
個人および法人が、新たに給与の支払を開始して、源泉徴収義務者に該当する場合には、所轄税務署に、給与の支払事務所等の開設届出書 を一か月以内に提出する必要があります。

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